ハカイジ

救出の機会

「桑原さん

もう一つお聞きしていいですか？」



「どうぞ。

何かしら？」


愛果は、気になっていた事をこの際、全て聞こうと、和人に質問を続けた。


「あの施設って非合法なものですよね？」



「そうね。」



「なのに、全然問題にならないじゃないですか？

警察だったり、SNSであったり、外に訴え出れば、安田をはじめとする者達は全員逮捕されるんじゃないですか？」



「うん。

あなたがそう考えるのはよくわかるわ。


この法治国家日本で、あんな施設があるなんて誰も思わないもんね。

表に出たら大問題となって、あなたが言った通り、慈愛夢グループの幹部達はみんな逮捕されるわ。」


「じゃあ、どうして？」



「簡単なことよ。


表に出せないからよ。」



「表に出せない？」



「安田って男は、ワタシ達が思っている以上に力を持っているのよ。」



「えっ」



「警察、マスコミは勿論、野党与党を問わず、政治家もね。

数多くの手駒を持っていて、ワタシらみたいな者が束になってかかっていってもびくともしないシステムを構築しているのよ。」


「じゃあ、私達は安田には永遠に勝てないんでしょうか。」



「今のところはね。


でも、きっと何か突破口はあるはずよ。


ワタシは、去勢されて、そんな勇気はもうないけど、あなただったらきっと成し遂げられるかもしれないわ。

ワタシに出来ることがあれば協力するから、だから頑張るのよ。」


和人は、愛果の手を握って励ました。