ハカイジ

フロイライン

文字の大きさ
86 / 88

犠牲なくして成功なし

しおりを挟む
「どうしたんですか?」


「ごめんなさい。

道下さん、元気にされてるかなって…

単純にそう思っただけなんです。」



「そうですか…

あれからしばらく経ちましたが、お元気そうでよかった。」


愛果は、施設から送って来てくれた道下という男に親切にされた上、夫を救い出す鍵を握っているとされる桑原和人にも引き合わせてくれた。


言葉は悪いが、この道下という男を利用しない手はないと思っていた。


和人から話を聞いたが何も進展がなく、少し焦りを感じていた愛果は、道下に連絡を取ったのだった。

近くの喫茶店で待ち合わせをし、顔を合わせた二人は、早速話を始めた。

「まさか、道下さんがお近くにお住まいだとは思ってもみませんでした。」
 

「ええ。

でも、月の半分はあの施設に泊まり込みで働いてるんですよ。」


「月の半分もですか。

それは大変ですね。

奥様も寂しい思いをされてるんじゃないですか。」


「あ、いえ

私はバツイチで、もう長く独り身でいるんです。

ですから、こんな仕事が出来るんですよ。」


道下は、頭を掻きながら笑って答えた。


道下秀一

年齢は三十代後半くらいかと、愛果は見ていた。


「愛果さん

今日、ここに私を呼んだのは、ご主人を助け出す方法についてですか?」


「ええ…

おっしゃる通りです。

でも、それは二の次です。

今すぐにどうこうできる問題ではないし、長期戦を覚悟しています。」


「そうですか…

では?」


「道下さんには、あの時すごくお世話になって、本当に嬉しかったんです。

あの地獄のような施設で傷ついていた私を救ってくれたんですから。」


「いえ…

私は何も。」



「もう一度会ってお礼がしたいなって。」



「そんな、お気遣いはなさらないでください。

あなたに情報を流した事については、私の独断でやった事ですし、会社にとっては決して好ましい事ではありませんので…」



「それなのに、私のために…

本当に申し訳ありません。」


「いえ…

安田会長の事です。

こうなることを見越して、私にあなたを送らせた可能性もありますが。」


道下は、ため息をつき、そう述べた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...