新 或る実験の記録

フロイライン

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団欒

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ワタシは、吉岡先生ご夫妻とお子さん、そして吉岡先生のご両親とご一緒して、晩御飯をいただき、楽しいひとときをすごさせてもらった。

吉岡先生自体が性転換者で、ご主人もその道の研究者なので、皆がワタシを変な目で見なかった事も楽しい時間をすごせる要因となった。

多分、これから社会生活をするにあたり、ワタシ達のような存在は世間からは奇異の目で見られることだろう。



「そうなの…
乃亜ちゃんも色々苦労してるのね…」


食卓では、吉岡先生のお母さんが、ワタシの身の上話を聞いて、気の毒そうな表情を見せた。


「いえ、最初は辛い気持ちもありましたけど、今は女性としての生活が楽しくて、なんとかやっていけそうです。」


「奈緒もそう言ってるわ。
だから男性に戻れたのにわざわざ再性転換するんだもの。」

お母さんが言うと、吉岡先生も頷いた。

「一度経験しちゃうとね…

体力が落ちてしまう事以外は、ほぼ不満はないのよ、女性としての生活には。」


「そうなんですね。
吉岡先生のお話を聞くと、ワタシも安心出来ます。」


「そうね。
その辺りの不安を払拭するためにワタシのような人間が存在してるし、何でもサポートしていくから、遠慮せずに言ってね。」


「ありがとうございます。

あの…お二人はどういうきっかけで結婚したんですか?」

かなり打ち解けてきたみたいなので、ワタシは思い切って聞いてみた。

すると、高山さんは、ワタシをしばらく見つめていたが、すぐに笑みを浮かべて話し始めた。相変わらず冷たい目つきをしていたが。


「私は元々、性同一性障害の患者への再適合手術…いわゆる性転換手術の研究者でね。

最初は大学病院にいたんだが、この分野の研究で、日本はかなり遅れていてね。
私は大学を辞めて、海外に留学したんだ。

そこで紆余曲折があり、例の事件の発端となった某国の研究施設で働くことになった。

そこに連れて来られたのが妻だったんだ。」


「えっ、あの島ですか…」


「そうよ。乃亜ちゃんには前に言った事があると思うけど…
ワタシはあのとき警察官でね。当時国内で頻発していた拉致事件を追っていて、逆に捕まってしまったのよ」

吉岡先生はそう言って頷いた。


「今考えれば、犯罪の片棒を担ぐようなマネをして、本当に申し訳ない事をしたと思うが…

当時の私は、自由に研究が出来て、最新の設備、技術、薬品が揃ったあの島が楽園に見えてね
研究に没頭してしまっていたんだ。」

なかなか重い話をする…
吉岡先生のご両親もいるのに…

聞かなきゃよかった
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