無表情いとこの隠れた欲望

春密まつり

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ごめん、嫉妬した。

01

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「……ん……」
 二度目のキスは、甘くふれてすぐに離れていった。
「……梓」
「っ」
 だけど甘いキスは何度も何度も繰り返された。逃げる隙がないほど、離れてはすぐにくっつく。

「ふぁ、ゆ、ゆきやく……んっ」
「……梓」

 雪哉は何度も梓の名前を呼んだ。
 梓は応える余裕もなく、雪哉のキスに翻弄されていた。ふれるだけのキスを何度もしたあと、唇を開かされ舌がもぐり込む。
 また、このキスだ。
 つき合っているわけでもないのに。
 雪哉のキスは次第に激しくなり、梓の両頬を手で包んで、深く舌を絡める。じゅっと舌の根を吸われると、頭が熱くなり、眩暈がした。

「梓」
「……ん、はぁ……」

 ようやく舌が離れると、今度はまた唇にちゅ、と何度もキスをされる。先ほどの激しいキスよりも、こっちのほうが好きだ。さっきみたいなキスは、何も考えられなくなってしまう。
 キスをしながら雪哉の手が梓の頬から離れ、もぞもぞと動く。梓のパジャマをまくり上げていた。

「っ! ゆ、雪哉くん!?」
「……なに?」
 雪哉は平然と、梓の素肌にふれる。その冷たい手にびっくりして、梓は声を上げた。
「ま、待って! 何してるの?」
 ようやく雪哉の手がとまる。
 でも身体は覆いかぶさったままだ。
「なんでこんなこと……」
 梓は乱れた服を直しながら、雪哉を睨んだ。

「……ごめん、嫉妬した」
「……嫉妬?」
 思わぬ言葉が雪哉の口から出る。
「梓がまだ元カレのこと好きなんだって思ったら……なんか、とまらなかった」
「……な、なんで?」
 雪哉はしばらく黙ってから、ひらめいた、というように「わかった」とつぶやいた。

「俺、梓のこと好きなのかも」
「え?」
「ていうか、好きだ」
「あ、あの」

 突然の告白に、頭が真っ白になる。
 でも雪哉が冗談を言うようには思えない。

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