待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

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第十一話

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「しっかしコレ、どんな効果があるんだろう?」

【ドブさらい】のクエストを終えた僕は、キースにもらった【エルフポーション】を掲げながら、街を歩いていた。
 手のひらサイズの小瓶には、並々と緑色の液体が入っていた。
 キースが言うにはここから東にあるエルフの村から出回ってきたブツのようだけど、どんな効果があるんだろう?
 見た目は普通のポーションと変わらないのか?店で売ってる普通のポーションがわからないからなんとも言えない。
 珍しいというからにはそれなりに効果が高いのかな?いや、逆にショボい効果のアイテムなのかもしれない。
 …このゲームならありそうだな(笑)
 それにしても………
 
「東の森のエルフか…」

 ちょうど僕の前方に耳の長い美少女が目に映った。
 頭の上のゲージは緑。NPCだ。
 金髪碧眼の整った顔立ちの美少女といっても過言ではない女の子。
 動きやすそうな緑色の服に銀色の胴当て。黒のミニスカート。すらりと細い足にはハイソックス。反射的に絶対領域に目がいってしまった!
 アイドルグループにいたら、確実にセンターを獲得しているだろう。
 僕は俯き加減に歩いていく。
 軽く動悸がしてきた。同年代の女子、特に美少女は僕の心臓に悪い!

 すれ違った時、爽やかなイイ匂いがした。

「うん。ギルドに入ったらみんなの中に隠れて行こう、エルフの村へ…!」

 接することは苦手だけど、そっと見てるだけならなんの問題はない。
 僕だって男だ。目の保養はしたいのさ。
 強い決意を固めた僕は、最後のクエストを受けに居住区へ歩を進めた。





 クエストランクF【迷子の捜索】
 場所が孤児院なだけにMAPに表示されていたから、比較的に探しやすかった。
 ○○の○-○とか、住所だけのNPC個人の民家や居場所はMAPに詳しく印されないからわかりづらい。
 その点孤児院は見つけやすかった。
 順番的にホテルの後に行けば効率が良かったんだろうけど、僕はあえて後回しにした。
 理由は二つある。
 一つは迷子の捜索は時間がかかりそうだということ。
 経験上こういう捜索クエは、時間がかかるものが多い。時刻は16時。そろそろ日が傾きかけている時間帯。
 アトランティスは、現実の時間軸と同じように流れている。
 19~20時くらいに、前のゲームで仲の良かったPCひと、スコルさんがインしてくる。それまでにクエを全て片付けておきたかった。
 だから捜索クエを後回しにした。
 スコルさんがインするまであと3~4時間の猶予がある。最悪、夕飯抜いてでもスコルさんが来る前に片付けておきたいところだ。
 理由二つめそれは………


「ようこそお越しくださいました。感謝いたします」

 黒を基調とした修道服っぽい服を見にまとったNPC女子が、優しい微笑みを僕に向けて感謝の言葉をのべた。
 
「いえ………」

 仕事なのでと最後まで言えなかった僕は、まっすぐ僕を見つめる視線を避けるように俯いた。
 少したれ気味で大きな緑色の瞳をした少し幼い感じの小柄な美少女を見て、やっぱりなと僕は思った。
 孤児院は教会の近くにある。ということは、孤児院を運営しているのは教会関係者かもしれない。教会=神父、シスター。
 こういう相場だと孤児院にいるのは年老いた神父か美少女シスターのどちらかだと僕は推測していた。
 決定的なのは依頼主にと記されていた。ということはそのマリアさんと話さなければいけないことになる。
 の場合を考えて後回しにしていたけど、その最悪が当たってしまった…。 
 恐らくこのコがマリアさんなんだろう。まさか僕と同年代くらいの美少女シスターとは思わなかったけど…。
 彼女は僕の顔を覗き込むように身体を傾けた。

「!?」

 上半身をわずかに屈めてこちらを見つめる美少女シスターの大きな胸が、重力に引かれるように下へぷるんと揺れるのを見た!
 ガッ!僕は目を見開き、一瞬にして脳内メモリーに永久保存した。
 ロリ巨乳のフォルダに即収納!
 そしてすぐに目をそらし、一歩後ろへ引く僕。
 ちょっ!?顔が近い近い!
 これだからイヤなんだよ!
 ジジババなら無駄に緊張することないんだけど、無駄に美少女は緊張しまくるから苦手なんだよ!
 ヤバい、変な汗かいてきた。身体が小刻みに震えてるし…。
 動悸が激しい…!ゴホゴホッ持病のコミュ障が…!
 などとわざとふざけて落ち着かせようとしているのに、美少女シスターは更に一歩踏み出してきた。

「あの、大丈夫ですか?顔が赤いですし、汗もかいていらっしゃいます。…どこかお加減でも悪いのですか?」
「いえ、大丈夫ですホントマジで…!」
 
 そう言いながら二、三歩後退していく僕を心配そうに見つめる美少女シスター。
 
(くっ…!天使かこの子は)

 心なしか後光が差してるように見えるのは僕の気のせい(幻覚)か?
 いかん、この状況に耐えられない…!
 僕は視線を合わせずに、話を変える意味も込めて本来の目的を尋ねてみた。

「あ、あの迷子の捜索って聞いたんですけど…」
「ああはい。実はですね………」

 美少女シスターの説明を要約するとこうだ。
 彼女の名はマリア。(やっぱり依頼主はこのコだった)
 その時僕も自己紹介がてら名乗ったけど、自分の名前アバターネームのファントムを名乗ることに恥ずかしさを感じた。
「ファントムって…(ぷっくすくすw)」と彼女に笑われる被害妄想が浮かんでしまった。

 閑話休題………。

 彼女はアトラス教会に所属している【修道士】で、神父(神父出てこいよ!苦笑)とともにこの孤児院で子供達の面倒を見ている。
 昨日孤児院の子供、アランがいなくなった。
 いくら捜索しても見つからず、警備隊に捜索願いを出そうかとしていたその時、アランの妹アリスが「お兄ちゃんは下水道に探検しに行った」とのこと。
 アトラスの地下はいくつもの下水道が入り組んでおり、下水道にはモンスターが徘徊しているそうだ。
 このままではアランの身が危ない!
 そのことを聞いた神父はすぐさま教会に報告し、さらに警備隊と冒険者組合にも捜索の依頼を出したというわけらしい。

(これって迷子の捜索なのか?)

 モンスターのいる下水道に行って、子供を捜して保護するってことでしょ?
 それってもう救助じゃないの!?
 ていうかランクFのクエストなのコレ?
 報酬少ないし、割の合わないクエストな気がする…。

「お願いします!どうかあの子を、アラン助けて下さい!」

 目に涙をためて祈るように手を組み合わせて頼みこむアリスを見て「あ、はい」と頷いてしまう僕がいた。

 「本当ですか!ありがとうございます!」

 マリアさんは近づき僕の両手をつかんだ!
 
(な…!なんwpomz(qdmmnp)

 パニクり思考言語がぶっ壊れる僕。
 つないだ手から彼女の手の温もりを感じる。
 本当にNPCですか!?心臓破裂するわ!

「それでは早速参りましょう!」

 手を離したマリアさんは豊かな双丘以外何もない胸元の前に手をかざすとウインドウが現れた。
 うん?あれはメニュー画面か?
 彼女は出したウインドウを指で操作していると、僕の視界にテキストメッセージが浮かんだ。

『【修道士】マリア(NPC)がパーティー申請をしました。申請の有無については、メニュー画面からパーティー申請を行って下さい』

「えっウソ!?」

 テキストメッセージを見た僕は驚いた。
 パーティーメンバーにできるの!?ていうか、一緒に来るの!?
 ちらりとマリアさんに目をやると、やる気に満ちた瞳でこちらを見つめていた。
 いや、そんなキラキラした目で見られても……。
 すぐに視線を逸らした僕は、メニューをスライドしていく。
 見つけたパーティー申請の項目をタップ。

『【修道士】マリア(NPC)がパーティー申請をしました。許可しますか?』
『YES』
『NO』

 と表示されていた。
 本当に申請してるよ…。ていうかNPCもメニュー出せるんだははは…(苦笑)

「あっ!ごめんなさい」

 僕はどうしていいかわからずにウインドウを見つめたままフリーズしていると、突然彼女が頭を下げて謝ってきた。

「えっ!?あ、あのなんで謝るの…?」
「私、足手まといですよね…。アランのことが心配だったのでつい口にしてしまいましたけど、ファントムさんのお力にもなりたいと思ったんです…」

 ズキューン!!!

 顔を上げ涙をぬぐう彼女を見た瞬間、なにかが僕の胸を撃ち貫いた!

「いやいや!全然足手まといとかじゃないですよ!むしろ助かりますはい!」
「本当ですか…?」
「本当と書いてマジです!行きましょう!」

 僕は勢いよく『YES』をタップした。

『【修道士】マリアのパーティー申請を受諾しました』

 ウインドウにそう表示されると、視界の片隅に映る僕のゲージの下に、マリアさんのゲージが追加された。

「ありがとうございます。足を引っ張らないよう、一所懸命頑張りますね」

 そう言って僕に笑顔を向けるマリアさんを見て、僕はまあいっかと心の中でため息をついた。

 こうしてこのゲームで僕が初めてパーティーを組んだ相手は、属性特盛のロリ巨乳美少女シスター(NPC)だった(笑)
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