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第1章 ギルド入会

第二十三話

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 とあるオンラインゲームにひとつのギルドが在った。
【アトランティス】と同じようなジャンルの剣と魔法のMMORPG。
 そのゲームで世界ランキング上位に君臨していた傭兵ギルド【Tokyo Bouncer】通称【TB】 
【TB】は大規模戦闘と大規模戦争を得意とするギルドだった。
 大規模戦闘でどこのギルドよりも早くレイドボスを倒したり、大規模戦争でどこのギルドよりも多くキル数を稼いでいた。
 余談だけど僕は大規模戦争のPvPがきっかけでFPSを始めた。
 でもそんなにのめり込むほどはまらなかった。
 どうも僕は銃火器よりも剣と魔法が好きみたいだ。
 ストレス溜まってイライラしたときにやると楽しいけどね(自嘲)
 
【TB】は効率重視のPCが多くて他のPCに効率厨ギルドとか陰口を叩かれていたけど、僕に言わせてもらえば普通ってMMORPGとかの多人数でプレイするゲームで、ターゲットであるクエストやミッションなどを早く終わらせて何度も周回するPCのことを指したり、周囲のPCに対してを強要する迷惑なPCのことを指すんだけど、【TB】のメンバーの中には言うほど強要するPCはそんなにいなかった。
 ガチの効率厨のPCは「遊びじゃねーんだよ!」とキレるんですよ?そんな人がギルドにいたら僕は速攻辞めてます。
 ガチとユルの中間にいた僕が在籍できていたということで察してください(自嘲)
 傭兵ギルドらしく?敵が鬼強でクリアできないPCやドロップアイテムの確率が低すぎて周回したいけど面倒なPCの依頼を受けたり手伝ったりしていたから、そういう風な陰口を叩かれたんだと思う。
 ああしてください。こうしてくださいとか言っただけで強要と叩かれるこのご時世…。
 理不尽な世の中だ…(苦笑)
 じゃあ依頼するなよと僕は言いたい(笑)
 
 そんな効率厨ギルドのギルドマスター【ホスト王に俺はなる!】通称ホスト王さんは【侍】職の前衛で、寡黙で淡々と堅実なプレイをする職人のような上手さをもつPCだった。
 
(僕の記憶にあるホスト王さんとホスト王さんと全然まったくもって重ならないんですけど………)

 キャラが全然違うんですけど…!ホントに本人かと疑いたくなるほど別人に見えた。
 
「なになに?超奇遇じゃん!つかファントムよく買えたね?家セレブなん?」

 ホスト王に俺はなる!さん改め、ドンペリキングさんは馴れ馴れしすぎるチャラさで僕に話しかけてくる。

(ウソだろ!?こんなにチャラい人だったっけ?)
「ところでさファントム。そっちのガチムチのおっさん誰よ?ファントムのフレ?」

 アーノルドさんはドンペリキングさんににこやかに会釈した。

ですよ。ドンペリキングさんもやはり来ていましたか」
「ええー!?スコルってスコルさん!?マジっすか!マジパネエっすよその筋肉!」
「今の俺はです。ドンペリキングさんはこれからクエストですか?」
「当然っしょ?さっきゴブリン無双して帰ってきたんスけど、またゴブリン狩りに行くんす。目指せゴブリンスレイヤー的な?」

 …本当にこのチャラ男が僕が所属してたギルドのギルマスなのだろうか?
 あの侍然とした職人は何処に?

「あそうだ。二人もクエやりに来たんでしょ?なら一緒にやりません?つか二人はいまフリーっすか?フリーなら俺のギルドに入ってよ。つかまだ俺の【TB】に所属してるんだからここでも俺のギルドに入りますよね?」
「ええー!?」

 ドンペリキングさんの超理論に僕は不満の声をあげてしまった。
 なんでそうなるの?は普通別でしょ!

「ん?なに?ファントムやなの?」
「いや、イヤというか…その」

 緊張して言い淀む僕を見て、ドンペリキングさんは悲しそうな表情を浮かべた。

「ショック!youはshock!悲しいぜファントム。お前がそんな冷たい人間だったなんて…。一緒にレイドボスに突っ込んで死んだり、お前が肉壁になって俺のキル数稼がせてくれたりして育んだ俺との友情は嘘だったのかよ!」

 嘆くをして訴えるドンペリキングさん…。
 うん。確信した。この人ホントにホスト王さんだ…。
 いま僕の瞳は死んだ魚の目のような目になっているだろう。
 これがこの人のなのか?だとしたらメンドクセーヤツだ………。
 リスペクトしていた憧れの一人がこんな人だったなんて……。
 僕の方がyouはshockだよ…:-C

「じゃ早速クエ行こうぜ。もうじき小鬼湧きが始まるみてーだから急がねーと。ああそうそう忘れてた。とりまパーティー申請しようぜ!」

 僕達の意見も聞かずに話を進めるドンペリキングさんの前に、アーノルドさんが立ち塞がった。

「ドンペリキングさん。申し訳ありませんが貴方のギルドに入ることはできません。俺は彼とギルドを立ち上げる約束をしたので。せっかく誘って頂いたのに申し訳ない」

 アーノルドさんはそう言ってドンペリキングさんの誘いをはっきりと断った。
 すごい…。数少ないNOと言える日本人の鑑だ。
 さすがアーノルドさん、僕一生ついていきますよ。

「マジっすか!?じゃあ俺もそっちのギルドに入るんでよろー♪」

 ってええー!?なんでそうなるの!?心の中で叫ぶ僕。
 
「あのドンペリキングさん。貴方は自分のギルドがあるんじゃ…?」

 戸惑いながらもそう尋ねるアーノルドさん。
 うんうんと同意するように頷きを繰り返す僕。

「ああ大丈夫大丈夫。俺まだギルド旗揚げしてねーし。つか面子足りなくてさ女の子スカウトしようと思ってたんだけど、ちょうど二人に会えたんで俺のギルドの頭数に入れよう思っただけだし」
「そ、そうなんですか…」
「はは…(ええー!入るの!?)」

 ちらりとアーノルドさんのほうを横目で伺うと、アーノルドさんも少し困った顔をしてこちらを見ていた。

(どうします?)
(どうしましょう?)

 アイコンタクトで相談する僕達。

「なになに?もしかして俺入れたくないわけ?」
「い、いえ、そういう訳では…」
「じゃあいいじゃん。なっ!ファントム、俺も入っていい?」
「あ、はあ…アーノルドさんがいいなら」

 僕はアーノルドさんに丸投げした。
 アーノルドさんは僕を見て小首を傾げた。
 アーノルドさんの目はいいのか?と訴えていたけど、僕はいいですよという思いを込めて頷いた。

「じゃあドンペリキングさん、一緒にやりますか?」
「あざーす!よっしゃこれであと二人集めればギルド旗揚げできるわ」
「え?あ、あのあと二人って?」
「ん?知らねーの。ギルドは五人以上のプレイヤーがいないと申請通らねーのよ?この世界の常識よ常識」
「ウソッ!?」

 僕は慌ててメニュー画面を開いてギルド関係の項目に目を通した。
 ドンペリキングさんは僕が開いたウインドウを覗き込んで「ほらここだよここ」と教えてくれた。

「あホントだ…」
「ということは最低でもあと二人必要ということですか。誰か当てはありますか?」
「えっと僕はいません」

 フレンド登録している人はいるけど、【ダイブオン】買った人はアーノルドさんしかいなかった。

「つか俺は女の子集めてハーレムギルド作ろう思ってたから買ったギルメンとか他のフレに連絡してねーっす」
「いいんですか?こっち入るならハーレムギルドはできなくなるかもしれませんよ?」

 からかうように言うアーノルドさんにドンペリキングさんは苦笑した。

「ああもう別にイイっすよ。俺もいそうなギルメンとか他のフレに連絡してみますわ」
「俺もこっちに来ているメンバーに当てがありますので連絡してみますね」
「あ、はい。よろしくお願いします」

 こうしてギルドを旗揚げする準備が整ってきた。
 
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