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第2章 獄中生活

第五十四話

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 先頭開始。

「【咆哮】!」

 開幕開始からの挑発スキルを僕は発動させた。
 僕から発したエフェクトが周囲に走ると、ゴーレムナイト達が僕に向かってきた。
 よし。挑発に乗って僕のところに向かって来るゴーレムナイト。
 僕は竹刀を振りかぶると

「せあああああああ!!!」

 先頭のゴーレムナイトに向かっていった。
 僕の竹刀が淡く輝く。
 大上段に振り下ろした【斬撃】がゴーレムナイトの頭に当たった!
 僅かに減少するゴーレムナイトのHPゲージ。

(チッ…やっぱり竹刀じゃ火力不足か)

 与えられたダメージは一割以下、一ドット二ドットくらいしか減っていない。
 攻撃スキル使って1~2のダメージってところか。
 
【斬撃】を放った技後硬直に陥る僕にゴーレムナイトの剣が正面三方向からきた。
 みっつの衝撃と振動が僕の身体に響き渡る。
 僕のHPゲージが二割近く削られた。
 受けた感じ、ゴーレムナイトの攻撃力はそこまで強くない印象を受けた。
 ゴーレムだけあって硬いけど火力はそうでもないようだ。

(これならいけるか?)

 そう判断した僕はさらに一歩二歩と前に進み、【堅牢】を発動させた。
 防御スキル【堅牢】VIT物理防御力を25%上昇させるスキル。
 レベル1の効果時間は60秒。再使用時間クールタイムは6秒。
 レベルが上がる毎に効果時間が延び、クールタイムが短くなるから優先的にレベルを上げようと思ってたけど、その前にパクられちゃったからなぁ…:-(
【堅牢】で硬くなった僕を囲むように五体のゴーレムナイトが移動したのが見えた。

(僕が先頭不能死ぬ前に成功するかな?)

 一抹どころかかなりの不安を感じるけど、これくらいしか手が思いつかなった。
 僕は防御に専念してなるべくダメージを減らすような立ち回りをし始めた。
 竹刀で受けれる攻撃は竹刀で防ぎ、円を描くように竹刀を横薙ぎに振るう。
 竹刀のくせに案外耐久力が高いせいか、ゴーレムナイトの剣を受けても破壊されないし硬い装甲に当たっても壊れることがなかった。
 喰らうダメージは【堅牢】のお陰で目減りしたけど、そんなに長くは持たないだろう。

「カイ!アル!」
「おう!」
「了解!」

 僕の号令を聞いたカイとアルフレッドが駆け寄ってきた。
 視界の片隅に映るヴァイスとゼルのビーコンが移動を開始するのも確認できた。

「集中攻撃!」
「おう!」
「了解!」

 僕の右後ろにいるゴーレムナイトの一体にカイとアルフレッドが二人がかりで竹刀を打ち込み始めた。
 僕は前方にいる三体のゴーレムナイトと左後ろと右後ろにいるゴーレムナイトの攻撃を防ぐのに集中した。
 五方向からくるゴーレムナイトの攻撃は剣のみの攻撃で比較的単調な攻撃パターンだった。
 単調とはいえ五方向全てを捌くのは無理だけど、なるべく手にした竹刀でゴーレムナイトの剣を防いでいく。
 まともに攻撃を喰らわないように防御に専念する。
 ジリジリと僕のHPゲージが削れていく。
 焦るな…!よく相手の動きを、パターンを見極めるんだ…!
 自分自身にそう言い聞かせながら竹刀を振るい、身をかわしていく僕。
【堅牢】が解除された時は回避のみだけに専念し、クールタイムの6秒をなんとか死守する。
 そしてクールタイムが過ぎたとき、僕は再び【堅牢】を発動させる。
 それを何度か繰り返したその時………

「うおっ!?」
「こっち向いたよ!」

 カイとアルフレッドの焦る声が聞こえた。
 視線をそちらに向けると僕のが外れたゴーレムナイトが背を向けてカイとアルフレッドに向かっていくのが見えた僕は

「【咆哮】!」

 再度挑発スキルを発動させた。
 エフェクトが周囲に巻き散っていくと僕に背を向けたゴーレムナイトが立ちとまり、再び僕の方へ振り向いた。
 
「おら!」
「はっ!」

 背を向けたゴーレムナイトに向かってカイとアルフレッドが打ちかかるのを目にした僕は胸の内で安堵の息をついた。
 カイとアルフレッドのレベルは【囚人】レベル10と11。
 習得している職業やスキルも【商人】【村人】【鍛治師】【ゴロツキ】とかで戦闘に有効なスキルを有していなかった。
 ぶっちゃけカイとアルフレッドにゴーレムナイトを倒せる力はないと思う。
 けど、攻撃に専念してたおかげでカイとアルフレッドが攻撃していたゴーレムナイトのHPゲージが二割ほど減っているのが見えた。
 いくら弱くても、チリと積もればなんとやらって感じで確実にダメージを蓄積していっていた。
 このまま時間をかければ一体くらいは倒せると思うけど、僕のHPゲージはもう半分をきっていた。
 このままじゃジリ貧で、そのうちやられちゃうのが目に見えている。

(やっぱりダメだったか…)

 僕がそう諦めかけたその時、奇跡が起きた!

「兄貴!やりましたよ!」

 ゼルの声が聞こえた。
 それと同時に声がした方へ突っ込んでいく僕。
 遮るようにゴーレムナイトがいるけれど、脇をすり抜けるように囲みを抜けて僕はゼルの元へ駆け寄った。

「兄貴!」
「貸して!」
「はい、どうぞ!」

 僕はゼルが持っていた受け取った。
 ゼルがゴーレムナイトから剣を手にした瞬間、システムメッセージが流れた。

『ファントムは【剣術士】を習得しました!』
『習得済みの剣士系スキルが解放されました』

 ということは………

「【魔法剣・炎】!」

 僕は手にしたゴーレムナイトの剣を振るうと剣が炎に包まれた。
 よしよしよし!発動した! 
 どうやればいいのか一瞬忘れちゃったから言葉にしてみたけど、なんとかうまくできた。
 ジリジリとMPが減少していくのがわかる。 
 たしか3秒にMP3消費するんだっけ?
 レベル3の今は9秒でMP3消費に炎属性強化+3%だったと記憶している。
 たとえ忘れていてもアトランティスは3の倍数系で強化されていくからわかりやすい計算式だ。
 …ってそんなこと考えてる場合じゃないか。

「作戦続行!ゼルとヴァイスはまたカイに渡して!カイとアルはまたゴーレムナイトに集中攻撃!」
「おう!」
「了解!」
「お任せ下さい!」
「了解………」

 僕の指示に従いみんな再び動き始める。
 作戦通りに僕はゴーレムナイトのタゲを挑発スキルで集めて、敵の敵視と攻撃を一身に受け続ける。
 カイとアルフレッドはそのうちの一体を集中攻撃。
 ゼルとヴァイスは【盗み】のスキルでゴーレムナイトから武器を奪うことに専念していた。

 ゼルは【盗賊】系のスキル【盗み】のレベルが10とCSカンストしている。
【盗み】スキルの中にレベル3で覚える【ぶんどり】というスキルがある。
【ぶんどり】は相手の武器又はアイテムをランダムで盗むスキル。
 レベル1の成功確率は3%と低いし、対策されていたら更に確率は低くなるけど、ゼルは【盗み】をCSしていて【ぶんどり】の成功確率が30%まで上がっていた。
 ゴーレムナイトはに対する対策をしていないだろうし、アイテムも持ってないだろうかられるのは剣か盾の二択しかない。
 ヴァイスも【囚人】レベル10ながらも窃盗の罪で塀に入ったおかげか【盗み】スキルを習得していた。
 ヴァイスの場合はレベル2で【ぶんどり】を習得していなかった。
 でも【ぶんどり】よりも下のスキル【かっぱらい】(効果、指定した相手の武器又はアイテムを盗む。確率1%)しか習得していたから、ダメ元でやらせている。
 下手な鉄砲、かずうちゃ当たるみたいな感じ?
 
 とりあえず成功したからこのまま続行だ。
 竹刀より敵の武器の方が火力強いだろうしね。
【剣術士】を戦闘中に習得したおかげか体験版で習得した【魔法剣】を使えるようになったし結果オーライってことで: )

「【斬撃】!」

 ゴーレムナイトに再び突っ込んでいった僕はカイとアルフレッドがダメージを与えていたゴーレムナイトに向かって炎をエンチャントした剣で【斬撃】を放った。
【魔法剣・炎】を付与された【斬撃】は赤い煌めきを宿したままゴーレムナイトを斬り裂いた。
 袈裟懸けに斬られたゴーレムナイトはHPゲージが一気に三割ほど減り、身体に抉れたような深い傷ができた。
 
(よし!これならいける!)

 確かな手応えを感じた僕は追撃の炎の剣をゴーレムナイトに振るった。
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