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第3章 ソロプレイヤー
第百五話
しおりを挟む「100万かぁ…」
「100万ですね…」
「高いな100万…」
「100万チップ…」
「100万だね…」
僕達は口々に呟いた。
【龍の秘薬】じゃなくてあったのは【エリクサー】か…
「兄貴、どうしましょう?」
「…やるだけやってみようか?」
ゼルの問いかけに僕はそう答えた。
あれでヴァイスが治るのなら挑戦する価値はある。
「ゼル、いまお金いくらあるかな?」
「そうですね、ちょっと待ってください………俺と兄貴から預かっているのを合わせると5万ちょいあります」
「5万か…チップっていくら?」
「1チップ100Gになります」
とカウンターのバニーさんが答えた。
ということは………五万で五百枚か。
「ゼル、とりあえず5万チップに変えてくれる?」
「了解です兄貴」
僕達は受付のバニーさんに手持ちのお金を渡してチップに変えてもらった。
「とりあえず5人いるから100枚ずつに分けよう」
レイモンドさんは先に行っちゃたし…ていうかあの人はただ早く遊びたくて先に行った気がする…(苦笑)
「そんないいですよファントムさん、私たちは私たちで出しますから」
「いやいやそんな悪いですから、とりあえずこれでやってみてください」
遠慮するNANAさんに僕はそう言うと、NANAさんPTそれぞれにチップを手渡していった。
うちのヴァイスのために協力してくれる人達からお金は出させたくないしね。
「でも…仲間なんだし、やっぱり私達も…」
「いいじゃん別に。これを元手にチップ増やせばいいじゃんか?頑張ろうぜ姉ちゃん」
「ファントムくん、このチップは借りておくよ。正直、僕はレイと違ってこういうギャンブルは得意じゃないけど、やれるだけやってみるよ」
「あ、はい任せました」
こうして僕達は一旦ばらけてチップを稼ぐことにした。
案内板によるとカジノは大きく分けて六つの遊戯エリアに分かれていた。
ルーレット、ブラックジャック、ポーカー、スロット、パチンコの五つのエリアとその他のエリアだ。
ルーレット、ブラックジャック、ポーカー、スロットは、まあわかる。
カジノの定番のゲームといってもいいだろう。
しかしパチンコとその他って…(苦笑)
パチンコは『人気の新台』『往年の名機』などの触れ込みが記載されていた。
どうやら現実で導入されているパチンコがここでもできるようだ。
リアルのように18歳未満お断りではないようだけど、そもそもカジノでプレイする時点で年齢って関係ないよね。
その他のエリアは、チンチロリンや花札、そしてコインゲームなど色々雑多なゲームができるらしい。
「うーん…やるとするならやったことのあるやつのほうがいいよね…」
ゲーセンのコインゲームやパチンコ、スロットならプレイした経験はある。
北斗○拳のスロットで何回もメダルがパンクするまで出したことがあるし、コインゲームのバベル○塔で一撃千枚とかモン○ンのジャックポットを四千枚以上とったことが多々あった。
僕名義のS○GAのメダルバンクには十万枚を超えていた時期があった。
まあ、ネトゲにはまりすぎて引きこもりがちになった頃に期限切れでリセットされたけどね(笑)
そんなわけでパチンコやスロット、コインゲームなら自信がある。
一撃で多くとるのならコインゲームが無難だよね?
でもその他のエリアは奥にある。
パチンコのエリアを通らなきゃいけないのか………
「どうせなら先にパチンコを見て回ってから行くか…」
そう呟いた僕は、まずはパチンコエリアの方へ足を向けた。
ていうか、カジノなのにパチンコやゲーセンのコインゲームってどうなんだろう…(笑)
パチンコエリアのホールはそこそこ賑わっていた。
見た感じ席は六、七割埋まっていてPCとNPCの割合がちょうど半々くらいだ。
ガンッ!と台を叩く目がヤバい戦士風の#PCプレイヤー____#がイライラしながら打っている。
その隣で黙々と打っている全身鎧のNPC。
あのNPC箱十箱以上積んでるよ。あ、戦士のPCが全身鎧のNPCをめっちゃ睨んでる(怖っ!)
「ていうか、出してるプレイヤーいないなぁ…」
NPCは出てる人多いけど、反対にPCは全然出てない。
そこかしこで殺気だった目や死んだような目で打ってるPCに僕は寒気を感じた…
パチンコはないな…
そう思いながら僕は奥のエリアに歩を進めていた。
「あれは!?」
ふと目に映った台に僕の目は釘付けにされた!
ウソだろ…?話には聞いていたけど、本当にあったんだ…!
昔、よく両親がパチンコで打っていたのを耳にタコができるほど聞いていたあの台が目の前にあった。
CRフィーバー戦○絶唱○ンフ○ギア。
「1/199.8のライトミドルか…!」
僕の心の恋人ひびきちゃんが出演しているあの神アニメの実機がここにあるなんて…!
僕の足は、心はもうその台に釘付けだった。
両親秘蔵のBlu-ray BOXにあったのを観てから、僕はシン○ォギ○のファンになった。
アニメを観て妄想が妄想を呼び、僕の中にひびきちゃんが現れた。
彼女が居てくれたおかげで僕は孤独に蝕まれず生きてこれたといっても過言ではないくらいだ。
ひびきちゃんは僕の陽だまりだ。ひびきちゃんのそばが一番あったかい場所で、僕が絶対に帰ってくるところなんだ。
(そのわりには、ずいぶん私のこと忘れてゲームしてたよね…)
脳内で、ひびきちゃんが苦笑まじりにそう呟いたのが聞こえた。
そ、そんなことないよ(汗)
僕は空いている席の中から大当たり履歴を見比べた。
ぶっちゃけ、初見の台だし初めての店だからどういう設定にしてるのかまったくもってわからない。
出す時は出すし、出さない時は出さない店が多いしね。
それはゲーセンでも本場?のパチンコ店でも同じだろう。
履歴は気休めにしかならないと思うけど、とりあえず僕は一回も回っていない朝一台に座った。
チップを一枚投入。
上皿に球が流れ出した。
どんどん流れ出し下皿にまで溢れてかえった。
「おお、おおっ!?」
僕は慌てて下皿を開けて箱に流した。
箱に溜まっていく球を見た感じ一チップ千球くらい出たな。
とりあえずハンドルを回してみた。
『シーンフォーギィアアアア!』
ひびきちゃんの声が響き渡った!
すげえ!ていうか音デカッ!!!
音量は最大の六だった。さすがに音が大き過ぎると思った僕は音量を半分くらいの三に下げた。
さあ始めよう…!
ここが正念場だ!
ヴァイスのために、そしてひびきちゃんのために、僕はこの台で勝利を掴む!
「このハンドルを握った右手も!…命も!シ○フ○ギアだ!」
自分で言っててなに言ってるのか意味不明なことを呟きながら、僕は球を打ち始めた。
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