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第5章 抗争

第百四十七話

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「ファントムさんとその仲間たち!神妙にお縄を頂戴しなさい!」

 大剣の切っ先を向けて叫ぶマリアさん。

「おい教会騎士のねえちゃん、よくも部下をやってくれたなあ!」

 黒スーツのリーダー?がマリアさんに食ってかかっていった。

「コローネファミリーの方ですよね?今は見逃してあげます。神の御許へ行きなくなければ黙って立ち去りなさい」
「…横からしゃしゃ出てきてずいぶんナメた口きくじゃねえか。教会が怖くて犯罪組織できっかよ!野郎ども!カイウスもろともやっちまえ!」

 黒スーツのリーダーがそう言うと黒スーツ達がそれぞれの武器を取り出し構えた。

「隊長、この者らは我らにお任せください」

 マリアさんを守るように3人の騎士が黒スーツのリーダーに立ち塞がった。

「頼みましたよ。他の者は私に続いてください!」
「「「はっ!」」」

 マリアさんの指示に従い手にした剣を、槍を構える約10人ほどの教会騎士。

「ファントム、マリアとかいう姉ちゃんは俺がやるぜ」

 刀を抜いたカイが僕に言ってきた。

「カイ、できれば殺さないでくれると助かるんだけど…」
「そいつは無理な相談だな。あいつは強い。真剣ガチでやらなきゃこっちがやられちまう」

 獰猛な笑みを浮かべてカイが答えた。
 ああもう…!この戦闘狂は(呆)

「推して参ります!」
「かかってこいやあああ!」

 大剣を上段に構えて突っ込んできたマリアさんに対して、下段に構えて突っ込んでいくカイ。

「【剛撃粉砕】!」
「【飛燕】!」

 攻撃スキルのライトエフェクトを撒き散らしながら、マリアさんの大剣とカイの大太刀がぶつかり合った。
 爆風のような衝撃波が周囲に広がるのをきっかけに、戦端が開かれた。



 黒スーツの1人が懐に手を入れると、そこからのようなモノを抜いてこちらに向けてきた。

「ウソでしょ!?」

 まさかの拳銃に驚く僕。

 パァンッ!と銃声が鳴り響く。
 突き刺すような衝撃が右肩に響き、僕のHPが削られた。

「ちょっとなによアレ!が飛んできたわよ!?」
「アーチェの姐御、アレはコローネファミリーが製造したライトボウガンと言われる武器です。小回りがきいて様々な連射もできるので気をつけて下さい!」

 驚くアーチェさんにカイウスさんが僕達にも聞こえるように説明してくれた。
 ていうかライトボウガンじゃないでしょ!?
 普通に銃でしょ。トカレフみたいなオートマチックの銃でしょ!?

「イタッ!うぅ…地味に痛いですぅ」
「あばばばばばば…!」
「くっ…!マズイな」

 火の弾を受けて涙目になっているルーネ。
 身体に付着した弾が無数の斬撃を引き起こし、まるで感電したかのように衝撃を受けるヴァイス。
 僕も盾で弾を防ぐのに精一杯で身動きが取れない。
 銃のくせに火力がないのか、地味に数ドットずつHPが削られていっている。

魔法増幅マジックブースト【エリアヒール】!」

 アルの放った広範囲の回復魔法が僕達を癒していく。
 GJアル!

「早撃ちなら負けないわよ!【ラピッドショット】!」

 アーチェさんの矢が無数の軌跡を描いて黒スーツ達を撃ち抜いていく。
 おおすごい!ほぼ一撃で倒してる。
 ていうか敵はそんなに強くないか。
 カイウスさんの言う通り雑魚はレベル10くらいしかないんだろうな。
 でも………

「撃て撃て撃てえええ!」

 僕達とマリアさん達に銃口を向けてバンバン撃ってくる黒スーツ達。

「…地味にウザい。出でよ我が盾…【サモンナイト】」

 ヴァイスがデュラハンを召喚するとデュラハンを盾にして銃撃を防いだ。
 あっずるい!僕にも肉壁デュラハンを!
 僕が盾で銃撃を防いでいると、衝撃波が黒スーツを何人かまとめて吹き飛ばしたのが見えた。

「「ぎゃああああああ!!」」

 吹き飛ぶ黒スーツ達。
 煌めくポリゴンのカケラとなって死亡マーカーと化した。

「うおおおおおお!」
「せいやああああああ!」

 マリアさんが振り下ろした大剣をカイが真っ向から向かいうつ。
 ガキイィィン!という耳障りな音が響き渡ると同時に、2人を中心に爆風のような衝撃波が周囲にほとばしった。

「うわああああああ!」
「危なっ!ちょっとカイ、私たちも巻き込まないでよ!」

 吹き飛ぶ黒スーツ。
 危うく巻き込まれそうになったらアーチェさんがカイに文句を言うけど、カイはマリアさんとの戦いに集中しすぎててまったくもって聞いていなかった。
 2人の身体から、或いは互いの武器から噴き出すライトエフェクトが煌めきぶつかり合う。
 その度に衝撃波が巻き起こり周りにいたPCやNPCを巻き込み吹き飛ばしていく。

 ていうか黒スーツの人、余波だけで死んじゃってるんですけど………:-()

 「うわこっちにきた!?」

 こちらに飛んできた衝撃波をなんとか盾でガードする僕。
 ビリビリと盾越しに衝撃と振動が伝わり、僕のHPが地味に削れていった。
 
 うわぁ…これまともに喰らったら大ダメージじゃない…?

 ドン引きした僕はカイとマリアさんから距離を取った。

「はぁはぁ…やりますね」
「ああ…お前もな」

 カイとまりさんは鍔迫り合いをしながら、お互い笑みを浮かべていた。
 あれ?なんか通じ合ってる?
 僕、ちょっと嫉妬しちゃうんですけど………

「力は私が上」
「速さは俺に分がある」
「技量は互角といったところですか」
「総合的に見れば互角だな」
「ええ」

 まあ、強いて言うなら制空権かな。と僕は心の中で突っ込んだ。
 人斬りとその義弟みたいな会話してた2人は同時に後ろに跳んで距離を置いた。

「ですが私は負けません…!」

 大上段に構えたマリアさんの大剣が光り輝く。
 
「俺も負ける気はしねえな」

 刀を鞘に納めたカイは半身に構えて居合の構えをとった。

「【剣気解放】!」
「【我が一撃は神の一撃】!」

 全身にオーラのようなライトエフェクトを噴き出すカイと、大剣から光を迸らせたマリアさん。

 これが2人の全力全開か…!?

 いつの間にかみんな戦いをやめてカイとマリアさんの戦いに見入っていた。
 互いに構えたまま微動だにしない。
 緊張で胃が痛くなりそうな静寂が辺りを包んでいる。
 僕はゴクリと唾を飲み込んだその時、2人が動いた。
 一瞬にして間合いに入った2人。
 マリアさんが大剣を振り下ろし、カイは刀を抜きはなった。
 
 その瞬間………

「そこまで…」

「「!?」」

 一体いつの間に現れたのか、黒装束の暗殺者アサシンスタイルの銀髪少女が2人の武器を止めていた。
 素手で。指先で摘むように受け止めていた…=)

「ふぃ、フィールさん…!?」





 
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