待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

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第5章 抗争

第百五十一話

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 コローネファミリーは、みんなB級映画に出てくるようなマフィアのような格好をしている。
 黒スーツに銃(ライトボウガン)が手下モブのデフォルトのようだ。
 いくつもの集団というか、陣形に分かれて砦を囲むように布陣していた。
 僕、カイ、アル、カイウスさん、マリアさん達はコローネファミリーが陣取るちょうど後ろの位置にある林に来ていた。
 ここから先は遮蔽物のない砂浜。
 敵まで目算だけど200~300メートルくらい。
 さらに700~800メートルくらい先にゼルのいる砦がある。
 
 パンパンパパパン!!!と前線の黒スーツの軍勢がライトボウガンを発砲?している。
 お返しとばかりに散発的だけど、砦から魔法や矢が降り注いでいる。
 ぶっちゃけ焼け石に水な感じだ。
 戦闘を行なっているのは前線だけで後方に控えている大半の人達は呑気に談笑しているっぽい。

 こうして改めてみると怖いなあ…(震)

 黒スーツ姿のいかつい人達を遠目に、僕は胸の内で呟いた。
 ていうか、この人達いってみればマフィアだよね?
 見た目某蒼天の犯罪組織の格好だけど構成員が一万って多くない?
 どこの軍隊だよw
 日本最大のヤ○ザ屋さん(構成員、準構成員合わせて約1万)でもこんな一箇所に集まらないよ。

 フィールさん情報だとコローネファミリーの構成員(黒スーツモブ)が持つライトボウガン(見た目トカレフw)は無属性の矢(ていうか弾にしか見えない)を五発装填できる連射式らしい。
 リロードは専用のカートリッジを替えるだけのお手軽仕様。
 中には属性矢(火、水、風、土など)を所持している人もいるみたいだけど、それは部隊長クラス以上の構成員しか持っていないらしい。
 射程距離は大体約10メートルくらいの中距離タイプが主流だけど、強化すると飛距離や威力などが上がるらしい。
 フィールさん曰く、モブは強化なしの量産品を装備しているからそこまで警戒しなくていいとのこと。
 強化してない量産品なら急所さえ守っていれば大したダメージは受けないらしい。

 ていうか、ライトボウガン欲しいな。
 一種のロマン武器だよねアレ。
 僕は某狩りゲーでライトボウガンを使ってたとき、頭部に徹甲榴弾とかで気絶スタン狙うのが好きだ。
 KO術とか火力増し増しでプレイすると気持ちがいい。
 あ、でもアトランティスでヘッドショットかましたら即死扱いで死ぬかw

 まあ、それはともかくコローネファミリーの構成員モブは中距離からの一斉射撃がウザいけど近距離戦に持ち込めば雑魚いというフィールさんの評価。
 レベル以下の弱さらしいけど、あの人数の中を突っ込むの?
 ぶっちゃけ怖いんですけど…(ガタガタブルブル)
 
 それに最初は無双できても絶対最後まで続かない気がする。
 特に幹部クラスやボスのコロパチーノが出てきたら苦戦は必至だと思う。
 フィールさんの見立て(ステータス鑑定持ち。どんだけハイスペックだよ…)じゃ幹部は僕らの中で一番強いカイと同等、若しくはそれ以上のステータスらしいし、ボスのコロパチーノは幹部よりも強いようだ。
 ちなみにそれを聞いたカイは闘争心むき出しでる気満々になっていたけど、それを聞いた僕はぶっちゃけ倒そうという気が失せた。
 あわよくばボスを倒して敵の気勢を削ごうと思っていたけど、無理して戦う必要はないなと考え直した。

 あくまで僕らはゼル達が逃げきれるまでの囮。
 ヤバイ敵との戦闘は極力控えて戦わないといけない。
 …若干2名ほどガチで戦いそうな人がいるけどね(苦笑)
 最終的には僕らも逃げなきゃいけないから、適度な距離かついつでも逃げられる状態を維持しながら戦わないといけない。
 そこらへんのさじ加減が難しそうだけど、やるしかないと自分自身を鼓舞する。

 砦からの合図はない。
 ていうかフィールさん大丈夫かな?
 この人がゴミのように溢れかえってる中を通り抜けてゼルのいる砦まで辿り着けるのかな?と心配になった。
 PTに加入したフィールさんの反応はない。
【存在不可視】とやらのスキルを発動した時にフィールさんの姿が消え、視界の片隅に表示されていたフィールさんのHPゲージすら不可視化した。
 感知系の上位スキルをCSカンストしてない限り見破られることはないと言っていたけど、あんなにパンパン矢が飛んでるなか進んでるんでしょ?流れ弾に当たって怪我しなきゃいいけど………

「ヴァイスたち、上手くやってるかな?」

 アルが僕に話しかけてきた。
 僕は後ろを振り返り林の奥のほうに視線を向ける。
 そんなことしても別行動をとったヴァイス達は見えないけど、そこはまあ雰囲気ということでw

「むしろヴァイスなら大量に連れてくるかも(笑)」
「そうだね。逆についていったルーネとアーチェのほうが心配か」

 僕がそう言って笑うとアルも苦笑混じりに同意した。
 今のヴァイスの職業は【魔物使い】だし、僕より上手く引き連れてこれると確信している。
 ただ【魔物使い】は基本ステータスが低いから護衛としてアーチェさん、回復役としてルーネをつけた。
 ていうかヴァイスは職業が迷走してるよねw
 最初は魔法職だったのになあ…どうしてこうなった感が強い。
 うちのメンバーで一番転職を繰り返してる気がする。

「問題はいつ来るかだよね」

 僕はそう呟きながら視線を前、砦のほうに向けた。
 未だに合図はない。
 ヴァイス達もまだ来ない。
 こうして待っていると気が滅入って憂鬱になってくる。
 これから始まる戦闘を考えると緊張で身体が震えるうえに胃が痛くなってきた。
 ああ…なんか気持ち悪い…吐きそう…(><)
 僕は気を紛らわせようと両手を強く握りしめた。
 
 その時、隣にいたマリアさんが僕の手にそっと乗せるように触れてきた!!

 くぁwせdrftgyまりあlp!?!???

 突然のことにビックリしすぎてパニくる僕。
 マリアさんは慈母のような微笑みを僕に向けると

「武者震いですか?」

 と訊いてきた。
 いえ、違います。ただ単に緊張して吐きそうなだけです。
 なんて言えない僕は曖昧に笑って誤魔化した。

「わかります。私も血湧き肉躍るこの身体を必死に抑えていますから」

 いや、悪いけど僕はマリアさんみたいな戦闘狂じゃないので。
 ていうか、マリアさんこんなキャラだっけ?
 もともと脳筋のイメージはあったけど、バトルマニア的なキャラじゃなかった気が………

「あぁ…一刻も早く悪の権化であるコローネファミリーに神罰を与え、兄さんを助けなけなくては!皆さん、これも神の試練です。ともにこの試練を乗り越えましょう!」
「はっ!我等三騎士、隊長とならば例え煉獄の中でもお供いたします!」
「はあ…。でもたいちょー、ヤバくなったらあたしすぐ逃げますよ」

 ああ、そういえば敬虔な信徒でもあったっけ(苦笑)
 あのよくわからない世紀末救世主みたいな神を信仰しているシスターが今じゃ教会の騎士で隊長か。
 ちなみにマリアさんが率いる隊は隊長のマリアさん、隊員はオルテガさん、ガイアさん、マッシュさん、レイアさんの五人編成だ。
 見たところオルテガさん、ガイアさん、マッシュさんはマリアさんを崇拝するくらいの好意を持っている。
 僕はこの3人を密かに白い三連星と呼んでいる(鎧が白いし顔と名前が某ロボットアニメに出てくる三連星に似ているからwww)
 逆にレイアさんはダウナー系の影の薄い美少女で、やる気というか忠誠心を全く感じない。
 戦闘も積極的に参加しないし、最初いることにすら気がつかなかった(笑)
 マリアさん曰く、彼女は回復役ヒーラーとして非常に優秀らしい。

「ところでファントムさん」

 マリアさんが僕の手を触れたまま、真っ直ぐな瞳をこちらに向けてきた。

「な、なんですか?」
「………この戦いが終わったら、私達とともにアトラスに行きませんか?」

 え?それって逮捕するから大人しく連行されなさいって言ってるよね?

「そ、それはちょっと………」
「決して悪いようにはしないいたしません!上層部や司法局にも掛け合ってファントムさんの減刑と恩赦を必ず勝ち取ってみせます!ですから、兄さんと一緒に来ていただけませんか?」
 
 でも結局塀の中に入ることになるんでしょ?
 興味深いイベントとかレアアイテムとかが貰えるならまた入ってもいいと思うけど、現状魅力を感じない。

「私は本当のファントムさんを知っています。貴方は誰も見向きもしなかった微々たる報酬の依頼を受けに来てくださった慈悲深い方です。たった一人の子供を探すために体を張って戦ってくれました勇気ある方です」

 それって初めて会った時のことを言ってるの?
 そんな大袈裟な(苦笑)
 他のPCプレイヤーもあの迷子クエはやってるよ。

「貴方が望むなら、私は貴方を教会騎士に推薦したいです」
「はい?」

 僕を教会騎士に!?

「僕が教会騎士に?」
「はい。その為には一度アトラスに戻って収監されなければなりませんが、私がすぐに手続きをとります。それから恩赦として奉仕活動をこなすことになります。奉仕活動といっても冒険者の依頼のようなことを何度か受けてもらい、全てこなしていただいたら罪は赦され、教会騎士の試練を受ける資格を得ることができます。見事その試練を乗り越えた暁には教会から騎士として認められます」

 ふむふむ、なるほど。
 マリアさんが僕の手を握りしめたままグイグイ詰め寄ってきた。
 ちょっ!?近い近い!!!

「とうです?私と同じ騎士になりませんか?わ、私は、ファントムさん、貴方とともに同じ道を歩んでいきたいのです…!」

 顔を真っ赤にして力説するマリアさん。
 そ、そう言われると教会騎士に興味が出てきた。
 犯罪者のレッテルが剥がれる上に誰かを守る騎士か………

「おいおい、なに言ってんだ?ファントムが騎士なんかになるわけねえだろ」

 カイが口を挟んできた。

「カイさん、貴方も騎士になりませんか?その好戦的な性格はマイナス評価ですが、貴方の実力ならすぐに隊長格になれますよ」
「お前に性格のことでとやかく言われたくねえわ!つうか悪いが教会騎士には悪感情しか持ってねえ。ま、中にはお前らみたいな騎士もいるのは知ってるけど、大抵の騎士は腐ってやがる。斬り捨てたくなるからそんなとこには入りたくねえな」
「…確かに、騎士の中には守るべき民を蔑ろにし、主の教えを間違って解釈している者がいるのも事実です」
「はっきり言えよ。騎士の大半が私服を肥やす不届き者だらけじゃねえか」
「残念ながらカイの言う通り。でもそれは騎士だけじゃないよ。一部の枢機卿や大司教が私利私欲のために動いている」

 アルが付け足すように言葉を続けた。
 そういえばアルも信徒だった。
 たしか司教だっけ?

「個人的に俺はファントムが騎士になるのには賛成だよ。【真なる聖書】を所持しているし、彼なら今の教会の在り方を変えて…いや、正しく戻してくれそうだから」

 とアルが期待を込めた瞳で僕を見ても困るんですけど………(汗)
 ていうか、なんかみんな僕を過大評価しすぎてない?
 そんなに大した人じゃないよ。
 ただの元引きこもりのニートゲーマーだよ。
 あ、一応今はニートじゃなくて学生だ。
 ああそうだもうじき登校日だ…イヤだなぁ行きたくないなあ………

 それにしても教会騎士か。
 話を聞いた感じだと、もし教会騎士になったらいわゆる不正を正す世直しルートになるかもしれないな。
 犯罪者PCから正義の騎士PCか………(悩)
 僕が思考に耽っている間に僕を置いて話を続けるマリアさん達。

「ところでアルフレッドさん。先程言っていた【真なる聖書】とはなんなのですか?」
「ああ、ファントムは聖書を子供にも読みやすく書かれた絵の聖書を持っているんだよ」
「子供向けっつうか、活字が嫌いな大人でも読みやすいぜ。本なんて数行で眠くなる俺が全27巻一気読みできたほどだからな」
「そのようなものがあるのですか!?ファントムさん、良ければその【真なる聖書】を見せていただけませんか?」
「うむ、わしも見てみたいな」
「教会騎士としてそれが聖書として正しいものなのかどうか検閲しなければ」
「一応あたしも興味あるッスね」

 マリアさんをはじめ白い三連星とレイアさんすら僕に詰め寄ってきた。
 えっ?ていうかなんの話!?

「ちょっ、ちょっと待ってください。真なる聖書なんてアイテム、僕持ってないんですけど!」
「アレだよファントム。システムウインドウで見せてくれた漫画のこと」
「は!?」

 それって電子書籍のこと?

「漫画ってことは、アレでしょ?北斗○拳」
「そうそれ」
「なんで北斗○拳を真なる聖書って呼んでるの?」
「ヴァイスがそう名付けてたから、俺らもそれにならった」

 あの漫画を真なる聖書って…:-()
 まあ確かにここの世界の神様は世紀末救世主みたいな話だけど………
 見せろ見せろとせがむマリアさん達を押しとどめた僕は仕方なくメニューから電子書籍のアプリを開いた。
【真なる聖書(命名ヴァイス)】こと漫画【北斗○拳(単行本vo.全27巻)】の1巻を開いてマリアさんに見せるように画面を差し出した。

「「「「「………………………」」」」」

 食い入るように漫画を読みだすマリアさん達。
 一応自動でスライドするように設定しといたけど、真剣な表情で瞬きもせずに黙って読んでいるマリアさん達が怖い…(汗)
 どうでもいいけど死んだ魚のような目をしたレイアさんですら真剣な表情をしているのが印象的だった。

「ああ!なんてことを…!」
 
 ヒャッハーな人達に人が殺されたシーンを見た時マリアさんが悲痛な叫びをあげ

「これは七星聖書の序章『心の叫び』を聞き取る主の話か!」
「まさに絵で再現されている…!」
「おお主よ…!(ガン泣き)」

 読み進めるごとに白い三連星のおっさん達が男泣きするという…(ドン引き)

「『お前はもう死んでいる…』いやあパネエッスね!」

 普段やる気のなさげなレイアさんの表情が生き生きしていた。
 とりあえず一話読み終わったのでアプリを閉じた。

「ああファントムさん!続き。続きを!」
「ファントム殿!後生ですから続きを見ませていただきたい!」
「これこそ真なる聖書!」
「隊長、腕のいい絵描きに模写を頼んで布教いたしましょう!」
「ファントムさ~ん続きを読ませてほしいッス!」
「いや、あの続きは戦いが終わったあとで…」

 ていうかつい請われて読ませたけど今ゼルを救うミッション中だよ。
 こんなとこで全巻読んでたらゼルを助けられなくなるわ!

「絶対ですよ!絶対読ませてくださいね!」
「マッシュ、オルテガ、この戦、必ず生きて帰るぞ」
「「オウ!!」」
「焦らすッスね~。これは久し振りに本気出しますか~!」

『マリア(NPC)の好感度が1000上がりました!』
『ガイア(NPC)の好感度が1000上がりました!』
『オルテガ(NPC)の好感度が1000上がりました!』
『マッシュ(NPC)の好感度が1000上がりました!』
『レイア(NPC)の好感度が1000上がりました!』

 うん…やる気が出てきたのはいいことだね(苦笑)

「大親分!」

 カイウスさんの声が響いた。
 僕はカイウスさんが指差す方角へ視線を向けると、砦から上空へ上がる狼煙が見えた。

 きた!合図だ!

「ファントム!」
「う、うん!いくよみんな!」

 すでに刀を抜き放ち僕の号令を待っていたカイに僕は頷くと、みんなに声をかけた。
 さあ、ミッションスタートだ。




 

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