天才魔術師の罪

ルーさん

文字の大きさ
2 / 6

一話

しおりを挟む
カラン、とベルの音が鳴る。
それはお店の扉に付けた来客を知らせる音。

「…眠いのに…」

白髪に赤い瞳を持つ男は、乾燥した草束の中からノロノロと立ち上がり、黒のズボンと白のワイシャツを身に付け、カウンターに出る。

「いらっしゃい」

「すげー美人!あれ?化け物は?魔族か、お前!名前は何だ?」

「ゆ、勇者様!お待ち下さい!!」

「り、りりリーリャ様!も、申し訳ございません!」

綺麗な黒髪に黒い瞳を持つ少年は男…リーリャを指差し、顔を赤く染めた。

「どーしたの?」

少年と共に店に入って来た王宮勤めの文官は、リーリャを見て顔色を真っ青にした。
小柄な老人文官達は今にも気絶しそうだった。

「おい!俺を無視するなよ!」

少年…榊 学さかき まなぶは、リーリャの居るカウンター前に立つと、大声で怒鳴る。

「初めまして。僕はリーリャ」

「リーリャ!俺は学!榊 学!よろしくな!」

呑気に告げるリーリャに気分を良くし、学は楽しそうに己の名前を告げる。

「で、お前が化け物?魔族なの?」

「ゆ、勇者様!リーリャ様は人間です!ですから、その様な無礼は…!」

「へ?そーなんだ?じゃあ噂の化け物は、どこ?そいつは魔族なんだろ?リーリャ、今助けてやるからな!」

学は辺りの棚を開けたりして、化け物を探し始めた。
それを止められない文官達は、リーリャと学を見て顔色を更に悪くする。

「勇者様は此処に居られるか」

欠伸をしながら様子を見ていたリーリャは、新しく来店した客に目を向けた。

「ロイ!」

「フェイドリア様!?」

文官達が急ぎ頭を下げる。
客…ロイと呼ばれた黒の騎士服を着る長身の男は、青色の瞳を勇者へ向けた。

「リーフレット王がお呼びです。至急、お戻り下さい」

「でも、まだ化け物見つけてないし…」

「化け物?…どう言うことだ」

ロイが文官達へ目を向ける。
文官達の下げた頭がビクッ、と震えた。

「と、都市伝説を勇者様に話した者がおりまして…」

「あぁ…あの話か」

ロイは都市伝説を思い出して頷く。
確かに此処は内容の通りだ、と。

「ねぇ。何も買わないなら、帰って欲しーんだけど」

綺麗な声にロイは視線を移す。

「~~~ッ!」

リーリャの存在を瞳に移すと、ロイの顔は茹でたタコ状態になった。

「…貴様。名前はなんと言う」

「…?リーリャ」

「リーリャか」

リーリャの名前を何度も呟き、ロイは固まった。
そして、それを見ていた最年長の老人文官は気絶した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

処理中です...