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五話
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「皆の者、しばし席を外してくれ」
「はっ!」
リーフレットの指示に従い数十人の人間らが玉座から出ていく。
そんな中ロイに抱えられた勇者が満面の笑みで手を震る。
「ただいまリーフレット!ミリーナ!」
「勇者、頼むから気軽に出掛けるな。心配するだろう」
勇者のテヘペロポーズに呆れるリーフレット国王は首を傾げた。
「で、ロイはなぜ勇者を小脇に抱えている?」
「……………勇者はお疲れの様ですので、必要最低限の体力の消費で済むようにしているのです」
「そうなの?貴方が疲れるなんてあるの?
あとリーリャ、挨拶はどうしたのかしら?」
ミリーナに突然話をかけられリーリャはため息をつく。
(だから会いたくないんだよなぁ。それに…ここにはあいつもいるし)
「久しぶりリーフレットで…あ、リーフレット国王、ミリーナ王妃」
「久しぶりだなリーリャ。会いに来てくれなくて寂しかったぞ」
「同意ですリーリャ」
リーフレット国王達は愛想笑いの背景に黒いオーラを背負っていた。
リーリャは目をそらしながら笑う。
「リーフレット達と会うと権力抗争に巻き込まれるからねー」
「他にもあるのは分かっていますよ。ですが手紙くらいくれても良いでしょう?
私達何歳だと思っているんですか?もう五十代です。いつ死んでもおかしくないんですよ?」
「そうだ。一度も会わずに逝く可能性だって会ったんだぞ」
「あ…忘れてた」
リーリャは今思い出した様だ。二人が有限だった事を。
「お前達とは違うのだ。もう忘れるな」
「問題を後回しにする癖は未だ健在ね」
リーフレットとミリーナはクスクス笑う。
その様子を玉座の間にいた人間はポカンと見上げていた。
「父上母上、この者とそんなに親しかったのですか?」
「まぁリーリャは美人だしな!」
「………」
ロイは複雑な心境でリーフレット達を見ていたが、そんなロイとは正反対で勇者はズイズイ聞きにいく。
そしてミィリフィドもだ。
「リーリャは元王城勤務の幼馴染だ」
「ある日『探さないで下さい』と書き残して行方を眩ませたのよ、この人」
リーリャは居心地が悪くなるのを感じた。
「あぁ!あるよな~無遅刻無欠席な真面目ちゃんがある日行方眩ますやつ!」
「何時も遅刻欠席だったがなリーリャは」
リーリャは更に居心地が悪くなるのを感じた。
「戻ってくるのか、リーリャ」
「……えーと…まだいいかなぁ」
リーリャはロイの後ろに隠れた。
そして空気になる様気配を潜めた。
「まぁ会えただけでも良い」
「あら?リーリャ。ステファンには会ったのかしら?」
「すてふぉん?って白騎士団の団長か?俺は会ってないぞ!」
「ならリーリャも会ってないか。良かった」
リーフレットは安堵のため息をつく。ミリーナもだ。
ミィリフィドは首を傾げた。
「ステファンならここへ来る様伝達しましたが?」
「「………」」
玉座がしん…と静まり返す。
ミィリフィドは再び首を傾げた。
「不味かったですか?」
きょとんとするミィリフィドを見てリーフレットは深い溜め息をついた。
そんな時だった。
従者が名を上げる前に玉座の間の扉を開け、異常なスピードでリーリャに剣を向けた人間が現れたのは。
ロイが本能的にリーリャを後ろに引っ張るが間に合わず、リーリャの白い頬に一本の赤い線が入る。
「リーフレット殿下。御下がり下さい」
「………ステファン…?」
ステファンと呼ばれた若い青年がリーリャの声に動きを止める。
肩まで伸びた美しい銀髪に虚ろな銀の瞳。
その顔には禁忌の証が刻まれている。
「ま…で…」
「おい、お前!いきなり何するんだよ!」
ステファンがボソボソ呟いていると勇者がステファンの肩を強く掴む。
「王…守…約…」
「え?
ッ!ああああああぁぁぁぁ!」
勇者の腕が宙を舞い、大理石で作られた床に落ちる。
そして急な激痛に勇者は切口を抑え床に転がり回る。
「勇者!」
「…やはりこうなったか」
「キャァァァァ!」
「勇者!今治療魔法をかける!」
ロイが服を破り勇者の切口を縛り出血を抑える。
その間ミリーナ王妃は叫び、次第に状況を理解したミィリフィドが治療魔法をかける。
リーフレットはその様子を呆れた様に見ている。
リーリャはと言うと…
「え??」
ただただ驚いていた。
「す、すてふぉん?」
リーリャは数歩後ろに下がる。
(見えなかった?)
リーリャは攻撃した事に驚いているのではなく、その攻撃が見えなかった事に驚いていた。
リーリャとステファンは数十年前まで互角の実力を有していた。
そして、リーリャが理を外れた時…リーリャに勝てる者はいなくなった。
リーリャはリーフレットを見た。
「ステファンに何があったの?」
「………。
ーーーーステファン。攻撃を止めよ」
リーリャの問いかけを無視し、リーフレットは昔の様な作られた笑みでステファンに命令する。
ステファンは追撃を止め、そのまま立ち止まった。
リーフレットがミリーナの瞼を手で覆う。
「…リーリャ。私はずっと後悔していた。あの時、もっと最善な方法があったはずだ、と」
そしてリーフレットは泣きそうな顔でリーリャを見る。
「お前は今、幸せか?」
「………」
勇者の悲鳴がこだまする中、リーフレットの声はやけに鮮明に聞こえた。
「……」
返答に困ったリーリャにリーフレットは苦笑する。
「私は…私達は、お前達の犠牲の上で生きている」
「はっ!」
リーフレットの指示に従い数十人の人間らが玉座から出ていく。
そんな中ロイに抱えられた勇者が満面の笑みで手を震る。
「ただいまリーフレット!ミリーナ!」
「勇者、頼むから気軽に出掛けるな。心配するだろう」
勇者のテヘペロポーズに呆れるリーフレット国王は首を傾げた。
「で、ロイはなぜ勇者を小脇に抱えている?」
「……………勇者はお疲れの様ですので、必要最低限の体力の消費で済むようにしているのです」
「そうなの?貴方が疲れるなんてあるの?
あとリーリャ、挨拶はどうしたのかしら?」
ミリーナに突然話をかけられリーリャはため息をつく。
(だから会いたくないんだよなぁ。それに…ここにはあいつもいるし)
「久しぶりリーフレットで…あ、リーフレット国王、ミリーナ王妃」
「久しぶりだなリーリャ。会いに来てくれなくて寂しかったぞ」
「同意ですリーリャ」
リーフレット国王達は愛想笑いの背景に黒いオーラを背負っていた。
リーリャは目をそらしながら笑う。
「リーフレット達と会うと権力抗争に巻き込まれるからねー」
「他にもあるのは分かっていますよ。ですが手紙くらいくれても良いでしょう?
私達何歳だと思っているんですか?もう五十代です。いつ死んでもおかしくないんですよ?」
「そうだ。一度も会わずに逝く可能性だって会ったんだぞ」
「あ…忘れてた」
リーリャは今思い出した様だ。二人が有限だった事を。
「お前達とは違うのだ。もう忘れるな」
「問題を後回しにする癖は未だ健在ね」
リーフレットとミリーナはクスクス笑う。
その様子を玉座の間にいた人間はポカンと見上げていた。
「父上母上、この者とそんなに親しかったのですか?」
「まぁリーリャは美人だしな!」
「………」
ロイは複雑な心境でリーフレット達を見ていたが、そんなロイとは正反対で勇者はズイズイ聞きにいく。
そしてミィリフィドもだ。
「リーリャは元王城勤務の幼馴染だ」
「ある日『探さないで下さい』と書き残して行方を眩ませたのよ、この人」
リーリャは居心地が悪くなるのを感じた。
「あぁ!あるよな~無遅刻無欠席な真面目ちゃんがある日行方眩ますやつ!」
「何時も遅刻欠席だったがなリーリャは」
リーリャは更に居心地が悪くなるのを感じた。
「戻ってくるのか、リーリャ」
「……えーと…まだいいかなぁ」
リーリャはロイの後ろに隠れた。
そして空気になる様気配を潜めた。
「まぁ会えただけでも良い」
「あら?リーリャ。ステファンには会ったのかしら?」
「すてふぉん?って白騎士団の団長か?俺は会ってないぞ!」
「ならリーリャも会ってないか。良かった」
リーフレットは安堵のため息をつく。ミリーナもだ。
ミィリフィドは首を傾げた。
「ステファンならここへ来る様伝達しましたが?」
「「………」」
玉座がしん…と静まり返す。
ミィリフィドは再び首を傾げた。
「不味かったですか?」
きょとんとするミィリフィドを見てリーフレットは深い溜め息をついた。
そんな時だった。
従者が名を上げる前に玉座の間の扉を開け、異常なスピードでリーリャに剣を向けた人間が現れたのは。
ロイが本能的にリーリャを後ろに引っ張るが間に合わず、リーリャの白い頬に一本の赤い線が入る。
「リーフレット殿下。御下がり下さい」
「………ステファン…?」
ステファンと呼ばれた若い青年がリーリャの声に動きを止める。
肩まで伸びた美しい銀髪に虚ろな銀の瞳。
その顔には禁忌の証が刻まれている。
「ま…で…」
「おい、お前!いきなり何するんだよ!」
ステファンがボソボソ呟いていると勇者がステファンの肩を強く掴む。
「王…守…約…」
「え?
ッ!ああああああぁぁぁぁ!」
勇者の腕が宙を舞い、大理石で作られた床に落ちる。
そして急な激痛に勇者は切口を抑え床に転がり回る。
「勇者!」
「…やはりこうなったか」
「キャァァァァ!」
「勇者!今治療魔法をかける!」
ロイが服を破り勇者の切口を縛り出血を抑える。
その間ミリーナ王妃は叫び、次第に状況を理解したミィリフィドが治療魔法をかける。
リーフレットはその様子を呆れた様に見ている。
リーリャはと言うと…
「え??」
ただただ驚いていた。
「す、すてふぉん?」
リーリャは数歩後ろに下がる。
(見えなかった?)
リーリャは攻撃した事に驚いているのではなく、その攻撃が見えなかった事に驚いていた。
リーリャとステファンは数十年前まで互角の実力を有していた。
そして、リーリャが理を外れた時…リーリャに勝てる者はいなくなった。
リーリャはリーフレットを見た。
「ステファンに何があったの?」
「………。
ーーーーステファン。攻撃を止めよ」
リーリャの問いかけを無視し、リーフレットは昔の様な作られた笑みでステファンに命令する。
ステファンは追撃を止め、そのまま立ち止まった。
リーフレットがミリーナの瞼を手で覆う。
「…リーリャ。私はずっと後悔していた。あの時、もっと最善な方法があったはずだ、と」
そしてリーフレットは泣きそうな顔でリーリャを見る。
「お前は今、幸せか?」
「………」
勇者の悲鳴がこだまする中、リーフレットの声はやけに鮮明に聞こえた。
「……」
返答に困ったリーリャにリーフレットは苦笑する。
「私は…私達は、お前達の犠牲の上で生きている」
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