さよならの言葉は風と共に。

ルーさん

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戻らない、戻る日常

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俺は当たり前な事を理解していなかった。

だから、皆、離れていった。


『ぼくたち、ずっとなかよし!!おとなになってもずっと!!』

昔の俺の声が脳に響く。

「ずっと……なかよし……」

は当たり前の事なんだ。
人は誰しも自分の傷を埋めてくれる人を求める。
ただ傷を舐め合っているだけでは、傷は治らない。

「大人になっても……」

ずっと、の言葉は、出なかった。


    〝ボクガコワレルマエニ、タスケテ〟





「椎名君、どうなさいました?」


俺はハッとして目を覚ます。そうだった、今は大事な打ち合わせ中だった。

俺は淡い夢の中での事を胸に押し入れ、今年度の新入生歓迎会の書類に目を通す。

「う~ん…これで良いんじゃ無いかなぁ~?」

風紀委員が見廻りをしてくれるルートはよく死角になりやすく、事件ばかり起きる場所だから、廻るルートは存外多い。
それに加えて前回話した時の、保健室の校舎裏もルートに入れていた。だから俺から言う事はもう無い。

「…そうですか。あの、魘されていたようですが大丈夫ですか?…顔色も悪い様ですし、体調が悪いなら早退した方が…。」


目の前のソファの左側に座っている風紀委員副委員長三和 静みわ しずかが前に屈んで俺の顔を見る。
副委員長はアーモンド形の黒目で髪は肩より少し長いぐらいに切り揃え、それを右側に纏めて流しいる『和』を思わせる人だ。
そして何かと言うと癒し系の優しい人だ……と思いたい。
そんな癒し系の副委員長が、凄く難しそうに眉間に皺を寄せている。…俺の性で。

確かに早退出来るならしたい。だけど、したら書類提出が遅れる。
ーーそんな事をしたら会長が怒られちゃう。

「大丈夫だよぉ?ちょっとぉ最近遊び過ぎちゃってぇ~」

それよりぃ、と言って急いで引き出しの上から青色のファイルと赤色のファイルを取り出し話を変える。

「青色が風紀委員長の署名が必要書類でねぇ面倒だから今ここで署名していってぇ」

俺はそう言って目の前のソファで不機嫌ですよ感丸出し+睨みを利かせている狼…風紀委員委員長鬼塚 和信おにずか かずのぶにファイルを渡す。

だが、渡したと思ったら顔面にファイルを投げつけられた。

バシンッと大きな音が鳴る。

「和信!?」

副委員長が驚愕の声を上げる。俺も驚いたけど大切な書類が入っているファイルだから、と瞬きもしない内にファイルを拾う。

「おい、犬。ご主人様達はどうしたんだよ。犬だけで大事な打ち合わせするとか舐めてんのか、てめぇら」

青色の、海の様な瞳で此方を強く睨むその顔は並大抵の不良なら土下座して逃げ出すだろう。
まぁ180以上ある長身に均等な実戦用の筋肉。それに怯えるのも有るだろうけど。

ついでに犬は俺、椎名 譲しいな ゆずるの事でご主人様達とは俺の幼馴染み達、俺以外の他の生徒会役員の事を言う。

まぁ風紀委員長の毒舌は今に始まった事では無いし、そこまで、痛くない…。

『貴方は本当に使えないわね。』

「……会長達はぁ~今、桃花ちゃんの所へ行ってるよぉ?何か急な用事があるんだってぇ…」

風紀委員長は俺の回答が気に入らなかったのか、チッと舌打ちし、ドアを乱暴に開け出ていってしまった。

素早い行動にすこし呆けていると、バタンとドアが、開けた音とは反対に静かに閉まる。

「すみません、最近ちょっとピリピリしてて…」

直ぐさま副委員長が頭を下げてくるが今の風紀の忙しさを知っているので怒る何てしないし、不満もない。

逆に…

「こっちこそごめんねぇ?ワンちゃんの俺しかいなくてぇ~…明日は皆いるよぉ?」

明日、戻ってくる。

「悪かった」って言って、たまに仕事をサボる俺の頭を叩いて、仕事を寄越してくる、横暴な会長が。

「すみません」って紅茶を入れて謝って、俺に小言を言ってくる、腹黒副会長が。

「「ごめんね」」って言ってから悪戯をする、生意気な双子の庶務が。

「…め、ん…」って、飴玉を渡しながら謝ってくる、無口な書記が。

戻ってくる…きっと。

ポタリ、と一筋の涙が落ちた事に、俺は気が付かなかった。












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