スウィ〜トな神様ご降臨! 〜おいしい甘味はいかが?〜

未来乃 みぃ

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第31ピース

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 お父様から貴族会の話を聞き、それからはお城の人はみんな大忙し。
 もちろん、主役といえる私も参加者の名前を覚えたり、ドレスや会場の装飾のデザインを決めたり。それなりに忙しく、『知識の本棚』で得た情報をフランに話す機会などなかった。
 そして貴族会を前日に控え、緊張で高鳴る心臓を無理やり抑えて眠りについた。

 ◇ ◇ ◇

 「フェリア様~! 起きてください! 今日は貴族会ですよ! 未来の紳士・淑女が集まる場、そんな場所に第1王女様が遅刻してしまっては、他の貴族様に示しがつきませんよ~!!」

 ん? リリアの、声……。

「う~ん……。はっ!! そうだ! 貴族会だった!」

 ただいま、朝の4時! 早すぎる!

「フェリア様! こちらに、朝食をご用意しております! その間に私は……」

 リリアに言われたとおりに椅子に座り、朝食を食べる。
 食べ終わると同時に、リリアが私を着替えさせる。ものすごい一瞬。当の本人はといえば、

「いつもよりは時間をかけましたよ?」

 と、なんてことなく答える。
 うん、怖い! 

「そちら、ギルアス様がご用意してくださったのですよ?」
「え、そうなの!? お父様が!?」

 お父様! 中々やりますね~! このドレス、ちょ~うかわいい! お洒落! エレガントっ! 私好み! 

「フェリア様、体調は問題ございませんか?」
「うん! でも、緊張しすぎて、心臓がやばい……」
「そうでしょうね、フェリア様、こういうパーティーは初めてですしね」

 そう、そうなの! 今日は、貴族会という名の、私のお披露目会! 王女様として、しっかりしなければならない日! 私の価値が決められる日!

「うわぁ~~!!!」
「あ~、フェリア様~! えっ~と……。あ、そうです! 自分を俯瞰で見ると、緊張がほぐれると聞いたことがありますよ!」

 悶える私を見て、一生懸命考えてくれるリリア。
 もう、それだけで十分、緊張はほぐれたさ……! 優しい! 最高!

「俯瞰で見る、か……」
「はい! 自分の事が、他人の事のように感じますよ!」
「なるほど。そういう緊張のほぐし方は聞いたことなかったかも……。もっと手のひらに人って書いて飲み込む的なものがでてくるかと……」
「え? 手のひらに人と書いて飲み込むと、緊張がほぐれるんですか? あれ? の、飲み込むんですか……? 自分の手を……?」
「う~ん、ちょっと違うかな?」

 この世界にそういうのはないみたいだね。よし! 俯瞰を意識して今日を過ごそう!

「ありがとう、リリア!」
「はい、どういたしまして!」

 この後も、リリアと用意を進めていき、貴族会の時間は刻一刻と迫ってきていた。

 ◇ ◇ ◇

 お兄様に、私のドレス姿を見せに行く。
 遂に、貴族会の時間がやってきた。

「どうですか? 似合ってます? お兄様!」
「わ、すごくかわいいね。とても似合ってるよ! 最後に僕から、かわいいお姫様にプレゼント」

 子供なのにどこか色気溢れる笑顔で、お兄様は私の髪にリボンをつける。色味も雰囲気も、ドレスにとても合っていた。

「わぁ! ありがとうございます! 大好きです! お兄様!」
「ふふっ。どういたしまして」

 うぐっっっ! 今日は一段とお兄様が神々しい!
 ……コホン! 髪留めがなかったのは、きっとこのためだったんだろうね!

「じゃあ、行こうか」
「はい!」

 お兄様にエスコートされて、私は大きくて重い扉の先に足を進めた。

 キィィィィン……。

 扉が開き、目の前が明るくなる。

「すごい、輝いてる……!」
「そうだね。でも、もうみんなの前だよ? しっかり、一歩ずつ進もうか」
「……はい!」
「第1王女殿下、フェリア様、第1王太子殿下、ジーク様のご登場です!」

 この声を聞いて、私たちはレッドカーペットの上をゆっくり歩いていく。貴族の子供たちにキラキラとした目で見られながらも、王と王妃、つまりお父様とお母様のところに向かって進む。私とお兄様は、階段を登った先の玉座に座っている2人の前で止まり、綺麗で完璧なカーテシーをする。

「陛下、この度わたくしフェリアが、貴族の一員に加わることを報告します。未来へ一歩前進すること、王族として恥じぬ行いをすること、皆が笑って暮らせるようにできる限り努力することを、ここに誓います」
「……うむ。努力するといい」

 お父様が一言そう言うと、後ろで聞いていた貴族たちが歓声を上げ、広い会場は拍手で満ちた。
 それが、私が貴族の輪に入った瞬間だった。

「それでは、パーティーをお楽しみあれ!」

 お母様のその言葉で、王城のメイドや執事達は、次々と新しい料理を運ぶ。貴族達はといえば……私に挨拶にくる。
 だるい。もう本当に、面倒くさい! 王女様モードは辛い! でもやらないと!

「本日はお越しいただきありがとうございます────」

 同じようなやりとりを、幾度となく繰り返す。
 そして段々と私の前に人はいなくなり、残り十数人となった。
 やっぱり、私からの好感度がほしそうな雰囲気をしている貴族が多い。自分の家の自慢とか、うちの息子をよろしく~みたいな。
 子供だからと舐められちゃ困る! 大人だもん!

「本日はお越しいただき……って、ライアスさん!?」
「やあ」

 結構軽い感じで挨拶してくるライアスさん。
 その後ろには、マルシュアさん、テーナさん、ラルグさん、サティアさんもいる。

「な、なんでいるんですか!?」
「いや、僕も呼ばれたんだよ? 魔物討伐とかでそれなりに功績あげてるし、こういうパーティーは結構呼ばれるんだよね。まぁ、今日はフェリアの晴れ舞台だからって、陛下から直接招待されたんだけど」
「なんだ、フェリアは知らなかったんだな! 丁度いいサプライズじゃないか!」

 ガハハ、と豪快に笑うテーナさんを見ていると、緊張がどこかへ消えていった。
 もしかしたら、お父様は私が緊張しすぎないように、ライアスさん達を呼んだのかもしれない。

「フェリアさぁ、王女様モードはどうしたのぉ?」

 ……マルシュアさんは呼ばなくてよかったのに。

「もー! 別に、いいじゃないですか! 王女様とか面倒くさいんです!」
「そうなのぉ? なら、みんなにそうやって教えてあげようかなぁ~?」
「それはやめて下さい!」

 全力で止めると、マルシュアさんは楽しそうに笑う。

「冗談だから、安心しなぁ!」

 ここまでもう一連の流れになってきたわ……。
 絶対、冗談じゃなかったし……。

「マルシュア……フェリア、を、……からかい、すぎない……。それで……どう? 初めての、パー、ティー……」
「う~ん、もうすでに疲れたってぐらいですかね?」
「俺たちで……挨拶最後だよね……? フェリアと……年の近い貴族の子もいたから……話してきたら……?」

 心配そうにしてくれる2人。
 ああ、サティアさんとラルグさんの優しさが、心に染み渡る……。

「そうします! では、皆さんも楽しんで!」
「うん。フェリアも楽しんで」 

 そう言ってライアスさん達と別れ、挨拶の時に気になった子を探して、一緒にお喋りすることにした。
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