「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶

文字の大きさ
4 / 28
1話

4

しおりを挟む
 数カ月後、カナリアは禁断の森の自宅のソファで手紙を読んでいた。
 時折診察のため父親が来るが基本は穏やかな一人暮らしを送っていた。

「サリナ、王子様とお友達になったんだ…」


 手紙には愛娘から送られてきた学校での日々が綴られていた。
 何でも入学式初日に文句をつけられ決闘を申し込まれ、見事勝利したとのこと。
 それから交流を重ね、今では良き学友として日々競ってるらしい。

「あんなに小さかった子が、王子様とお友達になるなんてね~」

 しみじみと感動しているカナリアだが、手紙の最後に書かれていた言葉を見て「ん?」となってしまう。

『追伸、お母さんに会わせたい人がいるから近々帰るね』

「会わせたい人…?お友達でも連れてくるのかな?」

 カナリアはソファから立ち上がるとキッチンへ向かい、戸棚を漁り始める。

「う~ん。王子様をもてなすにはあんまり材料無いな…。今度父さんに買ってきてもらうか」

 などと考えていたカナリアは知らなかった。
 娘が連れてくるのが友達ではないことに。


 数日後、サリナが禁断の森へ帰ってくる日になった。
 カナリアは彼女の好物であるパウンドケーキを作って帰りを待っていた。

「そろそろ帰ってくるだろうけど…」

 カナリアは鏡の前で自身の姿を念入りに確認する。
 包帯やガーゼまみれでとても怪我人にしか見えない姿であるが、鱗は全て隠されていた。

 コンコンッ

「お母さーん、ただいまー」
「あ、はーい」

 玄関先から声がして、カナリアは急いで玄関へ向う。

「おかえりなさい、サリ…」
「お母さん、会わせたかった人連れてきたよ」
「久しぶりだな、カナリア」

 ガチャリと扉を開き、カナリアは硬直する。
 そこにいたのは愛する娘と、かつて愛した男の姿があったのだ。

「っ!」

 カナリアは急いで扉を閉めようとするが、男に、ロナルドにそれを阻止される。

「16年ぶりの再会なのに酷いじゃないか」
「私は!会いたくなかった!」
「俺は会いたかった」
「っ!」

 なんの恥ずかしげもなく言うロナルドに戸惑いの色を見せるカナリア。

「それにそのガーゼに包帯はどうした?怪我でもしたのか、お前の父は何をしている」
「か、関係ないでしょ!」

 ギリギリと扉を引っ張り合う2人。
 そんな2人を見てサリナはため息1つ付き、2人に手を向ける。

「“時よ、戸惑え”」

 そう言うと2人の時は魔法によって、まるでスローモーションの様になる。
 突然動きが遅くなったことに戸惑う2人は手にしていた扉から力が抜ける。
 その隙を見てサリナは扉を開き、ロナルドの背中を押し中へ押し込む。

「え、ちょ!?」

 カナリアはサリナの魔法が解け、バランスを崩し更にロナルドが彼女を押し倒すような格好になってしまう。

「あとはごゆっくり~」
「ちょ、サリナ!?」

 サリナはそう言うと扉を素早く閉め、ガチャッと外から鍵をかける。
 ロナルドに押し倒される形になってるカナリアは深呼吸し、口を開く。

「どいて、くれる?」
「断る」

 ロナルドは間を空けずに言うとそのままカナリアを抱きしめる。

「え、あの」
「カナリア、あぁ、本物なんだな…」

 彼の腕の力は徐々に籠っていく。
 だんだんと苦しくなり、カナリアはバシバシと彼の腕を叩く。

「ちょっと!所帯持ちがこんな事していいの!?」
「所帯持ち?何のことだ。俺は独身だぞ」
「えっ、ローゼン男爵令嬢とお見合いしてくっついたんじゃないの!?」
「お前以外娶る気はない」
「え、えぇ?」

 困惑の色を見せるカナリアに、ロナルドはため息を付き自身の頭をガシガシかく。

「どうやら、情報のすれ違いがあるようだな。まずはそれらをすり合わせしよう。その上で、色々問いたい」
「あ、うん。あ、そうだ、パウンドケーキあるんだ。サリナの好物なんだけど…食べる?」
「……頂こう」

 16年ぶりの再会は、なんとも言えない空気になっていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

余命3ヶ月と言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のセイラは、ずっと孤独の中生きてきた。自分に興味のない父や婚約者で王太子のロイド。 特に王宮での居場所はなく、教育係には嫌味を言われ、王宮使用人たちからは、心無い噂を流される始末。さらに婚約者のロイドの傍には、美しくて人当たりの良い侯爵令嬢のミーアがいた。 ロイドを愛していたセイラは、辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうになるのを必死に耐えていたのだ。 毎日息苦しい生活を強いられているせいか、最近ずっと調子が悪い。でもそれはきっと、気のせいだろう、そう思っていたセイラだが、ある日吐血してしまう。 診察の結果、母と同じ不治の病に掛かっており、余命3ヶ月と宣言されてしまったのだ。 もう残りわずかしか生きられないのなら、愛するロイドを解放してあげよう。そして自分は、屋敷でひっそりと最期を迎えよう。そう考えていたセイラ。 一方セイラが余命宣告を受けた事を知ったロイドは… ※両想いなのにすれ違っていた2人が、幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いいたします。 他サイトでも同時投稿中です。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます

コトミ
恋愛
 セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。 「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」  困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。

処理中です...