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刻まれる②

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次の日 朝8時

もうあの人は仕事に行っているはずの時間。
携帯の電源を入れる。

留守番履歴20件
保存出来る最大まで入っていた。

ピコンピコン…
携帯がひっきりなしに鳴り続ける。
メール受信50件、、、


その数に驚く。

…画像?…
メールに付属の画像がある。
ゆっくり画像がダウンロードされていく、、、

「…っひっ!!!!」

思わず携帯を落とした。
手が震える。


そこには…

血だらけの腕が写っていた。
腕にはと私の名前が刻まれていたのだ。

顔から血の気がひいていく。

急いで部屋へ向かった。








部屋の前につく。
全力で走った。どうやって帰ってきたか覚えてない。
なにも考えられなかった。


ドアに手をかける。

…ガコ

鍵がかかっている。
急いで鍵をあける。


「ユウ!!!!!」
彼の名前を呼ぶ


シーンと静まりかえった部屋
カーテンが閉めきってあって、真っ暗で前が見えない。

…ごつっ…

何かが足にぶつかった。

恐る恐る下をみる…


「ユウ!!!!!!!」

血だらけの彼が倒れていた。
口からはウィスキーの匂いがする。

必死に抱き上げる。

意識がない……

彼から離れ救急車を呼ぼうとする。
指がうまく動かない。


…ないで…
呻くような声がする。

「ユウ!!!」
彼が意識を取り戻した。

緊張が溶けて涙が出る。


「なにやってんのよ!」
彼を引っ叩いた。


俯きながら涙を流す。
「ほんとにごめんなさい。」


彼は嗚咽を漏らし泣き始めた。


彼の怪我を治療する。
幸い血はとまりかけていた。

…思ったより深くなくてよかった…


彼は泣き続けている。

「こんな事して何になるの?なんでこんな事したの?」

彼はしばらく黙った後
「こんな事でしか愛してるって伝えられない。伝え方も愛し方もわかんないんだよ….。」
と言った。

「こんな事されたって伝わらないよ。死んだかと思った。」

「死んだ方がよかったよね。俺なんて。サワにはもう俺はいらないもんね。」
蹲りながら呟く。

「そんな事は思ってない。でも…」
いい終わる前に彼が話出す。

「前に母親が出ていった話はしたよね?
母親が出て行ってからはずっと1人だったんだよ。
家族もバラバラになって。
家の中でずっと1人で。それからずっと1人だったんだよ。
サワだけだったんだ。初めてだったんだよ。1人じゃないのは。誰かが家で待っててくれる。それがどれだけ幸せか…
幸せだって思えば思うほど、この幸せを失いたくないって。取られたくないってその思いばっかりになってサワを苦しめてしまった。
苦しんでるのも解ってたのに。それでも側にいてくれればいいって。ほんと自分勝手だったよね。
ごめん、、、ほんとにごめん、、、」

また泣き出す。

彼を見つめる。

…この人は父親に似てるんじゃない…私に似てるんだ…

そう思った。


その時

……うっっ…
急に吐き気が襲ってきた。


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