そばえに咲く傘のはな

くさの

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Act.02 刷込、娯楽、ワスレナグサ

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 一限目の講義は板書が多く教科書にそって進めるもので、ついつい集中力が欠けてしまうものだった。
 だからといってちょっと講義室の窓から外を眺めようと考えるのは学ぶ姿勢としていかがなものか。分かってはいても、抗えない。跳んで行け睡魔。
 講義は大抵自由席で、この講義もどこへという指示は特になく陽当たりもいいからと窓際の席に座ったのが運のつきだった。
 窓の外は中庭といおうかエントランスとでも言おうか、正門から入ってどの建物に行くかの分かれ道にあたる場所が見える。専攻している学科によって講義の開始時間はそれぞれにあり、現に今も各自出席する講義に合わせてやってくる学生がまばらに歩いている。

 講師の話を聞きながら、ノートを取りながら、視界の端にちょこちょこと何かが動いて見えた。人ではない、なにか。
 それは地元で知らないふりをして普通の人たちとなんら変わりない生活を送ろうとしていたまどかを、その生活から少し目を外すと視えてくる世界へと改めて、強引に引きこんだ。
 正直この間のような違和感ではなく、学生か猫やハトといった動物が遊んでいるのだろうと、まどかはちらっと、その動く生き物が何か確認したくて覗いてしまった。
 よくよくみるとそれは、まるで意志があるようにあちこちうろうろとしていた。猫やハトだろうと思っていた動く物体の姿が見慣れた動物ではなく、土で汚れたボールのようなものがころころ転がっていただけだったが動きがどうにも風で煽られている訳ではなさそうだった。
 傍を通る学生のひとりは、それに気付いてもいない様子であわや蹴り飛ばしそうになっていた。

「(ひぃ……間一髪……って、あれはみんなにはのか)」

 まどかはさっと顔を戻した。
 この間、約束を担保に間借りすると押し掛けてきた人の姿をした和装の妖怪である瑞枝と和傘の藍、それ以外のあやしいモノには関わらないと先日決めたばかりだった。
 瑞枝との約束は約束であり契約なので仕方がないが、これ以上呪いなんてものを貰うことも避けたい。
 すべてが呪いを持ってるわけではない、とは思うけれどこの間の一件で本当に触らぬ神に祟りなしだと前以上に実感した。
 それに加えて、ただでさえ講義スケジュールはハードなのだから、と今視たものを視なかったことにした。
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