魔法戦士 トイ・ドールズ

森原明

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2 登場!魔法戦士

シーン4 魔法戦士オキシペタラム誕生

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「さあ!まずは変身したいって頭の中で思うんだ」

「・・・思うだけでいいの?」


 初めての変身…アニメなどでは何も教わらずにサクサクと変身しちゃうことが当たり前なところだが、現実ではそんな簡単な事ではない。
事実、先程何気なくではあるが変身しようと指輪を掲げた優子だったが、その時は何も起こらなかった。


「基本、変身するためには先導者であるボクの承認が必要なんだ。それは魔法戦士の力を悪用しないための一種のリミッターみたいなもので、命の危機が迫った場合を除いては必ず必要になる」

「・・・それは、つまり…」

 優子はピックの顔をまじまじと見てから、今度は自分の拳をじっと見て呟いた。




「…万が一の時にアンタを魔法戦士の力で全力でぶん殴ったりは出来ないってこと?」

「・・・・・そういうことになるけど……
キミ、まだ信用してなかったんかいな?!」

 呆れ顔と多分その時のことを想像したのだろうか?
ピックの顔に沢山の汗が流れ出していた。


「今の世の中、オイシイ話ほど簡単に信じるとロクな事が無いってくらいは・・・」

「とにかくっ!」

 ピックは優子の頭を小突きたいのをぐっと押さえて話を進める。


「ボクの承認の後、キーワードを口にしながら指輪に念を送れば変身が始まるよ。
その言葉はキミが忘れない、簡単な言葉のほうが良いかもね」

「…かんたんな、ことば、かぁ……」

 どうせならかっこいい言葉がいいかな?と思ったものの…ボキャブラリーがそんなに豊富とは言えない彼女の頭の中に浮かぶ単語は限られていた。


「あとは変身後だけど…戦い方は指輪からキミに伝わるはずだから、湧いてきたイメージ通りにやれば出来るはずさ」
「・・・そ、それだけ?随分と簡単なんだけど大丈夫なの?そんなんで??」

「敷いて言えば、後は個々のセンスの問題はあるかな?
・・・とりあえず、変身してみよう!」



「・・・だ~か~らっ!!そんな事、オレが黙ってさせると思うの…ぎゃん!!」


 ピックと優子の、なにかしようとする気配を依代の老犬の能力のおかげで感じたジャッカルが、二人に向かって飛びかかろうとしたが、ミルフィーユの手元を離れたホウキの一撃に遭い、地面に激しく叩きつけられて悲鳴を上げた。


「アンタの相手はこのわ・た・し☆」

「この……生意気なあばずれがあぁっ!
我が下僕よ、いけええぇっ!」


ぎゃおおおおんっ!


 いつの間にかジャッカルの直ぐ側まで戻ってきていたティラノサウルスが威嚇の雄叫びを上げると、その音波の波がミルフィーユに襲いかかった。


「…おっと、危ない」

 その音波が来るのを察していたかのように左手を恐竜の方に差し出して、彼女は魔法障壁で防御した。
彼女の周りに衝撃波がぶつかり、激しく地面から土煙が上がる。

恐竜に意識が向いた瞬間を、ジャッカルは見逃したりはしなかった。


「きゃ……」
「あめえんだよ」

 地面に倒れていたジャッカルが脚でミルフィーユの足元を大きく横薙ぎに払う。
意識が違う方を向いていたミルフィーユは流石にソレを避けることは出来ずに足を掬われ、ストンと尻餅をついてしまった。


「…いったぁ~……あっ?!」

地面にお尻が着いてすぐに、畳み掛けるようにして恐竜がミルフィーユの体を両手でがっしりと掴む。


「オレ様のことをナメ過ぎなんだよ!ざまあ無いぜ」

「・・・ナメてるんじゃなくて馬鹿にしてたんだけどなぁ…」


 自分が恐竜に捕まってしまい、苦笑いしながらそんなことを言う彼女にジャッカルの怒りが更に加速する。


「貴様ぁ!」
「ほらほら☆そうやってすぐ頭に血が登って自分が何をしようとしたのか忘れちゃうあたりが3流なのよ。
変身、始まったみたいよ?」

「あ゛・・・」






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