『異界酒場 ルーナ』

みぎみみ

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第2巻

第6話 二人の夜

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その翌月、高橋夫妻が一緒に来た。

二人でカウンターに並んで座った。

「久しぶりですね」とルーカスが言うと、高橋が「妻が来たがったので」と言った。清子が「あなたが来たかったんでしょう」と返した。二人で笑った。

今夜の二人の渇望を、ルーカスは見た。

高橋——ここが、第二の静かな場所になっている。

清子——夫がここで回復していることを、目で確認したかった。

「二人で何を飲みますか」

「おまかせで」

高橋にはダークラムのソーダ割り、清子にはエルダーフラワーとスプマンテの軽いカクテルを出した。

「乾杯、していいですか」とルーカスが小さなグラスを出した。

「いいんですか? 店主も一緒に」

「今夜はそういう気分です」

三人でグラスを合わせた。

細い音が地下のバーに響いた。

「ルーカスさんって、日本は好きですか」と清子が聞いた。

「好きです。少しずつ、好きなものが増えています」

「たとえば?」

「梅酒と、金木犀と、夜明けの少し前の時間と」

「夜明け前?」

「深夜にここで働いていると、夜明け前が一番静かな時間なんです。全部が止まっているような感じがして」

高橋が頷いた。

「わかります。任務中も、夜明け前が一番しんと静かで——嫌いじゃなかった」

「そうですよね」

「その感覚、久しぶりに思い出した」

しばらく、三人で静かに飲んだ。

会話がなくても、静けさが心地よかった。

清子が帰り際に言った。

「ここが好きな理由が、分かりました」

「なんですか」

「黙っていても、居場所があると感じられる場所だから」

ルーカスはそれを聞いて、少しだけ目を細めた。

「……ありがとうございます」

「本当のことを言っただけですよ」

それは篠田先生も言った言葉だった——と、ルーカスは思った。

本当のことを言っただけ。

その言葉が、また届いた。

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