『異界酒場 ルーナ』

みぎみみ

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第2巻

第12話 香月の宿題

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一ヶ月後、香月が来た。

顔が少し違った。

「何かいいことがありましたか」

「……久しぶりに、本当に助けられた、と言われた」

「どんな」

「老人の依頼者で。亡くなった息子に、謝りたいことがあると。俺には死者の声は届かないが——息子さんの好きだったものを聞いて、それを並べて、『息子さんはこういう人だったはずだ』と話した」

「それで」

「老人が、『そうだ、そのとおりだ。謝れた気がする』と言った」

「素晴らしい」

「俺が何かしたわけじゃない。ただ話を聞いて、言葉にしただけだ」

「それが仕事だと思います。私もそうです」

香月はカウンターを見た。

「……あんたに影響されたな」

「そうですか」

「話を聞くことの力を、あんたを見て学んだ。情けない話だが」

「情けなくない」

「六十近い男が、バーテンダーに学んでいる」

「年齢は関係ないですよ」

「そうだな」

今夜の香月の渇望は、霧が完全に晴れていた。

——感謝を伝えたい。

「今夜は何か、祝いのものを出していいですか」

「俺が祝われるのか」

「あなたが誰かを助けた夜なので」

「大げさだ」

「大げさではないです。人の心が少し軽くなった夜は、祝うべきだと思っています」

香月は少し困った顔をして、「……まあ、好きにしろ」と言った。

ルーカスは今夜、スコッチとドライシェリーを合わせたカクテルを作った。複雑で、深くて、でも飲みやすい。

「これは何だ」

「ルービー・ロブ・ロイというカクテルです。ウィスキーとシェリーの組み合わせで、贈り物に向いています」

「誰への贈り物だ」

「今夜のあなたへの」

香月は少し目を細めた。

「……気障な男だな」

「外国人なので」

「言い訳にするな」

「本当のことです」

香月は笑って、グラスを受け取った。

一口飲んで、目を閉じた。

「……うまい」

「よかった」

「また来る」

「お待ちしています」

香月が帰った後、ルーカスは思った。

見えすぎる孤独——それは自分も知っている。

他人の渇望が見える自分と、霊的なものが見える香月。形は違う。でも、見えることと孤独の間にある距離は、似ているかもしれない。

同族、と香月は言った。

正確ではないが——あながち間違いでもない。
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