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第3巻
第8話 問いを抱えた夜
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ファビアンが来た翌日。
ルーカスは一人で開店前のバーに座っていた。
グラスに梅酒を注いで、飲まずにいた。
帰れる、かもしれない。
四十パーセント。
低くはない。でも、確実ではない。
失敗すれば「どこへ行くか分からない」——つまり、この世界からも消えて、故郷にも戻れない可能性がある。
考えた。
故郷に帰れば、何がある。
兄たちの争いはどうなっているか。父王は生きているか。自分を知っている人間はまだいるか。
この世界に残れば、何がある。
ルーナがある。常連たちがいる。礼奈がいる。香月がいる。篠田先生がいる。晴樹がいる。
それから——まだ来ていない、名前も知らない人たちがいる。
今夜も誰かが降りてくる。その人の渇望に、応えられる。
その繰り返しが、この二年で作ったものだ。
でも、故郷の兄たちはどうしているのか。
ルーカスが消えたことで、何が変わったのか。
「変なものだ」
一人でそう言った。
梅酒を一口飲んだ。
答えは出ない。今夜、出す必要もない。
ただ——ファビアンに、一度だけ正直に聞いてみようと思った。
帰った後の自分が、どこにいることができるのか、と。
零時になった。
ドアのロックを外した。
最初の客が来た。
見知らぬ三十代の男だった。渇望を見ると——迷っている、という形をしていた。
「いらっしゃいませ」
「あの、ここ、一人でも大丈夫ですか」
「もちろんです」
男は席に座った。
ルーカスはグラスを取り出した。
今夜もここにいる。
それが今の答えだ。
ルーカスは一人で開店前のバーに座っていた。
グラスに梅酒を注いで、飲まずにいた。
帰れる、かもしれない。
四十パーセント。
低くはない。でも、確実ではない。
失敗すれば「どこへ行くか分からない」——つまり、この世界からも消えて、故郷にも戻れない可能性がある。
考えた。
故郷に帰れば、何がある。
兄たちの争いはどうなっているか。父王は生きているか。自分を知っている人間はまだいるか。
この世界に残れば、何がある。
ルーナがある。常連たちがいる。礼奈がいる。香月がいる。篠田先生がいる。晴樹がいる。
それから——まだ来ていない、名前も知らない人たちがいる。
今夜も誰かが降りてくる。その人の渇望に、応えられる。
その繰り返しが、この二年で作ったものだ。
でも、故郷の兄たちはどうしているのか。
ルーカスが消えたことで、何が変わったのか。
「変なものだ」
一人でそう言った。
梅酒を一口飲んだ。
答えは出ない。今夜、出す必要もない。
ただ——ファビアンに、一度だけ正直に聞いてみようと思った。
帰った後の自分が、どこにいることができるのか、と。
零時になった。
ドアのロックを外した。
最初の客が来た。
見知らぬ三十代の男だった。渇望を見ると——迷っている、という形をしていた。
「いらっしゃいませ」
「あの、ここ、一人でも大丈夫ですか」
「もちろんです」
男は席に座った。
ルーカスはグラスを取り出した。
今夜もここにいる。
それが今の答えだ。
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