『異界酒場 ルーナ』

みぎみみ

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第4巻

第23話 王国の秋

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九月。

金木犀に似た花が、王都の街路に咲く季節。

この世界の花は「夜香花」と言う。夜に強く香る、小さな黄金色の花。

ルーカスはその花を、店の入り口に一束飾った。

東京の金木犀とは形が違う。でも、夜に香る甘さは似ていた。

アメリアが来て「良い匂い」と言った。

ユーリが来て「何の花だ」と聞いた。

新しく来た客が「この店は花を飾るんですね」と言った。

「好きなんです、香る花が」とルーカスは答えた。

「どこで覚えたんですか」

「遠い場所で、似た花がある場所がありました。そこで好きになりました」

「遠い場所、というのは」

「とても遠い場所です」

「ヴァルドの外ですか」

「もっと外です。言葉にできないくらい」

客は不思議そうな顔をしたが、それ以上聞かなかった。

その夜、ルーカスは閉店後に夜香花の香りを吸い込みながら、東京の金木犀を思い出した。

清子が水をやっているあの鉢植え。

今年の秋も、咲いているだろうか。

「咲いているといいな」

声に出した。

夜香花の香りが、返事のように漂った。
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