『異界酒場 ルーナ』

みぎみみ

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第5巻

第4話 礼奈の言葉

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三日目の夜。

礼奈が来た。

昨夜は他の人たちと一緒だったので、今夜は一人で来た。

「昨夜は、うまく話せなかったので」

「そうでしたか」

「みんないたから。ルーカスさんと一対一で話したくて」

白ワインのカクテルを受け取って、礼奈は一口飲んだ。

「変わりましたか、向こうで」とルーカスが聞いた。

「変わりました。仕事が変わりました」

「どう変わりましたか」

「校閲から、編集に移りました。自分で本を作る側に」

「それは大きな変化ですね」

「ここに来て、言葉を届けたい、という気持ちがはっきりしてきて——届け方が変わった感じです」

「校閲も言葉を届けていましたよ」

「そうなんです。でも編集は、もう少し直接届けられる気がして。作家と一緒に、読者へ向けて言葉を作っていく仕事です」

「水月の本も、関わりましたか」

礼奈は少し目を細めた。

「……関わりました。担当編集になりました、二冊目から」

「そうだったんですか」

「ルーカスさんが向こうへ行ってから、水月さんと話す機会が増えて。水月さんが『礼奈さんと一緒に作りたい』と言ってくれて」

「それは、縁が繋がりましたね」

「ここで繋がった縁が、向こうでも続きました」

礼奈はグラスを両手で包んだ。

「一つ言いたかったことがあって」

「どうぞ」

「ルーカスさんが帰った後も、ここで言葉を考え続けました。感情を言葉にすることを、練習し続けました」

「成果はありましたか」

「あったと思います。編集の仕事に活きています。あと——新しい恋人ができました」

「それは良かった」

「言葉で伝えることを、少しずつ練習してきたので。怖かったですが、伝えました」

「勇気がいりましたか」

「とてもいりました。でも——言えました。ここで練習してきたから」

ルーカスはグラスを磨きながら、言った。

「礼奈さんが言葉を届けられるようになっていること、嬉しいです」

「ルーカスさんのおかげです」

「聞いていただけです」

「聞いてもらえたから、言えるようになったんです。それが大事なんです」

少し間があった。

「また来ますか、この夜が終わった後も」

「来ます」と礼奈は言った。「ここは、私の場所なので」

「そうです。ここはあなたの場所です」

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