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第6巻
第1話 二つの冬
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――月は、どの夜にも同じように昇る――**
---
第六巻について
二つのLUNAが、それぞれの場所で根を張った。
東京の地下一階。ヴァルド王国の地下一階。
どちらにも看板がある。どちらにも灯りがある。どちらにも誰かが来る。
そして——ルーカスは今夜も、どちらかの夜の底にいる。
最終巻。
この物語の、最後の夜。
十二月。ヴァルド王国。
雪が降り始めた。
王都に初雪が降る日は、この世界では静かな祝日に近い。
街の人たちが窓から雪を見て、一日だけゆっくりする。
ルーカスはその日、開店前に窓から雪を見た。
東京の冬を思った。
東京は雪が少ない。降っても、すぐに溶ける。
でも、雪が降った朝の東京の静けさは、この世界の初雪の静けさに少し似ている気がした。
世界が違っても、雪が降ると静かになる。
それは当然のことかもしれない。でも当然のことが、両方に当てはまる——というのが、不思議で、温かかった。
その夜、ユーリが来た。
「初雪だ」
「そうですね」
「初雪の夜には、何か特別なものを飲むか」
「飲みますか、初雪の夜のために作ったものを」
蜂蜜酒に、この世界の白い木の実の蒸留酒を少し加えたものを作った。冷たくて、甘くて、少し清潔な香りがする。雪の夜に合う味。
「……白い味だ」
「そういう味です」
ユーリは飲みながら、「アメリアが、研究の最終段階に入ったと言っていた」と言った。
「常時通信の研究ですか」
「そうだ。来年の春には試験運用ができるかもしれないと」
「来年の春に、東京とここが常に繋がれる」
「繋がれる」
「楽しみですね」
「楽しみだ。でも少し——怖くもある」
「なぜ怖いですか」
「常に繋がるということは、常に比べられるということでもある。向こうの世界と、こちらの世界が」
「比べる必要はないですよ」
「分かってはいるが、人間は比べるものだろう」
ルーカスは少し考えた。
「比べた時に、こちらが向こうより劣っていても、こちらにしかないものがある——そういう見方ができれば、比べることが悪くなくなります」
「こちらにしかないもの」
「この雪の夜の静けさとか、夜香花の香りとか、蜂蜜酒の深さとか」
「向こうには、梅酒と金木犀がある」
「そうです。どちらも本物です」
ユーリは雪の夜のカクテルを飲んだ。
「……比べなくて、いい」
「いいです」
「そうか」
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第六巻について
二つのLUNAが、それぞれの場所で根を張った。
東京の地下一階。ヴァルド王国の地下一階。
どちらにも看板がある。どちらにも灯りがある。どちらにも誰かが来る。
そして——ルーカスは今夜も、どちらかの夜の底にいる。
最終巻。
この物語の、最後の夜。
十二月。ヴァルド王国。
雪が降り始めた。
王都に初雪が降る日は、この世界では静かな祝日に近い。
街の人たちが窓から雪を見て、一日だけゆっくりする。
ルーカスはその日、開店前に窓から雪を見た。
東京の冬を思った。
東京は雪が少ない。降っても、すぐに溶ける。
でも、雪が降った朝の東京の静けさは、この世界の初雪の静けさに少し似ている気がした。
世界が違っても、雪が降ると静かになる。
それは当然のことかもしれない。でも当然のことが、両方に当てはまる——というのが、不思議で、温かかった。
その夜、ユーリが来た。
「初雪だ」
「そうですね」
「初雪の夜には、何か特別なものを飲むか」
「飲みますか、初雪の夜のために作ったものを」
蜂蜜酒に、この世界の白い木の実の蒸留酒を少し加えたものを作った。冷たくて、甘くて、少し清潔な香りがする。雪の夜に合う味。
「……白い味だ」
「そういう味です」
ユーリは飲みながら、「アメリアが、研究の最終段階に入ったと言っていた」と言った。
「常時通信の研究ですか」
「そうだ。来年の春には試験運用ができるかもしれないと」
「来年の春に、東京とここが常に繋がれる」
「繋がれる」
「楽しみですね」
「楽しみだ。でも少し——怖くもある」
「なぜ怖いですか」
「常に繋がるということは、常に比べられるということでもある。向こうの世界と、こちらの世界が」
「比べる必要はないですよ」
「分かってはいるが、人間は比べるものだろう」
ルーカスは少し考えた。
「比べた時に、こちらが向こうより劣っていても、こちらにしかないものがある——そういう見方ができれば、比べることが悪くなくなります」
「こちらにしかないもの」
「この雪の夜の静けさとか、夜香花の香りとか、蜂蜜酒の深さとか」
「向こうには、梅酒と金木犀がある」
「そうです。どちらも本物です」
ユーリは雪の夜のカクテルを飲んだ。
「……比べなくて、いい」
「いいです」
「そうか」
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