180 / 185
第6巻
第26話 坂本と孫
しおりを挟む
一月。
坂本が来た。
「孫と、探偵ごっこをしてきた」
「どうでしたか」
「最高だった」
「最高ですか」
「孫が犯人で、俺が探偵で。孫が隠したぬいぐるみを、俺が見つける。そういう遊びだ」
「見つけられましたか」
「三回中二回は見つけた。一回は孫に勝てた」
「孫が賢いんですね」
「賢い。五歳になったが、思ったより知恵がある」
「娘さんとの関係はどうですか」
「……良くなってきた。孫を通じてという、迂回路だが」
「迂回路も立派な道です」
「そうだな。直接より遠回りだが、辿り着ける」
坂本はアルマニャックを一口飲んだ。
「三十八年の経験が、孫の遊び相手に使われるとは思わなかった」
「観察力が役立っているんですね」
「役立っている。探偵の仕事で一番大事だったことが、孫との遊びで一番大事なことと同じだとは思わなかった」
「何が大事ですか」
「相手が何を欲しがっているか、先を読むことだ」
「渇望を先読みすることですね」
「そういうことだ。探偵も孫との遊びも——相手の次の動きを読む」
「人間を観察することの本質は、どこでも同じですね」
「そうだ。だから向こうの世界でも、お前の仕事が成立した」
「そういうことです」
「お前の力は——人間への関心から来ているんだろう。どの世界でも人間は同じことをするから、どの世界でも見える」
「鋭いですね」
「三十八年分の目がある」
坂本が来た。
「孫と、探偵ごっこをしてきた」
「どうでしたか」
「最高だった」
「最高ですか」
「孫が犯人で、俺が探偵で。孫が隠したぬいぐるみを、俺が見つける。そういう遊びだ」
「見つけられましたか」
「三回中二回は見つけた。一回は孫に勝てた」
「孫が賢いんですね」
「賢い。五歳になったが、思ったより知恵がある」
「娘さんとの関係はどうですか」
「……良くなってきた。孫を通じてという、迂回路だが」
「迂回路も立派な道です」
「そうだな。直接より遠回りだが、辿り着ける」
坂本はアルマニャックを一口飲んだ。
「三十八年の経験が、孫の遊び相手に使われるとは思わなかった」
「観察力が役立っているんですね」
「役立っている。探偵の仕事で一番大事だったことが、孫との遊びで一番大事なことと同じだとは思わなかった」
「何が大事ですか」
「相手が何を欲しがっているか、先を読むことだ」
「渇望を先読みすることですね」
「そういうことだ。探偵も孫との遊びも——相手の次の動きを読む」
「人間を観察することの本質は、どこでも同じですね」
「そうだ。だから向こうの世界でも、お前の仕事が成立した」
「そういうことです」
「お前の力は——人間への関心から来ているんだろう。どの世界でも人間は同じことをするから、どの世界でも見える」
「鋭いですね」
「三十八年分の目がある」
0
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
男の仕事に口を出すなと言ったのはあなたでしょうに、いまさら手伝えと言われましても。
kieiku
ファンタジー
旦那様、私の商会は渡しませんので、あなたはご自分の商会で、男の仕事とやらをなさってくださいね。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。
それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。
※全3話。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる