半分だけ特別なあいつと僕の、遠まわりな十年間。

深嶋(深嶋つづみ)

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第四章 「19歳」

第12話 求め合う身体②※

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「夏原ぁ、いい加減に……あ、んんっ」
「泣くなって。もう少しだから」

 眉尻を下げ、こぼれる涙を拭ってくれる夏原は、真っ直ぐに佑月を見つめている。
 上の空というわけでもない。だけど、彼の眼差しに浮かぶ色はやはり欲望だけじゃなかった。

 揺るがない夏原に泣いて、縋って、快感に翻弄されて。
 ようやくそこに彼の熱いものを押し当てられたとき、佑月の胸は期待と感動で打ち震えた。
 オメガの身体はとっくに受け入れ準備が整っていて、彼の張り詰めたペニスに一秒でも早く喰らいつきたいとうずうずしている。

(ああ、早く繋がりたい――!)

 うつ伏せになった体勢で、背後から腰を抱え上げられた。佑月の臀部に熱い先端を押し付けた夏原が、余裕のない低い声で訊ねてくる。

「いいか?」
「ん。早くきて――――アッ……!」
 
 返答するなり、避妊具を装着した彼の先端が入口を押し上げてくる。
 あふれている愛液を何度か塗りつけるような動きをしてから、彼は本格的な侵入をはじめた。
 狭い部分をこじ開けてゆっくりと沈んでくる。亀頭部分が中に入ると、そこからはいくらかスムーズに彼を受け入れることができたようだ。

 内側から押し上げてくる圧迫感で佑月は息が苦しかった。しかし身体には歓喜が満ちていて、これから得られるのであろう極上の快楽に期待が高まっていく。ああ早く、もっともっと気持ち良くして欲しい――!
 佑月はきゅ、とシーツを握り、背後を振り返って夏原に懇願した。

「動いて……夏原……っ」
「ああ」

 ゆっくりと律動が始まった。抜き差しされるとまだ苦痛はあった。だけどそれを上回る快感と感動があふれてくる。
 気持ち良い、それに嬉しかった。身体の奥から歓喜が込み上げてくるのだ。こいつと繋がれたことを、オメガの本能が喜んでいる。
 次第に激しく揺さぶられ、わけがわからなくなる。どこまでも快感に呑まれていく。初めて味わう極上の快楽に佑月は恍惚となった。

「あ……んんっ、ああんっ!」
「くっ、水元……」
「あ、気持ちい……っ、もっときて夏原……!」

 ぶつかり合う音が部屋に響いて、獣になったような気分だった。
 否、獣に違いないのだ。発情状態に陥ったオメガとアルファは本能を剥き出しにした野生の獣にほかならない。

(こんなに気持ちいいのに……なんで今まで我慢できたんだろう)

 ギシギシとベッドが悲鳴を上げている。奥を突かれるたびに佑月は快感に震えた。

「んあっ、ん、あぁっ」
「……ッ」
「や、ああ、……あっ、ああぁ――!」

 内側でなにかがあっという間に膨らんでいく。激しく揺さぶられるたびに押し上げられて、その先で唐突に宙に放り出されたようになった。
 じんわりと身体中に広がる甘すぎる快感。気付けば佑月の中心は再び白いものをこぼしていた。
 夏原がひときわ強く腰を打ち付けてくる。背後で夏原が小さく呻くのが聞こえ、動きが止まる。
 互いに息が荒かった。どうやら彼も達したらしい。

「はぁ、は……ねえ夏原、」
 
 閉じていた瞼を開けると、シーツの上にはほのかな月明かりが落ちていた。
 夏原が動いて、ベッドが小さく揺れる。中から彼が去っていく。身体を震わせその感覚を耐えていると、言葉を途切れさせた佑月に夏原が続きを促してくる。

「なんだよ? 身体は平気か?」
「うん。……ううん、平気じゃない。早く続き、くれない……?」

 佑月は身体の向きを変えると、ひくひくと疼くそこが彼に見えるように太腿を大きく開いてみせた。
 驚いたように目を丸くした夏原だったが、すぐに表情を一変させる。野性味を帯びた瞳で彼に見つめられると、彼の獲物になったみたいでドキドキした。

 避妊具を装着し直した彼のものはすでに張り詰めて、腹につくほど反り返っている。甘い匂いが鼻先をかすめた。
 この身体もフェロモンで彼を誘っているに違いなかった。まだまだ、どうしようもなく足りないのだ。互いの飢えた本能が共鳴しているのがなんとなくわかった。

 体位を変えて再び挿入される。向かい合わせの体勢は距離が近すぎて最初は慣れなかったが、触れ合う肌の温もりが想像以上に心地よくて、すぐに気にならなくなった。
 舌を絡め合い、疼く場所を内側から擦られる。快感にとろけそうだった。ベッドが軋む音を遠くに聞きながら、佑月は快感に身体を震わせては何度も目の前の男に抱きついた。

「ンン……っ、夏原ぁ」
「はあ、なんだよ」
「僕、こんなに気持ち良くて……どうにかなっちゃいそう」

 耳元で、夏原が吐息まじりに笑ったような気がした。大きな腕がシーツの上で佑月の身体を包んでくる。
 やんわりと彼の胸に抱きしめられたまま、激しい抽挿が再開された。そのまま駆け上がっていく。
 
 月明かりの中でいつまでも身体を重ねていた。
 佑月にとって初めてのセックスは――二人にとって数年ぶりの交合は、やがて空が白んで朝日が昇っても、いつまでも終わりが見えなかった。





【第四章・END】
 
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感想 5

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みんなの感想(5件)

グアダルーペ
ネタバレ含む
2025.07.19 深嶋(深嶋つづみ)

補足コメントありがとうございます🙏
私はどうも、自分が思ってるよりもシリアスな文章を書きがちなので💦またやらかしたかもと早とちりしてしまいました💦笑
ご心配おかけしてすみません。私も言葉足らずでしたね😅

普通がよく見える、というのは本当にそうですね。
オメガバ設定が好きで書いたり読んだりしますけど、自分がそうなりたいかと言ったら……物語だからこそ楽しめる設定だなとつくづく私も思います。
ちゃんと幸せになる予定の二人ですので、楽しみにしていてくださいね。
丁寧なコメントありがとうございました😊

解除
グアダルーペ
ネタバレ含む
2025.07.18 深嶋(深嶋つづみ)

わー、すみません💦
そこまで辛いシーンを書いているつもりはなかったのですが……😅

そろそろ物語の流れも変わってきます。
引き続き見守っていただけますと嬉しいです😌

解除
miel
2025.06.29 miel

再開うれしいです!大切に読ませていただきます^_^

2025.06.29 深嶋(深嶋つづみ)

ありがとうございます!
喜んでいただけて私も嬉しいです(´;ω;`)

のんびり更新になるかと思いますが、よろしくお願いいたしますー!

解除

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