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[プルミエ]の宿を出て数日後、コカロは[シナンディシ]という町に来ていた。〔フロガ〕という祭りが行われているため、熱気と賑やかさが感じられる。
コカロはメインストリートから少し外れた空き地で、屋台で売っている食べ物を見る。丸く焼かれた生地の中に刻んだ軟体動物の足が入っているものや、数種類の肉の串焼き。溶けた糸状の砂糖を棒に巻きつけたもの、赤い木の実を水飴でコーティングしたもの。良い匂いがあちこちからしてきて、不覚にもコカロのお腹が鳴る。
「お腹減ってるの?」
突然後ろから声をかけられる。振り返ると同い年か少し上くらいの黒髪の少年が立っていた。横には腕を組み、遠くを見つめてぼーっとしている白髪の少年がいた。二人とも顔が良く似ている。
「あ、はい。この町に来たばかりで何も食べてなくて…」
コカロが恥ずかしそうに頬をかく。
「じゃあ、おいで。美味しいやつ紹介してあげる」
黒髪の少年は屋台の方に歩き出すが、すぐ立ち止まった。
「そうだ…俺ルラキ、よろしく」
ルラキと名乗った少年が満面の笑みを浮かべる。
「……あっ。自分はレウン、よろしく?」
ハッと我に帰った白髪の少年、レウンが名乗る。
「レウン、何を考えてたの。このコカロくんに町を案内しよう!」
ルラキがコカロとレウンの手を取る。
「まずは…あ、あそこ行こう!」
ルラキの子供のような笑顔に、コカロの表情も思わず緩む。
(あれ…?僕、名前教えたっけ?)
そう考えるコカロを尻目に、ルラキとレウンが暗く笑ったのは誰が知っているだろう。
▲▽
祭りの屋台はどこも並んでいて、容易に買えるものではなかった。中でも空いてそうな串焼きの店に並んだ三人は、自分のことについて話している。
「俺とレウンは双子なんだ。よく似てるって言われるけどそうなの?」
コカロが二人の顔を見比べる。切れ長の目、筋の通った鼻、キリッと結ばれた口に浮かぶ微笑。髪と瞳の色くらいしか違いが見つからない。ちなみにルラキの髪は艶やかな黒色で瞳は黄色。レウンの髪は白色で瞳は黒色だ。
「よく似てますね。髪の色が同じだったらどちらかわからなくなります」
ふとレウンを見ると、また何か考え事をしている。
「レウンさん、何を考えてるんですか?」
コカロがレウンに声をかける。レウンが数秒遅れて返事をする。
「あ、悪い。考えてたのは自分らとコカロの年の差だよ。あんまり変わらないよね」
コカロよりも少し背の高い二人を見つめる。ルラキの幼さの中から感じる知性とレウンの落ち着いた雰囲気はだいぶ年上に見える。
「僕は十五歳です。二人は何歳なんですか?」
コカロが思い出したように聞く。
「「十六」」
さすが双子、と言わんばかりのハモりようだ。これが日常茶飯事なのか、二人は何も気にしていない。
「一つ年上ですか…」
コカロは二人への接し方について考え込む。
「コカロくんまでレウンみたいになってる。俺ら気にしないから砕けた感じで喋って!」
ルラキの言葉にレウンもうなずく。
「そうですか…じゃあルラキとレウンって呼ばせてもらうね」
話している間に前の人が買い終わっていた。三人はそれぞれ串焼きを買い、町を歩きながら食べることにした。
「コカロは旅人なんだよね、俺も旅したい」
そう言うとルラキは串焼きの肉を頬張る。噛んだ瞬間に肉汁が出てきて熱かったのか、びっくりしている。
「まぁ、自分ら旅の仲間探してる最中だったからな」
レウンはルラキと違い、もぐもぐと上手に食べている。それをルラキが横目で見て、何かを訴えている。
「それなら一緒に旅しようよ、僕も一人じゃ厳しいときもあるんだ」
コカロが言うと、ルラキが目を輝かせる。
「良いの!?元々旅してる人についていくのが一番良いと思ってたんだ」
ルラキがレウンの肩をバシバシと叩く。
「痛いーやめてー(棒)」
レウンはルラキを手で制しながらも嬉しそうにしている。
「僕、明日にはここを発つんだけど良い?」
ルラキとレウンが顔を見合わせる。
「「もちろん!」」
二人が勢いよく叫ぶと三人は大声で笑った。
「知り合いに魔法屋がいる。そこで旅仕度をしよう」
向こうを指差すレウンに反射的にそちらを向く。
「おー!スーさんのとこ?行こう行こう!」
ルラキが指差す方向に歩き出すと、レウンとコカロもついていく。
コカロはメインストリートから少し外れた空き地で、屋台で売っている食べ物を見る。丸く焼かれた生地の中に刻んだ軟体動物の足が入っているものや、数種類の肉の串焼き。溶けた糸状の砂糖を棒に巻きつけたもの、赤い木の実を水飴でコーティングしたもの。良い匂いがあちこちからしてきて、不覚にもコカロのお腹が鳴る。
「お腹減ってるの?」
突然後ろから声をかけられる。振り返ると同い年か少し上くらいの黒髪の少年が立っていた。横には腕を組み、遠くを見つめてぼーっとしている白髪の少年がいた。二人とも顔が良く似ている。
「あ、はい。この町に来たばかりで何も食べてなくて…」
コカロが恥ずかしそうに頬をかく。
「じゃあ、おいで。美味しいやつ紹介してあげる」
黒髪の少年は屋台の方に歩き出すが、すぐ立ち止まった。
「そうだ…俺ルラキ、よろしく」
ルラキと名乗った少年が満面の笑みを浮かべる。
「……あっ。自分はレウン、よろしく?」
ハッと我に帰った白髪の少年、レウンが名乗る。
「レウン、何を考えてたの。このコカロくんに町を案内しよう!」
ルラキがコカロとレウンの手を取る。
「まずは…あ、あそこ行こう!」
ルラキの子供のような笑顔に、コカロの表情も思わず緩む。
(あれ…?僕、名前教えたっけ?)
そう考えるコカロを尻目に、ルラキとレウンが暗く笑ったのは誰が知っているだろう。
▲▽
祭りの屋台はどこも並んでいて、容易に買えるものではなかった。中でも空いてそうな串焼きの店に並んだ三人は、自分のことについて話している。
「俺とレウンは双子なんだ。よく似てるって言われるけどそうなの?」
コカロが二人の顔を見比べる。切れ長の目、筋の通った鼻、キリッと結ばれた口に浮かぶ微笑。髪と瞳の色くらいしか違いが見つからない。ちなみにルラキの髪は艶やかな黒色で瞳は黄色。レウンの髪は白色で瞳は黒色だ。
「よく似てますね。髪の色が同じだったらどちらかわからなくなります」
ふとレウンを見ると、また何か考え事をしている。
「レウンさん、何を考えてるんですか?」
コカロがレウンに声をかける。レウンが数秒遅れて返事をする。
「あ、悪い。考えてたのは自分らとコカロの年の差だよ。あんまり変わらないよね」
コカロよりも少し背の高い二人を見つめる。ルラキの幼さの中から感じる知性とレウンの落ち着いた雰囲気はだいぶ年上に見える。
「僕は十五歳です。二人は何歳なんですか?」
コカロが思い出したように聞く。
「「十六」」
さすが双子、と言わんばかりのハモりようだ。これが日常茶飯事なのか、二人は何も気にしていない。
「一つ年上ですか…」
コカロは二人への接し方について考え込む。
「コカロくんまでレウンみたいになってる。俺ら気にしないから砕けた感じで喋って!」
ルラキの言葉にレウンもうなずく。
「そうですか…じゃあルラキとレウンって呼ばせてもらうね」
話している間に前の人が買い終わっていた。三人はそれぞれ串焼きを買い、町を歩きながら食べることにした。
「コカロは旅人なんだよね、俺も旅したい」
そう言うとルラキは串焼きの肉を頬張る。噛んだ瞬間に肉汁が出てきて熱かったのか、びっくりしている。
「まぁ、自分ら旅の仲間探してる最中だったからな」
レウンはルラキと違い、もぐもぐと上手に食べている。それをルラキが横目で見て、何かを訴えている。
「それなら一緒に旅しようよ、僕も一人じゃ厳しいときもあるんだ」
コカロが言うと、ルラキが目を輝かせる。
「良いの!?元々旅してる人についていくのが一番良いと思ってたんだ」
ルラキがレウンの肩をバシバシと叩く。
「痛いーやめてー(棒)」
レウンはルラキを手で制しながらも嬉しそうにしている。
「僕、明日にはここを発つんだけど良い?」
ルラキとレウンが顔を見合わせる。
「「もちろん!」」
二人が勢いよく叫ぶと三人は大声で笑った。
「知り合いに魔法屋がいる。そこで旅仕度をしよう」
向こうを指差すレウンに反射的にそちらを向く。
「おー!スーさんのとこ?行こう行こう!」
ルラキが指差す方向に歩き出すと、レウンとコカロもついていく。
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