女神の幼女体で異世界生活

さんらいず

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第2章 平穏を求める

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僕はふわふわとした空間の中を漂っていた。
このまま眠ってしまいたいけれど、身体は覚醒へと向かって行く。目を背けたい現実が、僕に頭を襲う。

『……どうして…』

考えても分からない。なぜ、シャルルさんはあそこにいて、僕を襲ったのか。そんなこと考えたって分からない。
大切なものがまた1つ消えてしまった。そんな感覚がした。

逃げ出したい。

そう願った。だというのに…

「ん…………」
「リア様!? 目を覚ましましたか、よかった……」
「えっと……長老、さん?」

なぜか、起きて一番最初に見たのは、エルフの長老さんの顔だった。
寝起きで回らない頭を精一杯働かせて、聞いた。

「えっと、ここはどこですか? シャルルさんは……?」
「ふむ、それについては後で説明しましょう。リア様、3日も眠っていたのですから。何か食べないと……」

長老さんがこの前よりもぐいぐいくる……

たしかにお腹は減っている…そこで話を聞くのもありかな…


「どうぞ、あまりいいものはありませんが…」
「いえ、私もこれが普通でしたよ」

村長の言葉にどうやって返せばいいのか分からないので、適当に返しておいた。
食事の内容は、黒パンとサラダとスープ、肉はない。

少し、泣きそうになった。

「…ありがとうございます」
「いえいえ……」

この世界に手を合わせる習慣も、いただきますと言う習慣も無い。
リアの記憶が混ざっているせいか、僕もそうすることはあまりない。

食べている最中、少し涙がでてきたが、誤魔化した。

「……ありがとう、ございました…」
「別に、お礼を言われるほどのことじゃ…」

少しの間、僕と長老さんの間に沈黙が降りた…が、それはすぐにかき消された。

「さて…どこからお話しましょうか…」
「えっと…私は、シャルル…さんに捕まった後の記憶がないので、そのあたりからお願いします…」
「ふむ…シャルルさんとは?」
「……セントラルで、冒険者ギルドの受付をしていた方です…」
「…それでは、味方…だったのですよね? どうしてその方に…?」

…そんなの、わかるわけがない。何で僕を襲ったのか。ギルド長が捕まっている目の前で、帝国兵と話していたのか。

「……………」
「まあ、いいでしょう。リア様にも分からないことはたくさんあるでしょうし…」

「では、私たちエルフがリア様を救出する前…そうですね。セントラルに到着するあたりからお話しましょうか」

救出、と聞いて僕は初めて気づいた。僕がいるのは、村長の家で、エルフの集落だった。

「私たちがセントラル防衛戦に参加すると決まったのが急だったので、物資の調達に手間取り、出撃が遅れたのです。近いとはいえ、かなりの人数を動かしますからね。そして、やっと準備が整い、出撃して、セントラルに到着した頃には、もう陥落寸前でした」

おそらく、僕が捕まった直前にエルフたちは到着したんだろう…

「仕方なく様子を伺うために周りを警戒しながら回っていると、リア様が帝国兵の一部隊に連れ去られている現場に遭遇いたしまして……指揮をとっているのが、一般人の服を着た女性でしたので、それがおそらく…」
「…シャルル、さん…」

長老は少し間をおいて、再度話し始めた。

「圧倒的に私たちの方が数が多かったので、その場でリア様を奪還し、増援を避けるために集落へと戻ってきたのです。指揮をとっていた女性は、戦闘の中逃走した模様です…」
「そう、ですか…助けてくださって、ありがとうございます」

そして、僕は席を立った。

「どちらへ?」
「……………」
「セントラルへは、行かせませんよ」
「どうして…ですか」

ギルド長だけでも助けないといけない。勇者たちがどうなったのか知りたいし、シャルルさんがどうしてあんなことをしたのか、聞いておきたい。

「セントラルは陥落したでしょう。おそらく勇者たちは撤退し、王都方面へ向かっているはずです。そして、セントラルの主要人物は、監視からの報告で帝都方面へと連れ去られたと聞いています。今行っても、かなりの数の軍隊が街を占領しているだけですよ」
「っ……」

そんな現実は聞きたくない。
ただ、どうすれば僕の大切な人を守れるか。取り返せるか、考えるだけ。

「それに、勇者たちからは、死者も出たようですし…」
「……え?」

どういうこと?
死にそうになったら撤退すると……

「死者は1名、街道方面から帝国軍と真正面からぶつかった部隊ですね」
「なんで…どうして…なんで逃げなかったの…!」
「この話は、到着直後に偶然会った勇者から聞いたのですが…前に出すぎた一般兵を守るために最前線まで出て戦ったのだとか……」

前に出すぎる?
そんなの出すぎるというよりも押されてただけじゃないの?
単純な戦力不足で…その時僕は…のんびり街を歩いていたか。それとも個人的な関係の人物のためにと勝手に出歩いていたか。

「ふふ…」

思わず笑ってしまった。
自分で言うのもなんだが、あの防衛戦では僕は重要な戦力の1つだった。だったはずなのに。

「当の本人は、それを自覚せずに勝手に行動しただけ…」

やろうと思えば北門の帝国兵のだいたいの首を狩れた。

これじゃあはただの…

「戦犯じゃないですか…」
「いえ…リア様は何も悪くは…」
「私に責任が無いと!? 帝国で一応死ぬ確率が低い環境で暮らしていた勇者たちを戦場まで連れ出して! しかも自分自身は戦力としての役割を果たさずに勇者の1人を戦力不足で死なせて! 私に責任が無いと!? みんな元の世界に帰りたがっていたんですよ!? 『全員』で! それを私が壊した。直接でなくとも、原因が私に怠慢であることに変わりはないでしょう!? なぜ擁護するんですか! 罵ってくださいよ! 人殺しって! そうすれば…そうすれば…」
「……………」

そうすれば…誰の声も無視して死にに行ける。
この世界の家族も、優しくしてもらったシャルルさんも失って。が連れ出した勇者も死なせて。

ただただ涙が出てきた。
リアから身体、能力、魂をもらった意味なんてあったのだろうか…僕にそんな価値なんてあったのだろうか。
そんな後ろ向きな言葉ばかりが溢れてきてやまない。

見ないふりをしていたが、今考えると、村の人たちを『消した』のも、僕なのだ。

僕の全てを知ったら、一巳さんは…颯人さんは、どんな顔をして、どんなことを考えるだろう。

「ふふ…やっぱり私のせいじゃないですか…やっぱりセントラルに行ってきますよ。本当は死んだ方がいいんですけどね…………っぐっ!?」

僕は首に衝撃を感じて、意識を手放した。



「……申し訳ありません、リア様。……少し、休んだ方がよろしいかと……」

エルフの長老は、リアを優しく抱き上げると、先ほどまでリアが寝ていた寝室へと運んで行った。


リアの目尻から流れる涙は、意識を失ってもなお、止まることはなかった。
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