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第3章 空白を求める
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「それでは、少し外に出てきますね…」
「はい。なるべく暗くなる前に帰ってきてください」
「はーい…」
長老さんに声をかけてから、私は外に出た。
あの後、村の構造について長老さんに説明してもらった。
この村は、いくつかの集落を纏めて村と呼んでいるらしい。正しい村の概念は知らないのだけれど、ここではそうみたいだ。
私が今いるのは、侵入者に迅速に対応できる様に、長老の滞在場所として定められた、首都みたいな場所らしい。
結界の範囲内に、5つの集落があり、それぞれ役割があるそうだ。
…まぁ、なかなかに特殊な村だなぁとは思った。
外に出て…何をするのか決めていなかった。
長老さんによれば、この集落には食料以外の店は無いらしく、出かけるといってもすることが何も無い。
…仕方ない、森の外に…って、多分門番さんに止められるよね…
暇だなぁ…と、私は集落の中をぶらぶらと歩いていた。
家は結構密集していて、中心部に行けばちょっとした町に錯覚するくらいだ。
とはいえ、道路は舗装されていないし、家も簡素な木造家屋なのだけれど。
「…お姉ちゃん?」
「…へ…?」
背後から幼い感じの声で呼ばれた…
慣れない呼ばれ方に驚いて勢いよく振り返ると…いつしか会ったようなエルフの男の子が…
…確か…
「サジェさんのところの…?」
「うん! お姉ちゃん久しぶりだね!」
「うん…久しぶりだね…」
思わぬ再会だ…たしかに、前に来た時もここの集落で会ったなぁ…
名前は確か…
「…ルディ君だっけ…?」
「うん! お姉ちゃんは…うーんと…リアさん…? ってお父さんが呼んでいた様な…」
「合ってるよ…! ありがとね、覚えていてくれて…!」
ルディ君の名前は、お兄ちゃんと同じ名前だから、結構印象に残っている。
それよりも、私の名前を覚えてくれていたことが嬉しい…
思わず少しニヤついていると、ルディ君が話しかけてきた。
「お姉ちゃんは何してるの?」
「うーん…何もすることがないから、ぶらぶらしてたんだ…」
あぁ、恥ずかしい…一応精神的には年上だから…なんというか、矜持が…
「じゃあ、一緒にあそぼ! …薬草摘みだけど…いい…?」
薬草摘み…子供の遊びとは…
別に暇だし、いいかな…!
「うん。どこで摘むの?」
「村の壁の近くに、薬草が生えてる場所があるの! 自由に摘んでいい場所だから、お父さんが摘んでおいてって言ってたの!」
「なるほど…ルディ君、薬草摘み、楽しい?」
「うん…! たまに変わった虫とかいたりするし、楽しいよ!」
む、虫かぁ…別に苦手ではないけど、好きでもないなぁ…
あっ、足が多いのは論外…
ハイエルフなのに心狭いなぁ…
「じゃあお姉ちゃん、行こう?」
それに私は「うん」と返事をして、差し出された手をつかもうとした時…
–––甲高い鐘の音が村中に響いた。
–––10分程前––– 《サジェ視点》
「…何? 戻ってこない?」
俺、中央集落警備隊長を務めるサジェは、門の詰所で部下の報告を聞いていた。
俺はかなり低い確率で生まれる魔力視持ちのため、警備隊の隊長に抜擢された…とはいえ、こうやって建物の中で管理職を務めるよりも、森に入って警備する方が得意なのだが…
そんなことはどうでもいい。
今は非常事態だ。
「それで、どのあたりだ」
「おそらく、森の出口付近かと…」
「…やっぱりか…帝国の奴ら…しか考えられないな…とうとう手を出してきたか…」
交易都市セントラルが帝国軍に占領されてから、帝国兵が度々この「迷いの森」へと侵入してくることがあった。
おそらく偵察なのだろうが、実害はなかったのでこちらも入りすぎない様に見張るだけにとどめていた。
「現在、隠密行動に長けた者を偵察に出しております。報告は少々お待ちください」
「わかった。あと、外で訓練している防衛部隊に、警戒する様に伝えておいてくれ」
「了解しました。失礼します」
部下が部屋を出ていくと、俺はため息をついた。
防衛部隊といっても、10人程の弓の扱いに長けた者たちだ。いつもは周囲にいる危険な獣や魔物の討伐を行なっているが…
「軍隊相手では分が悪いな…」
元々対人戦は想定していない。
冒険者や盗賊に子供や女たちが、帝国へ奴隷として連れて行かれない為に俺たち警備隊は組織されている。
ただし、まずこの森に入っても村にたどり着くことはそうそうないため、あまり戦闘能力を求められていないのだ。
例えば1000人の軍隊が森へと侵攻してきた場合、どれだけ数を減らせるか…という考え方になってしまう。
迷いやすい森でも、とんでもなく強い魔物が住み着いているわけではないのだ。人海戦術でなんとでもなってしまう。
「…長老に報告するべきだな…」
もう一度ため息をつくと、俺は重い腰を上げた。
その時。
「隊長!」
先ほどの部下が酷く慌てた様子で部屋へと駆け込んできた。
「どうした!」
「報告です! 帝国軍が侵攻してきました!」
「何!? 数は!?」
「100人です」
思わずホッとしてしまった。
だが、続く言葉に俺は目を見開いた。
「そして、魔物50体です」
「…は?」
部下は、何人生き残るだろうか…
いけないと分かりながらも、そんなことを考えてしまった。
《リア視点》
「お姉ちゃん! 避難の鐘の音だよ! 家の中に入らないと!」
「う、うん…じゃあ、ルディ君はお家に帰ってね…私も長老さんのところに戻るから…」
私とルディ君は、お互いに「気をつけてね」と交わすと、走り出した。
どうすればいいのかわからないので、とりあえず長老さんに事情を聞かないと…
私は全力で走って長老さんの家へと向かった。
集落は、騒然としていた。
勢いよくドアを開けた先には、長老さんと、サジェさんがいた。
「はぁ、はぁ…長老さん、何があったんですか!?」
「リア様、落ち着いてください」
私は家の中に入り、なんとか息切れをおさめてから、再び訊いた。
「えっと、避難の鐘が鳴っているのですが、何かあったのですか?」
「…そうですね…」
長老さんはサジェさんを見つめ…サジェさんが頷くと、ため息をついた。
「…魔物がこの村へと向かっています。真っ直ぐに…」
「えっ…」
この村は結界に守られていて、普通近づけないんじゃ…
「言いたいことはわかります。ですが、近づいているのは事実ですので……リア様は、家の中でじっとしていてください。決して出ないでくださいね…」
「えっと、私にできることは…」
一応、魔法の威力だけが取り柄だし…何か…
「いえ、大丈夫ですので。我々警備隊と、防衛隊が応戦しますので」
今度はサジェさんが答えた。
大丈夫なら…
「わかりました…サジェさん、気をつけてくださいね…」
「ありがとうございます。長老、私はこれで」
「わかりました。住民への指示はわたしから行います」
「お願いします。それでは、失礼します」
そう言って、サジェさんは外へと出て行った。
サジェさんなら…大丈夫かな…
そんな風に、安心していた。
そんなことを思いながらわずかに微笑むリアを、長老はじっと見ていた。
『やはり、リア様は笑っていた方がいいですね…守らなければ…』
「はい。なるべく暗くなる前に帰ってきてください」
「はーい…」
長老さんに声をかけてから、私は外に出た。
あの後、村の構造について長老さんに説明してもらった。
この村は、いくつかの集落を纏めて村と呼んでいるらしい。正しい村の概念は知らないのだけれど、ここではそうみたいだ。
私が今いるのは、侵入者に迅速に対応できる様に、長老の滞在場所として定められた、首都みたいな場所らしい。
結界の範囲内に、5つの集落があり、それぞれ役割があるそうだ。
…まぁ、なかなかに特殊な村だなぁとは思った。
外に出て…何をするのか決めていなかった。
長老さんによれば、この集落には食料以外の店は無いらしく、出かけるといってもすることが何も無い。
…仕方ない、森の外に…って、多分門番さんに止められるよね…
暇だなぁ…と、私は集落の中をぶらぶらと歩いていた。
家は結構密集していて、中心部に行けばちょっとした町に錯覚するくらいだ。
とはいえ、道路は舗装されていないし、家も簡素な木造家屋なのだけれど。
「…お姉ちゃん?」
「…へ…?」
背後から幼い感じの声で呼ばれた…
慣れない呼ばれ方に驚いて勢いよく振り返ると…いつしか会ったようなエルフの男の子が…
…確か…
「サジェさんのところの…?」
「うん! お姉ちゃん久しぶりだね!」
「うん…久しぶりだね…」
思わぬ再会だ…たしかに、前に来た時もここの集落で会ったなぁ…
名前は確か…
「…ルディ君だっけ…?」
「うん! お姉ちゃんは…うーんと…リアさん…? ってお父さんが呼んでいた様な…」
「合ってるよ…! ありがとね、覚えていてくれて…!」
ルディ君の名前は、お兄ちゃんと同じ名前だから、結構印象に残っている。
それよりも、私の名前を覚えてくれていたことが嬉しい…
思わず少しニヤついていると、ルディ君が話しかけてきた。
「お姉ちゃんは何してるの?」
「うーん…何もすることがないから、ぶらぶらしてたんだ…」
あぁ、恥ずかしい…一応精神的には年上だから…なんというか、矜持が…
「じゃあ、一緒にあそぼ! …薬草摘みだけど…いい…?」
薬草摘み…子供の遊びとは…
別に暇だし、いいかな…!
「うん。どこで摘むの?」
「村の壁の近くに、薬草が生えてる場所があるの! 自由に摘んでいい場所だから、お父さんが摘んでおいてって言ってたの!」
「なるほど…ルディ君、薬草摘み、楽しい?」
「うん…! たまに変わった虫とかいたりするし、楽しいよ!」
む、虫かぁ…別に苦手ではないけど、好きでもないなぁ…
あっ、足が多いのは論外…
ハイエルフなのに心狭いなぁ…
「じゃあお姉ちゃん、行こう?」
それに私は「うん」と返事をして、差し出された手をつかもうとした時…
–––甲高い鐘の音が村中に響いた。
–––10分程前––– 《サジェ視点》
「…何? 戻ってこない?」
俺、中央集落警備隊長を務めるサジェは、門の詰所で部下の報告を聞いていた。
俺はかなり低い確率で生まれる魔力視持ちのため、警備隊の隊長に抜擢された…とはいえ、こうやって建物の中で管理職を務めるよりも、森に入って警備する方が得意なのだが…
そんなことはどうでもいい。
今は非常事態だ。
「それで、どのあたりだ」
「おそらく、森の出口付近かと…」
「…やっぱりか…帝国の奴ら…しか考えられないな…とうとう手を出してきたか…」
交易都市セントラルが帝国軍に占領されてから、帝国兵が度々この「迷いの森」へと侵入してくることがあった。
おそらく偵察なのだろうが、実害はなかったのでこちらも入りすぎない様に見張るだけにとどめていた。
「現在、隠密行動に長けた者を偵察に出しております。報告は少々お待ちください」
「わかった。あと、外で訓練している防衛部隊に、警戒する様に伝えておいてくれ」
「了解しました。失礼します」
部下が部屋を出ていくと、俺はため息をついた。
防衛部隊といっても、10人程の弓の扱いに長けた者たちだ。いつもは周囲にいる危険な獣や魔物の討伐を行なっているが…
「軍隊相手では分が悪いな…」
元々対人戦は想定していない。
冒険者や盗賊に子供や女たちが、帝国へ奴隷として連れて行かれない為に俺たち警備隊は組織されている。
ただし、まずこの森に入っても村にたどり着くことはそうそうないため、あまり戦闘能力を求められていないのだ。
例えば1000人の軍隊が森へと侵攻してきた場合、どれだけ数を減らせるか…という考え方になってしまう。
迷いやすい森でも、とんでもなく強い魔物が住み着いているわけではないのだ。人海戦術でなんとでもなってしまう。
「…長老に報告するべきだな…」
もう一度ため息をつくと、俺は重い腰を上げた。
その時。
「隊長!」
先ほどの部下が酷く慌てた様子で部屋へと駆け込んできた。
「どうした!」
「報告です! 帝国軍が侵攻してきました!」
「何!? 数は!?」
「100人です」
思わずホッとしてしまった。
だが、続く言葉に俺は目を見開いた。
「そして、魔物50体です」
「…は?」
部下は、何人生き残るだろうか…
いけないと分かりながらも、そんなことを考えてしまった。
《リア視点》
「お姉ちゃん! 避難の鐘の音だよ! 家の中に入らないと!」
「う、うん…じゃあ、ルディ君はお家に帰ってね…私も長老さんのところに戻るから…」
私とルディ君は、お互いに「気をつけてね」と交わすと、走り出した。
どうすればいいのかわからないので、とりあえず長老さんに事情を聞かないと…
私は全力で走って長老さんの家へと向かった。
集落は、騒然としていた。
勢いよくドアを開けた先には、長老さんと、サジェさんがいた。
「はぁ、はぁ…長老さん、何があったんですか!?」
「リア様、落ち着いてください」
私は家の中に入り、なんとか息切れをおさめてから、再び訊いた。
「えっと、避難の鐘が鳴っているのですが、何かあったのですか?」
「…そうですね…」
長老さんはサジェさんを見つめ…サジェさんが頷くと、ため息をついた。
「…魔物がこの村へと向かっています。真っ直ぐに…」
「えっ…」
この村は結界に守られていて、普通近づけないんじゃ…
「言いたいことはわかります。ですが、近づいているのは事実ですので……リア様は、家の中でじっとしていてください。決して出ないでくださいね…」
「えっと、私にできることは…」
一応、魔法の威力だけが取り柄だし…何か…
「いえ、大丈夫ですので。我々警備隊と、防衛隊が応戦しますので」
今度はサジェさんが答えた。
大丈夫なら…
「わかりました…サジェさん、気をつけてくださいね…」
「ありがとうございます。長老、私はこれで」
「わかりました。住民への指示はわたしから行います」
「お願いします。それでは、失礼します」
そう言って、サジェさんは外へと出て行った。
サジェさんなら…大丈夫かな…
そんな風に、安心していた。
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