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ラドリア国は『不毛の地』として知られた国だ——。
国王は残虐でとても醜いという噂もある。
気候に恵まれない砂漠の土地で農作物がほとんど育たず、過去にはなんども飢饉がおきて、国民の半数以上が亡くなったこともあるほどだ。
そんなラドリア国がナリスリア国の『ギフト』を持つオメガ王女を嫁に欲しがるのは当然だろう。
荒れ果てた土地になによりも必要なのは、農作物の成長にふさわしい気候だからだ。
ラドリア国王のたびたびの要請を受けて、フウルの実父のナリスリア前国王は、『第二オメガ王女のヘンリエッタをラドリアに嫁がせる』という約束をした。二年前のことだ。
が、——。
その父王が崩御してフウルの義母のエリザベート王妃が国の実権を握ると事情が変わったのだ。
王妃は実の娘のヘンリエッタに王位を継がせたがった。
「ヘンリエッタの方が王にふさわしいわ!」
と言い出したのだ。
娘のヘンリエッタをラドリアに嫁に出すなど絶対にしたくないのだ。
そしてそれはナリスリア国の王族や貴族も一緒だった。
国を滅ぼしかねない『塩混じりの雨』を降らせるギフトを持ったフウルよりも、『晴れ日』のギフトを持つ第二王女のヘンリエッタを次の王にと望んだ。
そういう事情は、フウルにもよくわかっている。
だけどまさか、自分がヘンリエッタの代わりに『偽者の花嫁』として嫁ぐことになるとは思ってもみなかった。
——わたくしがヘンリエッタの身代わりに嫁ぐということは、ラドリア国を騙すということだわ⋯⋯。ラドリアの人々を騙すなんて、そんな悪いことはできない!
だけどフウルに選択肢はなかった。
義母のエリザベート王妃に逆らえるはずがないのだから。
「わかりましたね、フウル?」
「は、はい⋯⋯」
こうしてナリスリア国の第一オメガ王女、フウル・ルクセンは、不毛の土地といわれるラドリア国へ、偽の花嫁として嫁ぐことになったのだった——。
続く
(ここまでお読みいただきありがとうございました! サクッとどんどん更新していきたいと思っています。お気に入り登録などで応援していただけると嬉しいです。
国王は残虐でとても醜いという噂もある。
気候に恵まれない砂漠の土地で農作物がほとんど育たず、過去にはなんども飢饉がおきて、国民の半数以上が亡くなったこともあるほどだ。
そんなラドリア国がナリスリア国の『ギフト』を持つオメガ王女を嫁に欲しがるのは当然だろう。
荒れ果てた土地になによりも必要なのは、農作物の成長にふさわしい気候だからだ。
ラドリア国王のたびたびの要請を受けて、フウルの実父のナリスリア前国王は、『第二オメガ王女のヘンリエッタをラドリアに嫁がせる』という約束をした。二年前のことだ。
が、——。
その父王が崩御してフウルの義母のエリザベート王妃が国の実権を握ると事情が変わったのだ。
王妃は実の娘のヘンリエッタに王位を継がせたがった。
「ヘンリエッタの方が王にふさわしいわ!」
と言い出したのだ。
娘のヘンリエッタをラドリアに嫁に出すなど絶対にしたくないのだ。
そしてそれはナリスリア国の王族や貴族も一緒だった。
国を滅ぼしかねない『塩混じりの雨』を降らせるギフトを持ったフウルよりも、『晴れ日』のギフトを持つ第二王女のヘンリエッタを次の王にと望んだ。
そういう事情は、フウルにもよくわかっている。
だけどまさか、自分がヘンリエッタの代わりに『偽者の花嫁』として嫁ぐことになるとは思ってもみなかった。
——わたくしがヘンリエッタの身代わりに嫁ぐということは、ラドリア国を騙すということだわ⋯⋯。ラドリアの人々を騙すなんて、そんな悪いことはできない!
だけどフウルに選択肢はなかった。
義母のエリザベート王妃に逆らえるはずがないのだから。
「わかりましたね、フウル?」
「は、はい⋯⋯」
こうしてナリスリア国の第一オメガ王女、フウル・ルクセンは、不毛の土地といわれるラドリア国へ、偽の花嫁として嫁ぐことになったのだった——。
続く
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