5 / 71
真・勇者パーティ結成編
第5話 じゃあ、ダンジョンに行こうか
しおりを挟む
「いてっ。しかしですね……」
「わかったよ。じゃあ、アオヤ。一つだけ試験だ。もし、俺が命令したら、戻って来るまで何があってもこの場から一歩も動かないって約束できるか?」
「いえ、出来ません。もし魔物がこの町を襲ったら、立ち上がって戦います」
なんて、やはり気の抜けたような顔で答える彼。しかし、何故かそれが、嘘には聞こえなかった。
「だってよ、キータ。俺、アオヤの事を仲間にしたいと思ってるぜ」
……その時、思い出した。
これだ。俺は、彼のこの言葉を聞いたから、こんな辛い職場でも働けているんだ。どんな辛い日でも、その夜には笑って励ましてくれるから、こうして働いているんだ。
「お前らの事は、俺が死なせねえよ。だから、世界、俺らで救おうぜ」
「……分かりました。ようこそ、アオヤ君。一緒に、乾杯の酒飲もう」
「いいんすか?僕、まだ18ですけど」
なんで、こういうところは常識的なんだろうか。
「いいんだよ。勇者パーティは16から成人扱いだ」
「それは嘘だけど、まぁキミの分は俺が奢るよ」
「マジっすか?やったね。じゃあこれ貰っちゃいますよ」
言って、彼は何故かシロウさんの隣に座ると、ふんぞり返って今しがた届いたビアに口を付けたのだった。
……まぁ、いくらシロウさんに憧れたからと言って、そんなとこまで真似しなくていいんだけどね。
× × ×
アオヤ君が仲間になってから一週間後、俺たちは資金集めを目的にギルドで仕事を受けて、近くにあった魔物の住むダンジョンへと来ていた。デビルカチョーを倒したからと言って、ここら一体の魔物が全ていなくなるわけではないようだ。
「アオヤ、お前は槍でいいんだな?」
「はい。なんか、ランサーってかっこいいじゃないすか。これ、なんか必殺技とか出せないんですか?」
「いやいや、創作の世界じゃないんだから、そんなことは……」
「あるぞ」
えっ。初耳なんですけど。
「俺はそこまでの才能が無くて使えねえんだけどな。どうやら、宝具には真の力を引き出すと使えるようになる、スキルとは別枠の力『奥義』が3つ備わっているみたいなんだ。王様から聞いてなかったのか?」
「すいません、ちょっと聞いてなかったです」
「そうか。因みに、クロウがカチョー滅ぼしたのはその奥義だったぞ」
「……あんた、間違いなく俺とシャイン食い止めてましたよね?何で知ってるんですか?」
と言うか、なんであいつは当たり前のようにそれ使いこなしてんの?
「振り返ったら、たまたまな。そう言う事だから、ひょっとするとアオヤも奥義使えるようになるかもな」
そして、どうしてそれをシロウさんに報告していないの?
「へ~。なんか、楽しみだな~」
「……アオヤ君、結構いい性格してるね」
「そうっすか?ありがとうございます~」
そんな会話をしながら、俺たちはダンジョンの最深部へとたどり着いていた。仕事の依頼は、「最深部にある月光草を入手せよ」というモノだったからだ。
「じゃあ、僕ちょうどよかったっすね。冒険者の最初の仕事って、薬草採取なんですよね」
それは、森に生えてるヤツとかね。
「しかし、アオヤは結構筋がいいな。お前、タンクとアタッカーどっちがいいよ」
「う~ん。アタッカーってキル取れなかった全部僕のせいになって荷が重いし、タンクにしようかな~」
「なら、お前はタンクだ。動きは帰ったらきっちり教えるから、次に魔物湧いてきたらちょっと前衛やってみ」
「了解です。なんか、楽し~」
間の抜けたやる気のない子なのかと思ってたけど、どうやらそれは的外れな見解だったようだ。アオヤ君は、大物なのだ。
「俺がバックアップするから、頑張って行こう……ん?」
話しながら、奥の暗闇の中で一瞬炎が散ったのが見えた。
「どうした、キータ。何か見えたか?」
「えぇ。何やら、この奥で冒険者が魔物と戦闘を行っているようです。小さな女の子のようですが……」
目を凝らして、よく見てみる。すると、そこには巨大な悪魔とタイマンで戦う、一人の少女の姿が見えた。
「ま、マズいですよ、シロウさん!あの女の子、一人です!」
「マジかよ、助けてやんねえとな」
言って、シロウさんは素早く俺に後衛を任せて、アオヤ君の手を掴むと戦いの現場へと駆けて行った。
「気を付けてください!あれ、恐らくカカリチョーですよ!」
「あいよ」
ダンジョンには、基本的にはシュニンというフロアマスターがいるのだが、稀にあのカカリチョーと呼ばれるクラスの上級の悪魔が居る事がある。
「キェエェェェェェエエ!!」
「マズイ、カカリチョーが咆哮を……えっ?」
妙だ。吼えた後見えたのは、スキル『ウェルフレア』の炎だ。つまり、今の声はカカリチョーじゃなくて。
「死ね!このドグサレ悪魔がぁぁぁぁぁああ!!」
「……なんだ、あの子」
追いついた俺の目に映ったのは、カカリチョーの口の中に魔法の杖を突っ込み、体内に向けてスキルを詠唱する、白い魔術装束を見にまとった、ピンク色の髪をした小柄な悪魔だった。
「わかったよ。じゃあ、アオヤ。一つだけ試験だ。もし、俺が命令したら、戻って来るまで何があってもこの場から一歩も動かないって約束できるか?」
「いえ、出来ません。もし魔物がこの町を襲ったら、立ち上がって戦います」
なんて、やはり気の抜けたような顔で答える彼。しかし、何故かそれが、嘘には聞こえなかった。
「だってよ、キータ。俺、アオヤの事を仲間にしたいと思ってるぜ」
……その時、思い出した。
これだ。俺は、彼のこの言葉を聞いたから、こんな辛い職場でも働けているんだ。どんな辛い日でも、その夜には笑って励ましてくれるから、こうして働いているんだ。
「お前らの事は、俺が死なせねえよ。だから、世界、俺らで救おうぜ」
「……分かりました。ようこそ、アオヤ君。一緒に、乾杯の酒飲もう」
「いいんすか?僕、まだ18ですけど」
なんで、こういうところは常識的なんだろうか。
「いいんだよ。勇者パーティは16から成人扱いだ」
「それは嘘だけど、まぁキミの分は俺が奢るよ」
「マジっすか?やったね。じゃあこれ貰っちゃいますよ」
言って、彼は何故かシロウさんの隣に座ると、ふんぞり返って今しがた届いたビアに口を付けたのだった。
……まぁ、いくらシロウさんに憧れたからと言って、そんなとこまで真似しなくていいんだけどね。
× × ×
アオヤ君が仲間になってから一週間後、俺たちは資金集めを目的にギルドで仕事を受けて、近くにあった魔物の住むダンジョンへと来ていた。デビルカチョーを倒したからと言って、ここら一体の魔物が全ていなくなるわけではないようだ。
「アオヤ、お前は槍でいいんだな?」
「はい。なんか、ランサーってかっこいいじゃないすか。これ、なんか必殺技とか出せないんですか?」
「いやいや、創作の世界じゃないんだから、そんなことは……」
「あるぞ」
えっ。初耳なんですけど。
「俺はそこまでの才能が無くて使えねえんだけどな。どうやら、宝具には真の力を引き出すと使えるようになる、スキルとは別枠の力『奥義』が3つ備わっているみたいなんだ。王様から聞いてなかったのか?」
「すいません、ちょっと聞いてなかったです」
「そうか。因みに、クロウがカチョー滅ぼしたのはその奥義だったぞ」
「……あんた、間違いなく俺とシャイン食い止めてましたよね?何で知ってるんですか?」
と言うか、なんであいつは当たり前のようにそれ使いこなしてんの?
「振り返ったら、たまたまな。そう言う事だから、ひょっとするとアオヤも奥義使えるようになるかもな」
そして、どうしてそれをシロウさんに報告していないの?
「へ~。なんか、楽しみだな~」
「……アオヤ君、結構いい性格してるね」
「そうっすか?ありがとうございます~」
そんな会話をしながら、俺たちはダンジョンの最深部へとたどり着いていた。仕事の依頼は、「最深部にある月光草を入手せよ」というモノだったからだ。
「じゃあ、僕ちょうどよかったっすね。冒険者の最初の仕事って、薬草採取なんですよね」
それは、森に生えてるヤツとかね。
「しかし、アオヤは結構筋がいいな。お前、タンクとアタッカーどっちがいいよ」
「う~ん。アタッカーってキル取れなかった全部僕のせいになって荷が重いし、タンクにしようかな~」
「なら、お前はタンクだ。動きは帰ったらきっちり教えるから、次に魔物湧いてきたらちょっと前衛やってみ」
「了解です。なんか、楽し~」
間の抜けたやる気のない子なのかと思ってたけど、どうやらそれは的外れな見解だったようだ。アオヤ君は、大物なのだ。
「俺がバックアップするから、頑張って行こう……ん?」
話しながら、奥の暗闇の中で一瞬炎が散ったのが見えた。
「どうした、キータ。何か見えたか?」
「えぇ。何やら、この奥で冒険者が魔物と戦闘を行っているようです。小さな女の子のようですが……」
目を凝らして、よく見てみる。すると、そこには巨大な悪魔とタイマンで戦う、一人の少女の姿が見えた。
「ま、マズいですよ、シロウさん!あの女の子、一人です!」
「マジかよ、助けてやんねえとな」
言って、シロウさんは素早く俺に後衛を任せて、アオヤ君の手を掴むと戦いの現場へと駆けて行った。
「気を付けてください!あれ、恐らくカカリチョーですよ!」
「あいよ」
ダンジョンには、基本的にはシュニンというフロアマスターがいるのだが、稀にあのカカリチョーと呼ばれるクラスの上級の悪魔が居る事がある。
「キェエェェェェェエエ!!」
「マズイ、カカリチョーが咆哮を……えっ?」
妙だ。吼えた後見えたのは、スキル『ウェルフレア』の炎だ。つまり、今の声はカカリチョーじゃなくて。
「死ね!このドグサレ悪魔がぁぁぁぁぁああ!!」
「……なんだ、あの子」
追いついた俺の目に映ったのは、カカリチョーの口の中に魔法の杖を突っ込み、体内に向けてスキルを詠唱する、白い魔術装束を見にまとった、ピンク色の髪をした小柄な悪魔だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる