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チッターの野望編
第8話 ブィー・グワンの狂信者
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「う、う、嘘だろ!?あんた、何の罪もない動物さんを殺して、それに対して少しも罪の意識も持ってないのか!?か、か、可哀そうすぎるうううううう!動物さんたちが喋れないのをいい事に、殺して食べるなんてあまりにも可哀そうすぎるよおおおおおおお!!」
「ナ、ナンダッテー!」
困惑していると、どこからともなく黒いローブを羽織ってフードを被った、何かの教徒らしき人がシュババッと集まって来て、すぐに俺たちを取り囲んで罵詈雑言を繰り広げた。
「みんな!こいつ、動物を殺しても平気な顔をして生きていられるみたいなんだ!」
「それは大変だ!動物だって一つの尊い命なのに!」
「えっ、あんたの履いてる靴も、動物の皮の……」
「人じゃない!人の心を持ってない!動物が可哀そうだ!」
ダメだ、話が通じない!
「……キータさん、こいつらなんなんですか?頭がおかしいんですか?」
「わかんないよ。でも、なにかヤバそうだ」
「可哀そう!可哀そう!可哀そう!可哀そう!可哀そう!」
合唱が始まってしまった。この人たちが何が言いたいのか、俺にはさっぱり分かんない。
「可哀そう!可哀そう!かわい……」
「うるせえよ、黙れ」
シロウさんの行く先に現れてギャーギャー言っていた女は、ぶん殴られて気絶してしまった。それを見た周りの信徒たちは、黙り込んで後ずさる。
「ちょっとォォぉ!いきなり何やってんですか!あんた、仮にも勇者なんですよ!?」
「キータ、よく聞け。こいつらは魔物みてえなモンだ。見た目は人のようだが、もう人々を害する悪魔の仲間なんだよ」
「……アク、マ?」
それを聞いたモモコちゃんはピクリと反応し、俯いたと思うとホーリーロッドを握りしめて「コロス……」と呟き始めた。や、やばい!
「モモコちゃん落ち着いて!あんたら、ぶっ殺されたくなかったら早くどっか行った方がいいですよ!この子、マジでおっかないから!」
「クケケケケケケケ!!」
「あぁ!遅かった……!」
モモコちゃんはその場で飛び上がったかと思うと、ホーリーロッドをこん棒の様に構えて目の前の二人を薙ぎ払った。更に、倒れた信徒の体を掴むと、後ろの人だまりに向かってそれをぶん投げて数人を薙ぎ倒した!
その勢いで瞬く間に全員を制圧すると、空を仰いで体を逸らし、街中に響き渡るような咆哮を放ったのだ。
「あぁ、どうしよう……」
「大丈夫だ、キータ。ほら、これを見てみろ」
「いやいや!何が大丈夫なんだよ!?」
答えると、シロウさんは気絶した女のフードを外して、前髪を上げて額を見た。
「あっ、これはチッターの紋章じゃないですか」
「チッターの紋章?」
アオヤ君が、冷静にその言葉の意味を問う。
「そう。悪魔に心を売った呪術師、チッターの呪いの紋章だよ。これは洗脳の呪いで、かけられると自分の価値観以外の事を容認出来なくなってしまうんだ」
そして、呪いが最終フェーズまで進むと、この教徒たちのように過激な運動を働くことになる。何が正しいのかの判別をつけられず、その結果指導者に操られているかのように振る舞ってしまうのだ。
「酷い奴ですね、そのチッターって。……うわ、また来ましたよ!」
アオヤ君の指差す方を見ると、そこにはぞろぞろと近づいてくる教徒たちがいて、手に持っていた卵を俺たちに投げつけてきた。
「卵って、中に命入ってますよね?」
「もうよくわかんないよ!シロウさん、逃げましょう!これ以上人間同士で争うのはよくないですよ!」
「そうだな」
「あっ!人非人が逃げるぞ!追いかけろ!」
走り出すと、彼らも俺たちの後を追って駆け出した。
「いたっ。……ちょっと、モモコ。暴れるな。痛いってば」
「シャーッ!ふーっ!ふーっ!」
モモコちゃんは、自分を抱えるシロウさんの腕に噛みつくと、猫のようにジタバタと暴れていた。ひょっとして、これも呪いか!?
「こらっ!あんまオイタすっとホーリーロッド取り上げっぞ!」
「……にゃあ」
相手がまだ人間だからなのか、それとも本当に猫だからか、彼女はそれを聞くとシュンとして暴れるのをやめた。これは、近いうちにこの殺意を抑えるオリエンテーションをしなければ、魔物との戦闘でかなりのリスクになるかもしれない。
などと思っている間に、俺たちいつの間にか狭い路地へと迷い込んでしまった。行く先はわからないのに、多数の足音はどんどんと近づいてきている。
「うげっ、行き止まりだ」
「あいやー。これ、マズいっすね。どうしますか?」
その時だった。突然、隅にあった扉が開かれて、現れた細い手が「こっちだ」と言わんばかりに手招きをしている。
「他に道もねえな。行こうぜ」
シロウさんの言葉で、一斉に其の扉の中へ飛び込んだ。
「消えたぞ。とこ行った?あいつら」
「そっちの方を探せ!野放しにすると、尊い命が失われ続けてしまう!」
声は、だんだん遠ざかっていく。気配が薄れていったのを感じてから、俺はほっと胸を撫で下ろした。
「ふぅ、助かったみたいですね」
「そうだな。あんた、名前も知らん俺たちの為に、ありがとう」
頭を下げるシロウさんの先には、彼らと同じように黒いローブを着た女性が立っていた。
「いえ、こちらこそ、同胞の醜態を見せてしまって、本当にお恥ずかしい限りです」
「……同胞?」
「はい。はじめまして、勇者様。私は、マルティナ。『ブィー・グワン』という菜食主義の神を称える信徒です」
「ナ、ナンダッテー!」
困惑していると、どこからともなく黒いローブを羽織ってフードを被った、何かの教徒らしき人がシュババッと集まって来て、すぐに俺たちを取り囲んで罵詈雑言を繰り広げた。
「みんな!こいつ、動物を殺しても平気な顔をして生きていられるみたいなんだ!」
「それは大変だ!動物だって一つの尊い命なのに!」
「えっ、あんたの履いてる靴も、動物の皮の……」
「人じゃない!人の心を持ってない!動物が可哀そうだ!」
ダメだ、話が通じない!
「……キータさん、こいつらなんなんですか?頭がおかしいんですか?」
「わかんないよ。でも、なにかヤバそうだ」
「可哀そう!可哀そう!可哀そう!可哀そう!可哀そう!」
合唱が始まってしまった。この人たちが何が言いたいのか、俺にはさっぱり分かんない。
「可哀そう!可哀そう!かわい……」
「うるせえよ、黙れ」
シロウさんの行く先に現れてギャーギャー言っていた女は、ぶん殴られて気絶してしまった。それを見た周りの信徒たちは、黙り込んで後ずさる。
「ちょっとォォぉ!いきなり何やってんですか!あんた、仮にも勇者なんですよ!?」
「キータ、よく聞け。こいつらは魔物みてえなモンだ。見た目は人のようだが、もう人々を害する悪魔の仲間なんだよ」
「……アク、マ?」
それを聞いたモモコちゃんはピクリと反応し、俯いたと思うとホーリーロッドを握りしめて「コロス……」と呟き始めた。や、やばい!
「モモコちゃん落ち着いて!あんたら、ぶっ殺されたくなかったら早くどっか行った方がいいですよ!この子、マジでおっかないから!」
「クケケケケケケケ!!」
「あぁ!遅かった……!」
モモコちゃんはその場で飛び上がったかと思うと、ホーリーロッドをこん棒の様に構えて目の前の二人を薙ぎ払った。更に、倒れた信徒の体を掴むと、後ろの人だまりに向かってそれをぶん投げて数人を薙ぎ倒した!
その勢いで瞬く間に全員を制圧すると、空を仰いで体を逸らし、街中に響き渡るような咆哮を放ったのだ。
「あぁ、どうしよう……」
「大丈夫だ、キータ。ほら、これを見てみろ」
「いやいや!何が大丈夫なんだよ!?」
答えると、シロウさんは気絶した女のフードを外して、前髪を上げて額を見た。
「あっ、これはチッターの紋章じゃないですか」
「チッターの紋章?」
アオヤ君が、冷静にその言葉の意味を問う。
「そう。悪魔に心を売った呪術師、チッターの呪いの紋章だよ。これは洗脳の呪いで、かけられると自分の価値観以外の事を容認出来なくなってしまうんだ」
そして、呪いが最終フェーズまで進むと、この教徒たちのように過激な運動を働くことになる。何が正しいのかの判別をつけられず、その結果指導者に操られているかのように振る舞ってしまうのだ。
「酷い奴ですね、そのチッターって。……うわ、また来ましたよ!」
アオヤ君の指差す方を見ると、そこにはぞろぞろと近づいてくる教徒たちがいて、手に持っていた卵を俺たちに投げつけてきた。
「卵って、中に命入ってますよね?」
「もうよくわかんないよ!シロウさん、逃げましょう!これ以上人間同士で争うのはよくないですよ!」
「そうだな」
「あっ!人非人が逃げるぞ!追いかけろ!」
走り出すと、彼らも俺たちの後を追って駆け出した。
「いたっ。……ちょっと、モモコ。暴れるな。痛いってば」
「シャーッ!ふーっ!ふーっ!」
モモコちゃんは、自分を抱えるシロウさんの腕に噛みつくと、猫のようにジタバタと暴れていた。ひょっとして、これも呪いか!?
「こらっ!あんまオイタすっとホーリーロッド取り上げっぞ!」
「……にゃあ」
相手がまだ人間だからなのか、それとも本当に猫だからか、彼女はそれを聞くとシュンとして暴れるのをやめた。これは、近いうちにこの殺意を抑えるオリエンテーションをしなければ、魔物との戦闘でかなりのリスクになるかもしれない。
などと思っている間に、俺たちいつの間にか狭い路地へと迷い込んでしまった。行く先はわからないのに、多数の足音はどんどんと近づいてきている。
「うげっ、行き止まりだ」
「あいやー。これ、マズいっすね。どうしますか?」
その時だった。突然、隅にあった扉が開かれて、現れた細い手が「こっちだ」と言わんばかりに手招きをしている。
「他に道もねえな。行こうぜ」
シロウさんの言葉で、一斉に其の扉の中へ飛び込んだ。
「消えたぞ。とこ行った?あいつら」
「そっちの方を探せ!野放しにすると、尊い命が失われ続けてしまう!」
声は、だんだん遠ざかっていく。気配が薄れていったのを感じてから、俺はほっと胸を撫で下ろした。
「ふぅ、助かったみたいですね」
「そうだな。あんた、名前も知らん俺たちの為に、ありがとう」
頭を下げるシロウさんの先には、彼らと同じように黒いローブを着た女性が立っていた。
「いえ、こちらこそ、同胞の醜態を見せてしまって、本当にお恥ずかしい限りです」
「……同胞?」
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