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チッターの野望編
第12話 教団さん、行間で即落ちしてしまう
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「行こうよ」
「……えっ?」
二人は、俺を見て顔を見合わせた。
「他の冒険者より危険は多いし、旅の途中はお金も多くは貰えない、国が抱えているとは思えないような、クソみたいなブラックパーティだけどさ」
遠くで、シロウさんのくしゃみの音が聞こえた。
「でも、楽しいよ。命削って本気で戦うのも、その日の夜にお酒を飲むのも、あの人と一緒に働くのも」
きっと、大人としてはここで「やめとけ」と言ってやるのがいいんだろう。もしくは、シロウさんのように、考えさせるのが正しい対応なんだろう。
でも、俺にはそんな事は出来ない。そんなに大人じゃないし、強くもない。だから、もし彼らに行きたいという気持ちが少しでもあるのなら、背中を押してやろうって思ったんだ。
「まぁ、僕は行きますよ。なんだかんだ、シロウさんいつも奢ってくれるし。それに、レッスンも2までしか受けていませんから」
ほんと、この子は大物だな。
「モモコちゃんは?」
「……逆に聞きますけど、私を受け入れてくれるパーティって、ここ以外にあるんですか?」
自覚、あったんだね。
「よし、じゃあ行こうか。チッターを捉えたんだし、国に引き渡せばそこそこの報酬も期待できそうだ」
「確かに。僕、めちゃくちゃ肉食べたいっすね」
「私も、なんかすっごくお肉が食べたいです」
「……そうだね。じゃあ、次の街に着いたら、とびきり美味しいステーキを食べに行こうか」
実は、俺は自分の初めての後輩がすぐに辞めちゃうんじゃないかって、内心ビクビクしていたんだ。でも、シロウさんがクロウを追放した理由がようやく分かったから。本当の意味で、俺がやるべき事が分かったから。彼らが残ってくれて、本当に良かったと思ったんだ。
「ありがとう」
× × ×
ギリギスに着くと、シロウさんはチッターをブィー・グワン信徒の前に晒して、洗脳が全てが嘘だったと白状させた。更に、その足で教団が根城としている教会へ赴き、悪い噂の発端がどこにあるのかを、教会中を文字通りひっくり返して探した。すると、地下にはレストランや肉屋から強奪した冷凍肉がたくさんため込んであって、おまけにそれを教会の司祭連中が食べている事が分かったのだ。
「あとは、あんたらで決めなよ。殺してもいいし、生かしてもいい」
捉えた司祭をマルティナさんたちへ明け渡し、シロウさんはそう言った。どうやら、こいつらが、街のブィー・グワン信徒へ良からぬ知恵を吹聴していたようだ。
「……彼らを殺しても、何も解決しません」
「そうなんだよな。でも、何事にも決着は必要だぜ。洗脳を解いてやれなかった詫びに、俺がブチ殺してやってもいい」
「ひ……っ。どうか、命だけは……」
嘘だ。彼は、人を絶対に殺さない。
「いいえ、その必要はありません。彼らがテロリズムを止めて、元の平和な生活を送る事が出来れば、それでいいのです」
「……だってよ、ブルジョワ共。絶対そういう風に信徒どもに指導しろよ。お前ら、この命の恩人に仇を討つようなマネしやがったら、今度は助からねえと思えよ」
「あ、ありがとうございます!」
「マルティナ。これ、俺への『ホットラインクリスタル』。もしなんかあったら、連絡しな」
そう言って、司祭たちに見せびらかしながら渡したのは、シロウさんがいつも使っている青いモノとは違う、緑色のクリスタルだった。ホットラインと言うくらいだから、使えば彼に直接連絡が行くのだろう。
「助かります。あなたのような勇者は、近年では珍しいですね」
「誉めるなら、こいつらを褒めてやんなよ。特に、このアオヤとモモコは、ほとんど二人で敵をやっつけちまったんだぜ。この街救ったのは、こいつらさ」
「まぁ、そうだったんですか。若いのに偉いですねぇ、よしよし」
言うと、マルティナさんは二人の頭を撫でた。二人とも、まんざらでもなさそうだ。
「……それでは、占いの結果を。この紙に記してありますので、北門から抜けてハードポイントという街へ向かって下さい。その街の近くに、カチョークラスの幹部のいるダンジョンがあります」
「分かったよ」
「ただ、気を付けてください。そこのカチョーは、恐らく『タタキアゲ』です」
「とうとう来たか。骨が折れそうだな」
「すいません。タタキアゲってなんすか?」
アオヤ君が訊くと、マルティナさんは彼に目を向けた。
「悪魔ではない、悪魔幹部の事です。本来、悪魔幹部は生まれながらの悪魔種族が担当する事になっていますが、稀に下級の魔物から実力だけでのし上がって来た幹部が居るのです。それが、タタキアゲと呼ばれている悪魔幹部です」
「……えーっと。つまり、かなりヤバいって事ですか?」
「その通りだ。多分、今の俺たちの実力で考え無しに突っ込んだら、殺される」
「なるほど。でも、それなら普通の冒険者も挑戦出来るんじゃないですか?」
「そうだったらよかったんだけどね。タタキアゲも、幹部へ昇格するときに『サカズキ』と言う形で悪魔の血を体内に取り込むんだ。もちろん、ここで拒絶反応を起こして死んじゃうこともあるんだよ。でも、幹部として生きているってことは、そこのカチョーはサカズキにも耐えた強力な魔物ってことになるんだ。まぁ、たまにそれでも戦える冒険者が現れたりするんだけどね」
話を聞きながら武者震いするモモコちゃんを、マルティナさんが頭を撫でて抑えている。
「じゃあ、シャチョーとかもそのタタキアゲなんですかね」
「いいや。いくら実力とは言え、センム以上の悪魔は格が違う。タタキアゲが居るのは、精々ブチョーまでだな」
「……なんか、思ったより大変そうっすね」
「だから、お前らには頑張ってもらわねえとな。よろしく頼むぜ」
そして、俺たちは次の街、ハードポイントへ向かった。途中で何度かの修練を行ったけど、この程度のスキルアップで勝てるとは、とても思えなかった。
「……えっ?」
二人は、俺を見て顔を見合わせた。
「他の冒険者より危険は多いし、旅の途中はお金も多くは貰えない、国が抱えているとは思えないような、クソみたいなブラックパーティだけどさ」
遠くで、シロウさんのくしゃみの音が聞こえた。
「でも、楽しいよ。命削って本気で戦うのも、その日の夜にお酒を飲むのも、あの人と一緒に働くのも」
きっと、大人としてはここで「やめとけ」と言ってやるのがいいんだろう。もしくは、シロウさんのように、考えさせるのが正しい対応なんだろう。
でも、俺にはそんな事は出来ない。そんなに大人じゃないし、強くもない。だから、もし彼らに行きたいという気持ちが少しでもあるのなら、背中を押してやろうって思ったんだ。
「まぁ、僕は行きますよ。なんだかんだ、シロウさんいつも奢ってくれるし。それに、レッスンも2までしか受けていませんから」
ほんと、この子は大物だな。
「モモコちゃんは?」
「……逆に聞きますけど、私を受け入れてくれるパーティって、ここ以外にあるんですか?」
自覚、あったんだね。
「よし、じゃあ行こうか。チッターを捉えたんだし、国に引き渡せばそこそこの報酬も期待できそうだ」
「確かに。僕、めちゃくちゃ肉食べたいっすね」
「私も、なんかすっごくお肉が食べたいです」
「……そうだね。じゃあ、次の街に着いたら、とびきり美味しいステーキを食べに行こうか」
実は、俺は自分の初めての後輩がすぐに辞めちゃうんじゃないかって、内心ビクビクしていたんだ。でも、シロウさんがクロウを追放した理由がようやく分かったから。本当の意味で、俺がやるべき事が分かったから。彼らが残ってくれて、本当に良かったと思ったんだ。
「ありがとう」
× × ×
ギリギスに着くと、シロウさんはチッターをブィー・グワン信徒の前に晒して、洗脳が全てが嘘だったと白状させた。更に、その足で教団が根城としている教会へ赴き、悪い噂の発端がどこにあるのかを、教会中を文字通りひっくり返して探した。すると、地下にはレストランや肉屋から強奪した冷凍肉がたくさんため込んであって、おまけにそれを教会の司祭連中が食べている事が分かったのだ。
「あとは、あんたらで決めなよ。殺してもいいし、生かしてもいい」
捉えた司祭をマルティナさんたちへ明け渡し、シロウさんはそう言った。どうやら、こいつらが、街のブィー・グワン信徒へ良からぬ知恵を吹聴していたようだ。
「……彼らを殺しても、何も解決しません」
「そうなんだよな。でも、何事にも決着は必要だぜ。洗脳を解いてやれなかった詫びに、俺がブチ殺してやってもいい」
「ひ……っ。どうか、命だけは……」
嘘だ。彼は、人を絶対に殺さない。
「いいえ、その必要はありません。彼らがテロリズムを止めて、元の平和な生活を送る事が出来れば、それでいいのです」
「……だってよ、ブルジョワ共。絶対そういう風に信徒どもに指導しろよ。お前ら、この命の恩人に仇を討つようなマネしやがったら、今度は助からねえと思えよ」
「あ、ありがとうございます!」
「マルティナ。これ、俺への『ホットラインクリスタル』。もしなんかあったら、連絡しな」
そう言って、司祭たちに見せびらかしながら渡したのは、シロウさんがいつも使っている青いモノとは違う、緑色のクリスタルだった。ホットラインと言うくらいだから、使えば彼に直接連絡が行くのだろう。
「助かります。あなたのような勇者は、近年では珍しいですね」
「誉めるなら、こいつらを褒めてやんなよ。特に、このアオヤとモモコは、ほとんど二人で敵をやっつけちまったんだぜ。この街救ったのは、こいつらさ」
「まぁ、そうだったんですか。若いのに偉いですねぇ、よしよし」
言うと、マルティナさんは二人の頭を撫でた。二人とも、まんざらでもなさそうだ。
「……それでは、占いの結果を。この紙に記してありますので、北門から抜けてハードポイントという街へ向かって下さい。その街の近くに、カチョークラスの幹部のいるダンジョンがあります」
「分かったよ」
「ただ、気を付けてください。そこのカチョーは、恐らく『タタキアゲ』です」
「とうとう来たか。骨が折れそうだな」
「すいません。タタキアゲってなんすか?」
アオヤ君が訊くと、マルティナさんは彼に目を向けた。
「悪魔ではない、悪魔幹部の事です。本来、悪魔幹部は生まれながらの悪魔種族が担当する事になっていますが、稀に下級の魔物から実力だけでのし上がって来た幹部が居るのです。それが、タタキアゲと呼ばれている悪魔幹部です」
「……えーっと。つまり、かなりヤバいって事ですか?」
「その通りだ。多分、今の俺たちの実力で考え無しに突っ込んだら、殺される」
「なるほど。でも、それなら普通の冒険者も挑戦出来るんじゃないですか?」
「そうだったらよかったんだけどね。タタキアゲも、幹部へ昇格するときに『サカズキ』と言う形で悪魔の血を体内に取り込むんだ。もちろん、ここで拒絶反応を起こして死んじゃうこともあるんだよ。でも、幹部として生きているってことは、そこのカチョーはサカズキにも耐えた強力な魔物ってことになるんだ。まぁ、たまにそれでも戦える冒険者が現れたりするんだけどね」
話を聞きながら武者震いするモモコちゃんを、マルティナさんが頭を撫でて抑えている。
「じゃあ、シャチョーとかもそのタタキアゲなんですかね」
「いいや。いくら実力とは言え、センム以上の悪魔は格が違う。タタキアゲが居るのは、精々ブチョーまでだな」
「……なんか、思ったより大変そうっすね」
「だから、お前らには頑張ってもらわねえとな。よろしく頼むぜ」
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