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冒険者ギルドの情報統制編
第41話 国家転覆かよ
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……ハズだった。
「キータさん、もうお金ないよぅ」
「俺も、いつの間にかすっからかんだよ。アオヤ君は?」
「ちょい勝ちです。あのマージャンってゲーム、めちゃくちゃオモロイっすけど、強い人と戦っちゃダメっすね。三回で、勝ち分のほとんど持ってかれました」
俺たちは、すっかり遊戯にハマってしまい、当初の目的なんてどこ吹く風。特に、アオヤ君は四人でマークの書かれた牌を使って戦うゲーム、マージャンを痛く気に入ったようで、かれこれ3時間近く遊び続けていた。外は、既に真っ暗だ。
「ところで、どうして俺たちここに来たんだっけ」
「さぁ。なんか、情報収集とか言ってた気がしますけど」
言われ、俺は手に乗せて弾いていたスロットのメダルを床に落としてしまった。
「そうだ、シロウさんから連絡……」
来てた。ホットラインクリスタルは、向こうからの思念を受けると色が変わるのだ。
「これ、怒られるかな」
「……口裏、合わせましょうよ」
素晴らしいアイデア。
「同感。じゃあ、路地裏で迷ったことにしよう」
「アオヤ、戻って来て~」
そして、俺たちは外に出るとシロウさんのクリスタルに連絡を入れた。声色は少し暗く、第一声が「無事か?」で、なんとも申し訳ない気持ちになってしまった。
「めっちゃ心配してた。色んなとこ、探してたんだって」
「そういうの聞くと、嘘は吐き辛いっすね」
とは言っても、仕事中にカジノで遊び呆けて上司の連絡シカトしたなんて言えないし。万が一怒られたら嫌だし、ここは黙っておこう。
そんなワケで、荷物を預けた宿屋に向かっていると、街の中で何やら争い事が起こっているのを見つけた。見過ごすワケにはいかないんだけど、今の俺たちには事情が……。
「あ、キータさん。あそこ、シロウさんじゃないすか?」
「えっ?マジで?」
見てみると、確かにそこには冒険者たちに囲まれた彼の姿がある。あまり暴力的な雰囲気はなく、むしろじっくりと話を聞いて考えているように見えた。
ソロリ。後ろから忍び寄って人だかりの影に隠れると、俺たちはその話を盗み聞きする事にした。
「それで、証拠はあがってんのか?」
「ないんだよ。話を持ちかけられた冒険者は、あいつらの仲間になるか殺されるかで、どちらにせよ表舞台からは姿を消してしまうんだ」
「そりゃヤバそうだな。持ちかけられる条件は?」
「恐らく、ダイヤクラス以上の実力者になる事。噂じゃ、その軍団に稼がせた金を使って兵器を開発して、全ての実権を握ろうとしているって。最終的には、王都より強い武力を手に入れて、玉座を奪う気でいるらしいぜ」
「国家転覆かよ。スケールがデカいな」
何やら、相当ヤバそうな話が聞こえてきた。
「何とかしねえとなぁ。……悪い、仲間に連絡していいか?ここに居るって伝えてやらねえと」
言って、シロウさんはクリスタルを握ったから、俺たちはわざとらしく手を挙げて、彼の名前を呼んだ。
「サボってなかったか?」
「はは、まさか……」
酒飲んだら、謝ろ。
話を聞くと、どうやらここの冒険者ギルドは街の有権者と手を組んでいて、強い冒険者をかき集めた私設兵団を作っているとのことだった。
そして、ギルドは兵団にのみ高額な仕事を回していて、並の冒険者たちはまともな仕事にありつくことが出来ないでいる。だから、彼ら若い冒険者たちは、チーグァオ門に集まってデモを行っているというのだ。
「王都に密告しようにも、向こうにスパイを送り込んでいるようで。何人かの行商人が、消されていると聞いています」
「やっぱ、内側から腐っちまってんのな。まぁ、世界もだいぶ平和ボケしちまってるし、仕方ねえのかもしれねぇ」
「どうするんですか?」
「決まってる。冒険者ギルドに、平等に仕事を回すように話を付ける」
「そんなに簡単に出来るもんなんすか?」
「やってみなきゃ分からん。明日、ギルドで仕事を受けるフリをして、向こうの様子を探ってみようぜ」
そうと決まれば腹ごしらえ。冒険者たちと別れた俺たちは、宿屋の近くにあったやたらと油の種類が豊富な料理屋に入った。厨房では高く火柱が上がっていて、ガッチャンガッチャンとフライパンを振っている。そんな中で、俺たちはいつも通りビアを頼むと、安いコース料理を注文した。
「うまいっ!!」
はっきり言うけど、この街の料理は今まで食って来た料理の中で一番うまかった。特に、このスープに麺が入っているヤツ。これは、是非作り方を覚えて帰りたいな。
……その日の夜、俺はいつの間にか日課になっていたヒマリとの会話の中で、こんな話を聞いた。
「チャンナンの冒険者ギルドに、知り合いとかいないの?」
「いないよ。だって、あそこの人たちって本部とも全然連絡取らないことで有名だもん。凄く、閉鎖的なんだよ」
「へぇ。何か、知ってることってない?」
「うーん。そう言えば、いつだったか忘れたけど、ギルド内の職員を総入れ替えにしたって話を聞いたことがあるよ。私が働いてたところに異動してきた人が、そんなことを言ってた」
「理由は?」
「それが、分からないんだって。でも、どこかからやって来た偉い人が、ギルドを管理する事になったらしいよ。人づての話だから、あまり信ぴょう性はないけどね」
「そっか、ありがとう。ところで、そっちの旅はどう?変わりない?」
そして、彼らがミレイの両親の情報を手に入れて、とある島へ向かっている事を聞いた。きっと、最後の戦いになるのだろう。
「頑張ってね。ヒマリたちなら、絶対大丈夫だよ」
「うん。私、頑張るよ。隣で戦えるって、証明してくる」
声には、強く力が込められている。彼女の旅が無事に終わる事を願って、クリスタルの思念を解いた。
「キータさん、もうお金ないよぅ」
「俺も、いつの間にかすっからかんだよ。アオヤ君は?」
「ちょい勝ちです。あのマージャンってゲーム、めちゃくちゃオモロイっすけど、強い人と戦っちゃダメっすね。三回で、勝ち分のほとんど持ってかれました」
俺たちは、すっかり遊戯にハマってしまい、当初の目的なんてどこ吹く風。特に、アオヤ君は四人でマークの書かれた牌を使って戦うゲーム、マージャンを痛く気に入ったようで、かれこれ3時間近く遊び続けていた。外は、既に真っ暗だ。
「ところで、どうして俺たちここに来たんだっけ」
「さぁ。なんか、情報収集とか言ってた気がしますけど」
言われ、俺は手に乗せて弾いていたスロットのメダルを床に落としてしまった。
「そうだ、シロウさんから連絡……」
来てた。ホットラインクリスタルは、向こうからの思念を受けると色が変わるのだ。
「これ、怒られるかな」
「……口裏、合わせましょうよ」
素晴らしいアイデア。
「同感。じゃあ、路地裏で迷ったことにしよう」
「アオヤ、戻って来て~」
そして、俺たちは外に出るとシロウさんのクリスタルに連絡を入れた。声色は少し暗く、第一声が「無事か?」で、なんとも申し訳ない気持ちになってしまった。
「めっちゃ心配してた。色んなとこ、探してたんだって」
「そういうの聞くと、嘘は吐き辛いっすね」
とは言っても、仕事中にカジノで遊び呆けて上司の連絡シカトしたなんて言えないし。万が一怒られたら嫌だし、ここは黙っておこう。
そんなワケで、荷物を預けた宿屋に向かっていると、街の中で何やら争い事が起こっているのを見つけた。見過ごすワケにはいかないんだけど、今の俺たちには事情が……。
「あ、キータさん。あそこ、シロウさんじゃないすか?」
「えっ?マジで?」
見てみると、確かにそこには冒険者たちに囲まれた彼の姿がある。あまり暴力的な雰囲気はなく、むしろじっくりと話を聞いて考えているように見えた。
ソロリ。後ろから忍び寄って人だかりの影に隠れると、俺たちはその話を盗み聞きする事にした。
「それで、証拠はあがってんのか?」
「ないんだよ。話を持ちかけられた冒険者は、あいつらの仲間になるか殺されるかで、どちらにせよ表舞台からは姿を消してしまうんだ」
「そりゃヤバそうだな。持ちかけられる条件は?」
「恐らく、ダイヤクラス以上の実力者になる事。噂じゃ、その軍団に稼がせた金を使って兵器を開発して、全ての実権を握ろうとしているって。最終的には、王都より強い武力を手に入れて、玉座を奪う気でいるらしいぜ」
「国家転覆かよ。スケールがデカいな」
何やら、相当ヤバそうな話が聞こえてきた。
「何とかしねえとなぁ。……悪い、仲間に連絡していいか?ここに居るって伝えてやらねえと」
言って、シロウさんはクリスタルを握ったから、俺たちはわざとらしく手を挙げて、彼の名前を呼んだ。
「サボってなかったか?」
「はは、まさか……」
酒飲んだら、謝ろ。
話を聞くと、どうやらここの冒険者ギルドは街の有権者と手を組んでいて、強い冒険者をかき集めた私設兵団を作っているとのことだった。
そして、ギルドは兵団にのみ高額な仕事を回していて、並の冒険者たちはまともな仕事にありつくことが出来ないでいる。だから、彼ら若い冒険者たちは、チーグァオ門に集まってデモを行っているというのだ。
「王都に密告しようにも、向こうにスパイを送り込んでいるようで。何人かの行商人が、消されていると聞いています」
「やっぱ、内側から腐っちまってんのな。まぁ、世界もだいぶ平和ボケしちまってるし、仕方ねえのかもしれねぇ」
「どうするんですか?」
「決まってる。冒険者ギルドに、平等に仕事を回すように話を付ける」
「そんなに簡単に出来るもんなんすか?」
「やってみなきゃ分からん。明日、ギルドで仕事を受けるフリをして、向こうの様子を探ってみようぜ」
そうと決まれば腹ごしらえ。冒険者たちと別れた俺たちは、宿屋の近くにあったやたらと油の種類が豊富な料理屋に入った。厨房では高く火柱が上がっていて、ガッチャンガッチャンとフライパンを振っている。そんな中で、俺たちはいつも通りビアを頼むと、安いコース料理を注文した。
「うまいっ!!」
はっきり言うけど、この街の料理は今まで食って来た料理の中で一番うまかった。特に、このスープに麺が入っているヤツ。これは、是非作り方を覚えて帰りたいな。
……その日の夜、俺はいつの間にか日課になっていたヒマリとの会話の中で、こんな話を聞いた。
「チャンナンの冒険者ギルドに、知り合いとかいないの?」
「いないよ。だって、あそこの人たちって本部とも全然連絡取らないことで有名だもん。凄く、閉鎖的なんだよ」
「へぇ。何か、知ってることってない?」
「うーん。そう言えば、いつだったか忘れたけど、ギルド内の職員を総入れ替えにしたって話を聞いたことがあるよ。私が働いてたところに異動してきた人が、そんなことを言ってた」
「理由は?」
「それが、分からないんだって。でも、どこかからやって来た偉い人が、ギルドを管理する事になったらしいよ。人づての話だから、あまり信ぴょう性はないけどね」
「そっか、ありがとう。ところで、そっちの旅はどう?変わりない?」
そして、彼らがミレイの両親の情報を手に入れて、とある島へ向かっている事を聞いた。きっと、最後の戦いになるのだろう。
「頑張ってね。ヒマリたちなら、絶対大丈夫だよ」
「うん。私、頑張るよ。隣で戦えるって、証明してくる」
声には、強く力が込められている。彼女の旅が無事に終わる事を願って、クリスタルの思念を解いた。
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