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第五章 義理の妹と結婚するまで
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……スノーボードは難しい。それに尽きる。
夏のサーフィンの時点で何となく予想はついていたが、俺は一つもいいところがなく終わってしまった。
何度トライしてもうまく滑ることが出来ず、最終的にはロッジのベンチに座ってリフトで雪山を上る人たちを見ていた。もっとうまく滑れれば楽しいのだろうか。
集合時間の少し前、俺は駐車場で待つバスの元へ向かった。道中偶然トラと合流したのだが、周りではしゃぐ人たちを相手にするので精一杯だったようで、言葉を交わすことはなかった。(もしかしたら助けを求めていたのかもしれない)
ちなみに、那子さんは卒業式を控えているため自分の大学のイベントが目白押しらしく、今回は不参加だ。残念だったとは思うが、トラはこの状況を見られなくてよかったのではないだろうか。
旅館に戻って支配人と打ち合わせをする。既に料理の準備は済んでいて、いつでも始められる状態のようだ。部屋に戻って明日の予定の確認を済ませる。ふとスマホを見ると、夢子から理子と真琴と撮影した写真が送られてきた。三人ともばっちりメイクをして可愛らしい服装をしている。場所はどこだろうか、後ろには高いビルが多いから、都会に行ったのかもしれない。
気が付くと宴会開始五分前。俺は急いで会場へ向かった。
席に着くと、(一番端っこの入口に近い席)間もなくしてトラが乾杯の挨拶を始めた。彼を見て、俺以外のほとんどが浴衣を着ている事に気がついた。
「早く飲みたいだろうから完結に。みんな、今日明日は死ぬほど楽しもうぜ!」
うぇ~い。という返事が沸き起こる。俺も何となく雰囲気に便乗したが、乗り方がよくわからなかった。
「それでは右手にグラスを持ちまして……、今年もよろしく!乾杯!!」
その一声で会場のボルテージは最高まで急上昇した。盛り上がり方がとんでもないことになっている。下手なライブよりも賑やかなんじゃないだろうか。貸し切りにしておいて本当によかった。
早速飲み比べをする奴が現れた。あちこちでオリジナル(なのか?替え歌のようだ)のコールが起きている。向こうの方では瓶を互いの口に突っ込んで飲み合わせる奴。あっちでは面白がって男をおだてる女たち。それに呼応するように一瞬でグラスを開けている。
昔の中根みたいだな、と思いふと彼女を探すと、その周りには相変わらず男が溢れていた。今の方がよっぽどモテているように見える。そして最後にトラを見ると、彼の周囲は某国の独裁者の演説を傾聴する民衆のようになっていた。
カオスだ。
目の前には火のついた紙の鍋が置いてある。具材はエビとシメジ、それにネギと山菜のようだ。他には刺身、だし巻き、小松菜のお浸し、みそ田楽、つくね串。奮発した甲斐もあり、かなりおいしそうだ。
まずはゆっくりと鍋に箸を入れ……たところで業務部のメンバーが集まってきた。
「部長!独りで何やってんすか!」
「何って、料理を」
「たまにはお酒を飲みましょう、文也君」
神崎先輩がそういうのは珍しい。
「……わかりました。それではいただきます」
その後、俺たちはひたすら飲み続けた。
しばらくしてようやく場も落ち着きを見せる。部屋の隅で酔いつぶれて眠っている奴もいる。泣きながら飲む奴、笑い転げる奴、語りたがる奴。酔い方は本当に人様々だ。
「文也ちゃんは本当に強いわね」
黒羽先輩もかなりの酒豪だ。酔いつぶれているのを見たことがない。(この姿を酔っていないというのであればだが)
「ありがとうございます」
礼を言うと、彼はお猪口に入った日本酒を空けた。俺がそこに再び酒を注ぐと、「上手ね~」と言ってニコニコしている。首を動かしたから、ポニーテールに結んだ髪型が揺れていた。果たして、普段の彼とどっちが本当の先輩なのだろうか。
業務について色々と訊かれた。旅行後にしなければいいけない事を伝えると。
「必ず呼ぶのよ。文也ちゃんの力になるから」
そう言って再びお猪口を空けた。
「そうだよ。それに、業務部のみんなは文也君が頑張ってるの知ってるんだよ」
神崎先輩も現れた。浴衣の胸元が開けている。サービスしてくれているのかもしれない。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
誰かの為にやっていたわけではないが、こうして認められるとやはり嬉しい。しかし任せられる事は人に任せないと、せっかく手を貸してくれているのにかえって迷惑になってしまう。そろそろ人を動かす力を学ぶべきなのだろう。
さて、宴もたけなわ、という訳ではないがそろそろお開きだ。各々で準備をしてもらって、後は二次会なりなんなりで満足してもらおう。
俺は一足先に部屋へ戻ってシャワーを浴びると、ベッドに座ってラジオを聞いた。
明日は丸一日が自由時間だ。少し早く起きてスノボを練習するか、それとも辺りを観光するのがいいだろうか。
そんなことを考えていると連絡があった。送り主は中根で、「売店に来い」との事だった。
彼女は自分の立場を理解しているのだろうか。そんなところをファンに見つかったら何をされるか分かったものではない。その旨を伝えると。
『大丈夫だから、早く来い』
何を根拠にそういうのかはわからなかったが、シカトすると後が怖いから仕方なく売店へ向かう事にした。
夏のサーフィンの時点で何となく予想はついていたが、俺は一つもいいところがなく終わってしまった。
何度トライしてもうまく滑ることが出来ず、最終的にはロッジのベンチに座ってリフトで雪山を上る人たちを見ていた。もっとうまく滑れれば楽しいのだろうか。
集合時間の少し前、俺は駐車場で待つバスの元へ向かった。道中偶然トラと合流したのだが、周りではしゃぐ人たちを相手にするので精一杯だったようで、言葉を交わすことはなかった。(もしかしたら助けを求めていたのかもしれない)
ちなみに、那子さんは卒業式を控えているため自分の大学のイベントが目白押しらしく、今回は不参加だ。残念だったとは思うが、トラはこの状況を見られなくてよかったのではないだろうか。
旅館に戻って支配人と打ち合わせをする。既に料理の準備は済んでいて、いつでも始められる状態のようだ。部屋に戻って明日の予定の確認を済ませる。ふとスマホを見ると、夢子から理子と真琴と撮影した写真が送られてきた。三人ともばっちりメイクをして可愛らしい服装をしている。場所はどこだろうか、後ろには高いビルが多いから、都会に行ったのかもしれない。
気が付くと宴会開始五分前。俺は急いで会場へ向かった。
席に着くと、(一番端っこの入口に近い席)間もなくしてトラが乾杯の挨拶を始めた。彼を見て、俺以外のほとんどが浴衣を着ている事に気がついた。
「早く飲みたいだろうから完結に。みんな、今日明日は死ぬほど楽しもうぜ!」
うぇ~い。という返事が沸き起こる。俺も何となく雰囲気に便乗したが、乗り方がよくわからなかった。
「それでは右手にグラスを持ちまして……、今年もよろしく!乾杯!!」
その一声で会場のボルテージは最高まで急上昇した。盛り上がり方がとんでもないことになっている。下手なライブよりも賑やかなんじゃないだろうか。貸し切りにしておいて本当によかった。
早速飲み比べをする奴が現れた。あちこちでオリジナル(なのか?替え歌のようだ)のコールが起きている。向こうの方では瓶を互いの口に突っ込んで飲み合わせる奴。あっちでは面白がって男をおだてる女たち。それに呼応するように一瞬でグラスを開けている。
昔の中根みたいだな、と思いふと彼女を探すと、その周りには相変わらず男が溢れていた。今の方がよっぽどモテているように見える。そして最後にトラを見ると、彼の周囲は某国の独裁者の演説を傾聴する民衆のようになっていた。
カオスだ。
目の前には火のついた紙の鍋が置いてある。具材はエビとシメジ、それにネギと山菜のようだ。他には刺身、だし巻き、小松菜のお浸し、みそ田楽、つくね串。奮発した甲斐もあり、かなりおいしそうだ。
まずはゆっくりと鍋に箸を入れ……たところで業務部のメンバーが集まってきた。
「部長!独りで何やってんすか!」
「何って、料理を」
「たまにはお酒を飲みましょう、文也君」
神崎先輩がそういうのは珍しい。
「……わかりました。それではいただきます」
その後、俺たちはひたすら飲み続けた。
しばらくしてようやく場も落ち着きを見せる。部屋の隅で酔いつぶれて眠っている奴もいる。泣きながら飲む奴、笑い転げる奴、語りたがる奴。酔い方は本当に人様々だ。
「文也ちゃんは本当に強いわね」
黒羽先輩もかなりの酒豪だ。酔いつぶれているのを見たことがない。(この姿を酔っていないというのであればだが)
「ありがとうございます」
礼を言うと、彼はお猪口に入った日本酒を空けた。俺がそこに再び酒を注ぐと、「上手ね~」と言ってニコニコしている。首を動かしたから、ポニーテールに結んだ髪型が揺れていた。果たして、普段の彼とどっちが本当の先輩なのだろうか。
業務について色々と訊かれた。旅行後にしなければいいけない事を伝えると。
「必ず呼ぶのよ。文也ちゃんの力になるから」
そう言って再びお猪口を空けた。
「そうだよ。それに、業務部のみんなは文也君が頑張ってるの知ってるんだよ」
神崎先輩も現れた。浴衣の胸元が開けている。サービスしてくれているのかもしれない。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
誰かの為にやっていたわけではないが、こうして認められるとやはり嬉しい。しかし任せられる事は人に任せないと、せっかく手を貸してくれているのにかえって迷惑になってしまう。そろそろ人を動かす力を学ぶべきなのだろう。
さて、宴もたけなわ、という訳ではないがそろそろお開きだ。各々で準備をしてもらって、後は二次会なりなんなりで満足してもらおう。
俺は一足先に部屋へ戻ってシャワーを浴びると、ベッドに座ってラジオを聞いた。
明日は丸一日が自由時間だ。少し早く起きてスノボを練習するか、それとも辺りを観光するのがいいだろうか。
そんなことを考えていると連絡があった。送り主は中根で、「売店に来い」との事だった。
彼女は自分の立場を理解しているのだろうか。そんなところをファンに見つかったら何をされるか分かったものではない。その旨を伝えると。
『大丈夫だから、早く来い』
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