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画面の向こうに誰かいる
しおりを挟む高校2年の春、紗季(さき)はいつものように、スマホをいじりながら帰宅していた。
学校のLINEグループには、たわいのない会話が流れていて、画面の中はいつも通りの平和だった。
家に着いて部屋に入ると、すぐベッドにダイブして、スマホを顔の前に持ち上げる。
すると、通知がひとつ――
【LINE:未読メッセージ(1)】
「あれ……?」
その通知には、見覚えのない名前が表示されていた。
『ユウカ』
(え……誰?)
開くと、たった一言だけのメッセージが。
【いま、どこ?】
背筋がスッと冷たくなる。
アカウントを開いてみても、プロフィール画像も、タイムラインもなく、共通の友だちもいない。
ブロックしようとした瞬間、またメッセージが届く。
【さきちゃんのうしろ、あったかいね】
「……え?」
思わず、背中に視線を向けるけど、もちろん誰もいない。
けど、背中が――じっとりと、汗ばんでいた。
「……だれ、これ……」
震える手でブロックしようとするも、なぜかエラーが出てできない。
『このユーザーはブロックできません』
「うそでしょ……」
そのとき、スマホのカメラアプリが勝手に起動した。
インカメで映った自分の顔の後ろ――
すぐそこに、“黒い長い髪の女”が、顔だけ出して微笑んでいた。
「きゃあっ!!」
スマホを投げてベッドから飛び起きた。
震えながら部屋中を見回しても、誰もいない。
(なに……? 見間違い?)
震える手でスマホを拾い上げると、LINEの画面がまた勝手に開かれた。
新しいメッセージがあった。
【写真、かわいく撮れたね】
添付されていたのは、
さっきインカメで写った、紗季と“あの女”が一緒に笑っている――自撮り写真だった。
「っ、いや、いやだ……!」
泣きながらスマホの電源を切ろうとするけど、画面は真っ暗にならない。
代わりに表示されたのは、まっ黒な背景に、白い文字だけ。
【もうすぐ、会えるね】
その瞬間、部屋のドアが**ギィィ……**と音を立てて、ゆっくりと開いた。
「お母さん……?」
震える声で呼びかける。
でも、返事はない。
(……誰?)
ドアのすき間から、白い手が、そっとベッドのふちに触れた。
そこで紗季の記憶は途切れた――。
*
翌朝。
紗季の母親が、目を覚まさない娘を見つけて119番した。
救急隊が駆けつけたとき、紗季はベッドにうずくまるように倒れていて、
スマホを握りしめたまま、冷たくなっていた。
スマホの画面は、なぜかLINEのカメラが開かれたままで、
保存フォルダには、誰も撮った覚えのない“2ショット写真”が何枚も残っていた。
そこに写っていたのは――
笑顔の紗季と、真っ黒な服の女。
女の顔だけは、どの写真でもぼやけていて、判別できなかった。
そしてその日を境に、
紗季の友人たちのスマホに、順番にメッセージが届きはじめた。
【さきちゃんのこと、忘れないでね】
送信元は――『ユウカ』。
解説
◆「ユウカ」とは誰だったのか?
物語に登場した「ユウカ」という名前のLINEアカウントは、主人公の紗季にとって見覚えのないものでした。
プロフィールもタイムラインも空白で、共通の友達もおらず、ブロックもできない――このことから、「ユウカ」は人間ではない存在、つまり霊や何かしらの超常的なものと考えられます。
もしかすると、「ユウカ」という存在はかつて実在していた人物の“思念”や“未練”がデジタルに残り、LINEを通じて現世に接触してきたのかもしれません。
◆「うしろ、あったかいね」というメッセージの意味
このセリフは、ホラーの王道ともいえる“背後の存在”を感じさせる演出です。
スマホの画面越しに、ユウカが物理的に紗季の近くに存在していることをほのめかしており、霊的な存在が、画面の中だけではなく現実世界にまで入り込んできている恐怖を演出しています。
◆勝手に起動するカメラと「ツーショット写真」
スマホのカメラが勝手に起動し、インカメラに映るのは紗季と見知らぬ女の自撮り写真――
これは、ユウカの存在が紗季の日常空間に実体として現れていることの象徴です。
しかも、その写真を「かわいく撮れたね」と言って送ってくるあたり、ユウカは紗季を**“友達”や“恋人”のように思っている可能性**も示唆しています。
つまり一方的な執着が生み出した、歪んだつながりです。
◆「もうすぐ、会えるね」の意味
このメッセージは、霊が紗季に対して「これから取り憑く」「連れて行く」ことを予告しているものだと考えられます。
“会える”という言葉が、現世と死後の世界との接触を意味しており、まるで再会を喜ぶような言い方が、かえって不気味さを引き立てています。
◆ラストの「他の人にも通知が届く」描写の意味
物語の最後では、紗季が亡くなったあと、今度は彼女の友人たちにユウカからLINEが届き始めます。
これは、ユウカの存在が**「感染型」の霊的現象**であることを示しており、紗季にとどまらず、他人へと拡大していく“終わらない恐怖”を意味しています。
このように、ひとつのスマホを通して呪いが拡散されていくという描写は、現代におけるSNSやスマホ依存の問題にも通じる社会的な怖さも内包しています。
◆全体のまとめ
• 「ユウカ」は実体のない霊的存在で、LINEという現代的ツールを通じて接触してくる
• 徐々にスマホ越しの存在が、
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