画面の向こうに誰かいる

𝒩

文字の大きさ
1 / 1

画面の向こうに誰かいる

しおりを挟む

高校2年の春、紗季(さき)はいつものように、スマホをいじりながら帰宅していた。
学校のLINEグループには、たわいのない会話が流れていて、画面の中はいつも通りの平和だった。

家に着いて部屋に入ると、すぐベッドにダイブして、スマホを顔の前に持ち上げる。
すると、通知がひとつ――

【LINE:未読メッセージ(1)】

「あれ……?」

その通知には、見覚えのない名前が表示されていた。

『ユウカ』

(え……誰?)

開くと、たった一言だけのメッセージが。

【いま、どこ?】

背筋がスッと冷たくなる。
アカウントを開いてみても、プロフィール画像も、タイムラインもなく、共通の友だちもいない。
ブロックしようとした瞬間、またメッセージが届く。

【さきちゃんのうしろ、あったかいね】

「……え?」

思わず、背中に視線を向けるけど、もちろん誰もいない。
けど、背中が――じっとりと、汗ばんでいた。

「……だれ、これ……」

震える手でブロックしようとするも、なぜかエラーが出てできない。

『このユーザーはブロックできません』

「うそでしょ……」

そのとき、スマホのカメラアプリが勝手に起動した。

インカメで映った自分の顔の後ろ――
すぐそこに、“黒い長い髪の女”が、顔だけ出して微笑んでいた。

「きゃあっ!!」

スマホを投げてベッドから飛び起きた。
震えながら部屋中を見回しても、誰もいない。

(なに……? 見間違い?)

震える手でスマホを拾い上げると、LINEの画面がまた勝手に開かれた。

新しいメッセージがあった。

【写真、かわいく撮れたね】

添付されていたのは、
さっきインカメで写った、紗季と“あの女”が一緒に笑っている――自撮り写真だった。

「っ、いや、いやだ……!」

泣きながらスマホの電源を切ろうとするけど、画面は真っ暗にならない。
代わりに表示されたのは、まっ黒な背景に、白い文字だけ。

【もうすぐ、会えるね】

その瞬間、部屋のドアが**ギィィ……**と音を立てて、ゆっくりと開いた。

「お母さん……?」

震える声で呼びかける。
でも、返事はない。

(……誰?)

ドアのすき間から、白い手が、そっとベッドのふちに触れた。

そこで紗季の記憶は途切れた――。



翌朝。
紗季の母親が、目を覚まさない娘を見つけて119番した。
救急隊が駆けつけたとき、紗季はベッドにうずくまるように倒れていて、
スマホを握りしめたまま、冷たくなっていた。

スマホの画面は、なぜかLINEのカメラが開かれたままで、
保存フォルダには、誰も撮った覚えのない“2ショット写真”が何枚も残っていた。

そこに写っていたのは――
笑顔の紗季と、真っ黒な服の女。
女の顔だけは、どの写真でもぼやけていて、判別できなかった。

そしてその日を境に、
紗季の友人たちのスマホに、順番にメッセージが届きはじめた。

【さきちゃんのこと、忘れないでね】

送信元は――『ユウカ』。



◆「ユウカ」とは誰だったのか?

物語に登場した「ユウカ」という名前のLINEアカウントは、主人公の紗季にとって見覚えのないものでした。
プロフィールもタイムラインも空白で、共通の友達もおらず、ブロックもできない――このことから、「ユウカ」は人間ではない存在、つまり霊や何かしらの超常的なものと考えられます。

もしかすると、「ユウカ」という存在はかつて実在していた人物の“思念”や“未練”がデジタルに残り、LINEを通じて現世に接触してきたのかもしれません。

◆「うしろ、あったかいね」というメッセージの意味

このセリフは、ホラーの王道ともいえる“背後の存在”を感じさせる演出です。
スマホの画面越しに、ユウカが物理的に紗季の近くに存在していることをほのめかしており、霊的な存在が、画面の中だけではなく現実世界にまで入り込んできている恐怖を演出しています。

◆勝手に起動するカメラと「ツーショット写真」

スマホのカメラが勝手に起動し、インカメラに映るのは紗季と見知らぬ女の自撮り写真――
これは、ユウカの存在が紗季の日常空間に実体として現れていることの象徴です。

しかも、その写真を「かわいく撮れたね」と言って送ってくるあたり、ユウカは紗季を**“友達”や“恋人”のように思っている可能性**も示唆しています。
つまり一方的な執着が生み出した、歪んだつながりです。

◆「もうすぐ、会えるね」の意味

このメッセージは、霊が紗季に対して「これから取り憑く」「連れて行く」ことを予告しているものだと考えられます。
“会える”という言葉が、現世と死後の世界との接触を意味しており、まるで再会を喜ぶような言い方が、かえって不気味さを引き立てています。

◆ラストの「他の人にも通知が届く」描写の意味

物語の最後では、紗季が亡くなったあと、今度は彼女の友人たちにユウカからLINEが届き始めます。
これは、ユウカの存在が**「感染型」の霊的現象**であることを示しており、紗季にとどまらず、他人へと拡大していく“終わらない恐怖”を意味しています。

このように、ひとつのスマホを通して呪いが拡散されていくという描写は、現代におけるSNSやスマホ依存の問題にも通じる社会的な怖さも内包しています。

◆全体のまとめ
• 「ユウカ」は実体のない霊的存在で、LINEという現代的ツールを通じて接触してくる
• 徐々にスマホ越しの存在が、
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

処理中です...