【R18】亡国の聖女は、魔王の最愛になりました。

白木ゆか

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第12話 悪夢

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ミレイアが目を覚ましたとき、寝室は静まり返っていた。

夜明け前の薄い光が、天蓋の隙間から落ちている。
ベッドの反対側は、昨夜と同じように空いたままだった。

最近、アシュレイは忙しいのだろう。
そう考える理由はいくつもあった。夜更けに戻る気配もなければ、書類を抱えたまま眠ってしまう様子も見ない。ミレイアが起きている時間帯に、寝室に姿を見せない日が続いていた。

不思議と、恐怖はなかった。

代わりに、胸の奥に残るものがある。

寂しい。

そう思った瞬間、ミレイアは自分で自分に驚いた。
これまで、誰かがいないことを不都合だと感じたことはない。静かな部屋は慣れている。祈りの部屋で一人になる時間も、罰として与えられる独房も、同じように受け入れてきた。

それなのに。

ベッドの端に残る温もりを探してしまった自分に、戸惑いが走る。

そのまま目を閉じたとき、夢が始まった。

白い石床。
冷たい空気。
数を数えられる声。

祈れ、と言われる。
祈れないなら、役に立て、と。

誰かの手が、肩を押す。
視線が集まる。
期待と失望が、同時に向けられる。

「聖女だろう」

声が、何度も重なる。

息が詰まり、喉がひくりと鳴る。

「起きてください」

現実の声が、遠くから割り込んだ。

「ミレイア様」

肩に、そっと触れられる。

ミレイアは、はっと息を吸った。
身体を起こそうとして、指先が震える。

「……っ」

額に、冷たい汗が滲んでいた。

目の前にいたのは、見覚えのある顔だった。リリスの配下の女性。派手さはないが、動きに無駄がなく、城の中で何度か世話をしてくれている。

「おはようございます」

穏やかな声だった。

「少し……うなされていたので」

それ以上は言わない。理由も、内容も、聞かない。

ミレイアは、しばらく言葉が出なかった。
夢の余韻が、まだ身体に残っている。

「……ありがとう、ございます」

掠れた声になったが、女性は気にした様子もなく頷いた。

「お水をお持ちしますね」

そう言って、静かに部屋を出ていく。

一人になった寝室で、ミレイアは膝を抱えた。

ここは、神殿ではない。
怒鳴られることも、役割を求められることもない。

それでも、過去は追いかけてくる。

そして――

アシュレイが来なかった夜は、悪夢を思い出してしまう自分がいた。

その事実を、まだうまく整理できないまま、
ミレイアは、朝の光の中で静かに息を整えた。
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