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第12話 悪夢
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ミレイアが目を覚ましたとき、寝室は静まり返っていた。
夜明け前の薄い光が、天蓋の隙間から落ちている。
ベッドの反対側は、昨夜と同じように空いたままだった。
最近、アシュレイは忙しいのだろう。
そう考える理由はいくつもあった。夜更けに戻る気配もなければ、書類を抱えたまま眠ってしまう様子も見ない。ミレイアが起きている時間帯に、寝室に姿を見せない日が続いていた。
不思議と、恐怖はなかった。
代わりに、胸の奥に残るものがある。
寂しい。
そう思った瞬間、ミレイアは自分で自分に驚いた。
これまで、誰かがいないことを不都合だと感じたことはない。静かな部屋は慣れている。祈りの部屋で一人になる時間も、罰として与えられる独房も、同じように受け入れてきた。
それなのに。
ベッドの端に残る温もりを探してしまった自分に、戸惑いが走る。
そのまま目を閉じたとき、夢が始まった。
白い石床。
冷たい空気。
数を数えられる声。
祈れ、と言われる。
祈れないなら、役に立て、と。
誰かの手が、肩を押す。
視線が集まる。
期待と失望が、同時に向けられる。
「聖女だろう」
声が、何度も重なる。
息が詰まり、喉がひくりと鳴る。
「起きてください」
現実の声が、遠くから割り込んだ。
「ミレイア様」
肩に、そっと触れられる。
ミレイアは、はっと息を吸った。
身体を起こそうとして、指先が震える。
「……っ」
額に、冷たい汗が滲んでいた。
目の前にいたのは、見覚えのある顔だった。リリスの配下の女性。派手さはないが、動きに無駄がなく、城の中で何度か世話をしてくれている。
「おはようございます」
穏やかな声だった。
「少し……うなされていたので」
それ以上は言わない。理由も、内容も、聞かない。
ミレイアは、しばらく言葉が出なかった。
夢の余韻が、まだ身体に残っている。
「……ありがとう、ございます」
掠れた声になったが、女性は気にした様子もなく頷いた。
「お水をお持ちしますね」
そう言って、静かに部屋を出ていく。
一人になった寝室で、ミレイアは膝を抱えた。
ここは、神殿ではない。
怒鳴られることも、役割を求められることもない。
それでも、過去は追いかけてくる。
そして――
アシュレイが来なかった夜は、悪夢を思い出してしまう自分がいた。
その事実を、まだうまく整理できないまま、
ミレイアは、朝の光の中で静かに息を整えた。
夜明け前の薄い光が、天蓋の隙間から落ちている。
ベッドの反対側は、昨夜と同じように空いたままだった。
最近、アシュレイは忙しいのだろう。
そう考える理由はいくつもあった。夜更けに戻る気配もなければ、書類を抱えたまま眠ってしまう様子も見ない。ミレイアが起きている時間帯に、寝室に姿を見せない日が続いていた。
不思議と、恐怖はなかった。
代わりに、胸の奥に残るものがある。
寂しい。
そう思った瞬間、ミレイアは自分で自分に驚いた。
これまで、誰かがいないことを不都合だと感じたことはない。静かな部屋は慣れている。祈りの部屋で一人になる時間も、罰として与えられる独房も、同じように受け入れてきた。
それなのに。
ベッドの端に残る温もりを探してしまった自分に、戸惑いが走る。
そのまま目を閉じたとき、夢が始まった。
白い石床。
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数を数えられる声。
祈れ、と言われる。
祈れないなら、役に立て、と。
誰かの手が、肩を押す。
視線が集まる。
期待と失望が、同時に向けられる。
「聖女だろう」
声が、何度も重なる。
息が詰まり、喉がひくりと鳴る。
「起きてください」
現実の声が、遠くから割り込んだ。
「ミレイア様」
肩に、そっと触れられる。
ミレイアは、はっと息を吸った。
身体を起こそうとして、指先が震える。
「……っ」
額に、冷たい汗が滲んでいた。
目の前にいたのは、見覚えのある顔だった。リリスの配下の女性。派手さはないが、動きに無駄がなく、城の中で何度か世話をしてくれている。
「おはようございます」
穏やかな声だった。
「少し……うなされていたので」
それ以上は言わない。理由も、内容も、聞かない。
ミレイアは、しばらく言葉が出なかった。
夢の余韻が、まだ身体に残っている。
「……ありがとう、ございます」
掠れた声になったが、女性は気にした様子もなく頷いた。
「お水をお持ちしますね」
そう言って、静かに部屋を出ていく。
一人になった寝室で、ミレイアは膝を抱えた。
ここは、神殿ではない。
怒鳴られることも、役割を求められることもない。
それでも、過去は追いかけてくる。
そして――
アシュレイが来なかった夜は、悪夢を思い出してしまう自分がいた。
その事実を、まだうまく整理できないまま、
ミレイアは、朝の光の中で静かに息を整えた。
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