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第15話 亡国の理由
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寝室の灯りは落とされたまま、外の気配だけが薄く伝わってくる。アシュレイは椅子に腰掛け、ミレイアはベッドに横になっていた。互いに距離は保たれているが、沈黙は張りつめていない。
しばらくして、アシュレイが低く口を開いた。
「……君のいた国を、滅ぼした理由だが」
ミレイアは目を閉じたまま、続きを待った。逃げたいとは思わない。
「神殿は、象徴だった」
短く言って、間を置く。
「位置も、だ。あの場所には、元々魔族の都市があった」
ミレイアは、ゆっくりと呼吸する。
「滅ぼされ、人間が居座った。神殿を建て、聖域と呼び始めた」
声に感情は乗らない。事実を積み上げる語り口だ。
「象徴を壊さなければ、線は引けない」
それだけ言って、アシュレイは言葉を切った。
沈黙が落ちる。
「……すまない」
少し遅れて、そう続ける。
「君に聞かせるべき話ではなかった」
ミレイアは、目を開けた。天井を見つめたまま、首を横に振る。
「いいえ」
声は、思ったよりも落ち着いていた。
「……私も」
一度、言葉を探す。
「早く、滅びてほしいと……思っていました」
アシュレイの動きが止まる。だが、遮らない。
ミレイアは、ゆっくりと言葉を継いだ。
「神殿にいると……毎日、数字を数えられました」
誰がどれだけ祈れたか。
どれだけ力を使えたか。
「祈れない日は、意味がないって……」
声が、少しだけ掠れる。
「役に立たないなら、次がいる、って」
言葉は淡々としている。感情を乗せると、崩れてしまいそうだった。
アシュレイは、何も言わずに聞いている。相槌も、急かしもしない。ただ、そこにいる。
「……聖女なのに」
ミレイアは、指先を布に沈める。
「人を助けたい、って……思えなくなっていきました」
祈りの言葉は口から出る。
だが、意味は伴わない。
「それでも、やめることは許されませんでした」
一つ話すたびに、胸の奥が軽くなる。
「だから……滅びたと聞いたとき」
言葉が止まる。
「……怖かったです。でも……」
小さく、息を吐く。
「少し、安心もしました」
アシュレイは、そこで初めて低く相槌を打った。
「……そうか」
それ以上、評価はしない。
「君がそう思ったことを、否定するつもりはない」
ミレイアは、目を閉じる。
「誰にも、言えませんでした」
「今は?」
「……今は」
答えに迷って、正直に言う。
「聞いてもらえました」
アシュレイは、わずかに視線を伏せた。
「それでいい」
短い言葉だった。
「神殿は、象徴だった」
それ以上は続けず、アシュレイは視線を落とした。
ミレイアは、何も返さなかった。
返す言葉が、必要ない気がした。
静かな夜が、二人の間に続く。
過去は消えない。
理由も、正しさも、簡単には整理できない。
それでも――
語っても、拒まれなかった。
その事実だけが、確かにそこにあった。
しばらくして、アシュレイが低く口を開いた。
「……君のいた国を、滅ぼした理由だが」
ミレイアは目を閉じたまま、続きを待った。逃げたいとは思わない。
「神殿は、象徴だった」
短く言って、間を置く。
「位置も、だ。あの場所には、元々魔族の都市があった」
ミレイアは、ゆっくりと呼吸する。
「滅ぼされ、人間が居座った。神殿を建て、聖域と呼び始めた」
声に感情は乗らない。事実を積み上げる語り口だ。
「象徴を壊さなければ、線は引けない」
それだけ言って、アシュレイは言葉を切った。
沈黙が落ちる。
「……すまない」
少し遅れて、そう続ける。
「君に聞かせるべき話ではなかった」
ミレイアは、目を開けた。天井を見つめたまま、首を横に振る。
「いいえ」
声は、思ったよりも落ち着いていた。
「……私も」
一度、言葉を探す。
「早く、滅びてほしいと……思っていました」
アシュレイの動きが止まる。だが、遮らない。
ミレイアは、ゆっくりと言葉を継いだ。
「神殿にいると……毎日、数字を数えられました」
誰がどれだけ祈れたか。
どれだけ力を使えたか。
「祈れない日は、意味がないって……」
声が、少しだけ掠れる。
「役に立たないなら、次がいる、って」
言葉は淡々としている。感情を乗せると、崩れてしまいそうだった。
アシュレイは、何も言わずに聞いている。相槌も、急かしもしない。ただ、そこにいる。
「……聖女なのに」
ミレイアは、指先を布に沈める。
「人を助けたい、って……思えなくなっていきました」
祈りの言葉は口から出る。
だが、意味は伴わない。
「それでも、やめることは許されませんでした」
一つ話すたびに、胸の奥が軽くなる。
「だから……滅びたと聞いたとき」
言葉が止まる。
「……怖かったです。でも……」
小さく、息を吐く。
「少し、安心もしました」
アシュレイは、そこで初めて低く相槌を打った。
「……そうか」
それ以上、評価はしない。
「君がそう思ったことを、否定するつもりはない」
ミレイアは、目を閉じる。
「誰にも、言えませんでした」
「今は?」
「……今は」
答えに迷って、正直に言う。
「聞いてもらえました」
アシュレイは、わずかに視線を伏せた。
「それでいい」
短い言葉だった。
「神殿は、象徴だった」
それ以上は続けず、アシュレイは視線を落とした。
ミレイアは、何も返さなかった。
返す言葉が、必要ない気がした。
静かな夜が、二人の間に続く。
過去は消えない。
理由も、正しさも、簡単には整理できない。
それでも――
語っても、拒まれなかった。
その事実だけが、確かにそこにあった。
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