【R18】亡国の聖女は、魔王の最愛になりました。

白木ゆか

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番外編 お忍びデート⑤

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ベッドの上で、ミレイアは浅く息をついた。

まだ、劇の声が耳の奥に残っている。
あの聖女の、細く震える声。
逃げ場のない台詞回し。
観客に向けて誇張された、甘く歪んだ言葉。

「……覚えているか」

アシュレイが、低く言った。

ミレイアは、頷く。

「『いや……だめ……』」

彼女自身の声が、思ったよりも熱を帯びていた。

アシュレイの手が、ゆっくりと動く。
触れているのは、まだ布の上だけだというのに、熱が伝わる。

「『生き延びたければ、従え』」

淡々とした復唱だった。
だが、その声音が、劇の男役よりも近い。

ミレイアの喉が鳴る。

「……あれは、ひどいです」

そう言いながらも、否定する力は弱い。

「私は、あんなふうに……」

言葉が途切れる。

アシュレイの指が、ミレイアの良いところを掠めて、わずかに力を持つ。
逃げないことを確かめるように。

「だが、観客は喝采した」

「……はい」

「声が、甘いな」

ミレイアは、息を吸い、吐いた。

「……あれは」

劇の中の聖女は、抵抗するほどに声を乱していた。
拒絶と、懇願と、どちらとも取れる調子で。

「……演技です」

言い切ろうとして、できなかった。

アシュレイの視線が、ゆっくりと落ちてくる。

「ミレイアは」

間が置かれる。

「どこまで、演技ができるかな」

問いは、静かだった。
だが、相反するように瞳の奥には燃え上がる欲が見えていた。

ミレイアは、胸に触れたままの手のひらを見る。
その温度が、答えを急かしてくる。

「……分かりません」

正直な声だった。

「でも……」

目を上げる。

「あなたが、ああいうふうに求めてくれるなら」

言葉を選ぶ余裕は、もうなかった。

「……逃げません」

その瞬間、空気が変わった。

唇が重なる。
今度は、劇の台詞を遮るような、深いキス。

「……っ……」

短く、息が漏れる。

「『声を、殺すな』」

アシュレイが、劇の台詞をなぞる。

囁きに近い声だった。

「『ここでは、神は聞いていない』」

ミレイアの指先が、無意識に衣を掴む。

「……ひっ……ぁ」

反論のはずだった。祈りの言葉だったかもしれない。伸ばされたアシュレイの指先がミレイアの秘所に伸ばされて、期待に濡れたぐちゃぐちゃとそこを弄ぶ。

「ここは……、正直だな」

「……ァあっ!やめ」

だが、続きは唇で塞がれる。

言葉より先に、熱が来る。当てられたアシュレイの熱に反射的に身体は逃げようとするも、覆い被さるアシュレイから逃げられるわけもなかった。

「……『もう、神の元へは戻れまい』」

酷く楽しそうな笑みとともに耳元で、そう囁かれた。

それは、劇の中の言葉。
けれど、今のその言葉は脅しではなかった。

ただ、今この距離にある事実を、なぞっているだけだった。

ミレイアは、目を閉じる。

「……戻りません」

誰にともなく、そう言った。

それ以上、台詞は続かなかった。

言葉の代わりに、呼吸が重なり、
熱が、静かに、確実に深まっていく。ミレイアはいつもより強く、少しだけ乱暴に求めてくるアシュレイに翻弄される。

「……ぁ、ふ」

「奥まで挿入ったぞ」

「ぃや、言わない……ァ」

夜は、長く、濃かった。

劇の筋書きとは違う形で、
だが、同じくらい、逃げ場のない温度で。

「……ンッ、お願いッ」

「はッ、中に出す」

孕ませると執念すら感じさせるアシュレイに激しく揺すられて、何度も高みに押し上げれたミレイアはふつりと途中で意識を途切れさせた。

朝は、静かに訪れた。

カーテン越しの光が、白く滲む。

ミレイアは、温もりに包まれたまま目を開けた。
腕の中で、アシュレイが眠っている。

劇の台詞は、もう残っていない。

代わりにあるのは、確かな重さと、
選んだまま迎えた朝だった。

ミレイアは、そっと息を整え、
もう一度、目を閉じた。
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