艱難辛苦の戦巫女~全てを撃滅せし無双の少年は、今大厄を討つ~

作間 直矢 

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遊撃部隊入隊編

三話 

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 大厄対策本部の訓練場、そこに洋助と灯は模擬戦用の刀を持ち、佇む。

 「ったく…稽古付けてほしいって言うから来たけど、まさか実戦形式で戦え、なんて思わなかったよ洋助…」
 「すみません…、ですがこのやり方が一番身に付きますので…」
 「私はいいけど…、怪我するよ、洋助?」
 「構いません、本気で来てください」

 軽く溜息をついて頷く灯は、我流の構えを取って向き合う。
 それに合わせて洋助も刀を構え、間合いを詰める。

 「―――……」

 息を呑み、様子を伺う洋助。
 が、灯の構えは隙だらけで打ち込む余裕があり、故に初動に迷ってしまう。
 それを見切るように灯は距離を縮める。

 「ッだぁ!」

 誘われた動きだとしても、洋助は突きを打ち込む。
 その切先は胴を突く神速の一打、わかっていても躱すのは難しい一撃を、灯は眼前に捉えて微笑む。

 「いい一撃ね、洋助」
 「なッ!?」

 瞬間、重力が傾くような勢いで横に倒れ、突きを躱す灯。
 崩れた体勢に追撃しようと、剣先を切り直して振り抜く。

 「っよっとッ!」

 灯は柔軟に体を捻り、側転した。
 その勢いを利用し、柄を蹴り上げて刀を弾く。

 「っぐッ」
 「ほらッ!隙だらけ!」

 宙に浮いた刀、丸腰の洋助に横一線の剣戟が打ち込まれる。
 避けられぬ一撃、致命傷になり得る剣戟に対してあえて距離を詰め、左腕を盾にしてそれを受ける、そのまま舞っていた刀を右手で掴むと振り下ろす。

 「おっと、やるね」

 少し驚きつつも、冷静に動きに合わせる灯。
 何の躊躇いも無く刀を手放し、丸腰になりながら半歩後退して回避する。
 先程の状況が真逆になり洋助が優勢に見える、が、灯の戦い方がここから変わる。

 「ッがふッ!?」

 桐島灯は、拳を構えて洋助の身体を殴る。

 「――ちょっと、本気だしちゃうね」

 接近戦、刀が振れない至近距離で間合いを保たれる。
 格闘技術に劣る洋助はサンドバックの様に殴られ、止めに蹴りを打ち込まれて壁に叩きつけられる。

 「ふぅー、少しズルしたけど私の勝ちかな」
 「―――ッつつ…、まさか、こんな戦い方があるとは…」

 鼻血を拭い、よろめきながら立ち上がる。
 体勢を整えて再度立ち向かう洋助に灯は動揺する。

 「ちょ、ちょっと!?まだやるの!?」
 「え?これぐらいの怪我大した事ないですよ?」
 「いや…、色々とおかしいよ洋助…」

 乾いた笑みを浮かべて模擬戦用の刀を放り投げる灯は、これ以上付き合えないと、そんな意思表示を示した。

 「ほら、怪我させたのは私だけど治療室行くよ、もっと自分を大切にしなよ」
 「ですが…せっかくお時間頂いたのに…」
 「あぁ~もう、いいから言う事聞きなさい」
 「はい…」

 背中を押し促されると、諦めるように歩き始める。
 その最中、灯は質問する。

 「…どうして、そんなに強さを求めるの?今でもそこそこ強いじゃない」
 「え、それは…、皆を、守りたい…、からですかね…」
 「皆を?友達とか?」
 「…と、いうより、全員ですかね、身近な人も、守るべき一般の方々も」
 「ふーん、大きな志だね、私も洋助を見習わなきゃね」

 軽い口調で返答するが、表情は少し険しく、怒っている様にも見えた。

 「洋助は大厄特殊機動部隊って知ってる?」
 「確か…、大厄に対して民間人の避難や救助を担う、神力を持たない部隊、ですよね」
 「そう、優秀な巫女以外の人間が選ばれ、巫女達のサポートを目的とした部隊」

 淡々と語る灯は、続けて説明する。

 「その部隊長を務める水島務さんって方、彼に戦い方を教えてもらうといいよ」
 「水島…務…さん」

 神力を持たない人間による大厄の撃破記録は三人であり、水島務はその一人である。
 
 巴 宗一郎。
 水島 務。
 赤城 幸助。

 この三名が大厄撃破者であり、特殊な事情を抱えた人間でもある。

 「彼は君と似たような境遇だから話を聞くだけでもいいし、さっきの戦いで痛感したと思うけど、格闘術においては人類最強って程強いから教えてもらうといいよ」
 「格闘術、ですか…」
 「洋助も実戦を通して、剣術だけだと限界を感じる場面多いでしょ?だから接近戦を優位にするのに格闘戦術も学ぶといいよ」
 「そうですね…、確かに取り入れるべき戦術ですね」

 納得して返答すると、治療室に着く。
 洋助を送り届けた灯はそのまま軽く手を振ってその場を離れる。

 「じゃあね洋助、ちゃんと怪我治すのよ」
 「あ、はい、ありがとうございます」
 「それと、明後日には水島さんが任務から帰ってくるから会えるかもね」

 そう言い残して灯の姿が見えなくなる。
 
 洋助は立ちすくみ、殴られた頬を軽くさすった――。
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