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巫女教育機関編
おまけ2 モテてます
しおりを挟む洋助が神力を扱える様になり、その存在に危険が無いと周知され始めた頃、正式に教育機関から行動の制限が解除された。
それにより教室内や校内で監視されていた洋助は、雪の眼光から解放され少し胸を撫で下ろしていたのであった。
「―――はぁ…」
だが、それでも溜息が一つこぼれる。
それは新たな環境の変化により、周りの巫女達の接し方が変わったからである。
「お疲れの様ね、赤原くん」
「雪か、…まぁ少し、な」
お昼の時間、いつものおにぎりを空けると雪はお弁当を持って机に戻る。
「随分と質問責めにあっていたみたいだけど、大丈夫?」
「それ自体は世間話だから問題は無いんだが、いかんせん、こう…距離感が近いというか、巫女の好奇心は凄いというか…」
「ただでさえ男の子が珍しいのに加えて、貴方一般家庭からきてるもの、そりゃ色々訊きたい事もあるんじゃない?」
至極当然の事を言われ、気が重くなる洋助。
行動制限の解除が影響し、今まで関心はあれど話せずにいた巫女達がこぞって洋助に近付き、話を伺おうと囲んでいた。
さらに、神力を使うまでの鍛錬の影響で、復讐心に囚われずに生活できた事で表情や所作も柔らかくなり、普通の好青年と言える印象となりアプローチが変わる、それは――。
「あと、貴方カッコいいもの、人気にもなるわ…」
――つまり、そういう事でもある。
雪から見ても整った顔立ちをしている洋助は、年頃の多い巫女達にとって色恋の対象にもなったのだ。
「―――なっ!?何を、いきなりッ…」
「あっ…、別に、他意はないから…本当に!」
本心を思わず言ってしまい、焦る雪。
その姿は酷く動揺しており、普段の冷静で涼しげな彼女ではなく、可愛らしい女の子の振る舞いであった。
「ごほんっ…、まぁ、これからの日常に彼女達が関わるのは必然なんだから、早めに慣れておきなさい」
「あ、あぁ…そうだな、そうだよな」
軽く咳払いし、体裁を保つ雪。
その様子をあえて流しつつ、洋助もまた本音を話す。
「けど、こうやって他の巫女と関わると雪の有難さが身に染みるよ、命令とはいえ近くにいてくれたし、偏見とかなく見守ってくれた、……それに、とても話しやすい」
「―――は…」
ようやく落ち着いていた心拍数が、また乱れる雪。
誰が見ても頬が赤く染まっていたが、その姿は後ろから掛けられる巫女の声に気を取られ、洋助が見ることは叶わなかった。
「赤原さーん、すみません!今いいですかー?」
「――あ、なんですか?今行きます」
他クラスの巫女が洋助に声を掛け、手招きをする。
「雪、ごめんちょっと離れる」
「あ、うん…」
遠くなる彼を少しだけ寂しく思い、いつものようにお弁当をゆっくり食べる。
ただ隣にはいつもの彼がおらず、その席をぽつりと空けていた。
「―――ばか…」
今頃他の巫女と楽しくしているのかと、そんな邪推をして可愛らしい悪態をつく。
その感情を雪はまだ理解しておらず、胸に残るよく分からない気持ちを残して怒り顔でお弁当を食べるのであった。
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