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撃滅の夜叉兵編
四話
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時は少し遡り、水島が必死に呼び止めた時である。
「俺が駆け付けますッ!!水島さんは対象の護衛をお願いしますッ!!」
「赤原君ッ!待てッ!!」
声は届かず、神力を纏って彼は一瞬で飛び立つ。
その速度は尋常ではなく、疾風のようであった。
「敵の狙いは…赤城か…、こちらベータ部隊からデルタへ、守りを固めるため一旦護送車両に合流しろ、体制を立て直す」
『こちらデルタ部隊、了解、すぐそちらへ――ザザザッ…』
「――どうした?応答しろッ!おいッ!」
突然途絶える通信、それは酷く不自然で、水島は最悪の想定をする。
赤城の護送を狙った襲撃、それは情報が筒抜けである事実を物語らせる。
つまり、本部内に内通者がいる可能性があり、その内通者は――。
「巫女が敵かッ…!くそッ!」
相手がそうであれば部隊が壊滅するは必然、この混迷した状況にも辻褄が合う。
どこまでが敵の思惑なのか、何が目的なのか、それが分からなければ下手に動けない。
だが一つ分かる事は、赤城の強奪だけは阻止しなければならない。
冴える思考とは裏腹に、水島の身体は熱く沸騰する。
「―――」
前方と後方の車両に部隊を集中させ、中央となる赤城を乗せた車両を守るように陣形は展開されていた。
その前方には洋助が駆け付けて敵を食い止める、そう判断した水島の行動は迅速だった。
「ベータ部隊に告ぐ、お前たちは赤城を見張り、この車両の護衛を優先しろ」
『た、隊長はッ!?水島隊長はどうなさるんですかっ!?』
「俺は後方車両の援軍に行く、10分後に戻らなければ巻田、お前が指揮を取れ」
『っ……了解っ…』
その返答を聞き、水島は車両から慎重に降りる。
姿勢を低い状態で維持し、発見されにくい暗がりから後方車両に向かう。
「―――ッ、おい!しっかりしろ!」
「……うぅ…ぅ…」
すると、路肩に脱輪した状態の車両が木に激突しており、運転手はだらりと気を失っていた、その隊員を呼びかけると小さく呻いている事を確認する。
残りの隊員を発見しようと辺りを見回す、すると銃撃の音が林道から聴こえる。
「――ッ!林道での戦闘か…相手は複数か…?」
警戒して木々を盾に音の鳴る場所へ近付くと、デルタ部隊の隊員がぐったりと倒れ伏している、幸い死に至る傷は負っておらず、皆気を失っている。
――その状況を見て、水島は核心する。
殺しを躊躇っている、でなければ死人がいないなんて事はあり得ない。
であれば、敵は巫女でありながら戦闘経験が浅く、尚且つ本部の情報に深く関わる事が出来る相手、それは――。
「神威の巫女かッ!!」
――瞬間、背後に影在り。
それを察知し振り向くと、峰打ちで刀を振るう巫女がいた。
「お覚悟をッ!」
「甘いッ」
超人的な反応速度でそれを躱し、水島は手首掴んで関節を曲げようとする。
が、そのか細い腕でも神力の力があれば大男一人投げ飛ばす事ができ、逆に振り抜かれ持ち上げられる。
「――普通の兵じゃないッ!貴方は…水島ッ!?」
持ち上げた勢いで投げ飛ばすその直前、巫女はその男の異様な格闘術に気付く。
そして同時に、水島務の存在を思い出し、手心を加えた未熟を後悔したのであった。
「きゃッ!?」
空中に水島が舞うと、そのまま地面に叩きつけられる、――かと思われた。
しかし、僅かな瞬間で体勢を整え、落下の衝撃を五点着地で和らげて巫女を逆に投げ飛ばす。
「くっ…もう容赦しませんッ!」
「いいだろう、来なさい」
バランスを崩して片膝を着く巫女は、人斬りの決意を固める。
対する水島はただ冷静、そして憐れむような視線で見つめる。
「はぁッ!」
常人であれば、巫女の踏み込みは消えて見えるだろう。
だが水島は予備動作からそれを予想し、視界に映る事象よりも速く動く。
「―――ッふ」
サイドステップを挟んで間合いを詰められ、気付くと刃の切っ先だけが眼前に迫る。
それを数センチの距離で見切り、軸足を払って巫女の体幹を崩す、と、巫女の手足は空中に漂い身動きが取れなくなる。
「そんなッ…!?」
決定的な隙を作り、がら空きとなる胴に打撃を叩きこむ。
目で追う事しかできない巫女は、刀を離して防御の姿勢を取る。
「だぁッ!!」
空気が振動する掌底を打ち込むと、流石の巫女も無傷では済まず地を舐めて吹き飛ぶ。
ボロボロになり倒れるがそれでも立ち上がろうとする巫女、よろめきながら前を見据えたが、纏った神力は霧散する。
「諦めなさい、君に戦いは向かない」
そう言うと、後頭部に強烈な打撃を入れる。
気を失った巫女は静かに膝を折る、それを優しく抱えてそっと横にする。
「……神威の巫女、襲撃は一人…いや…」
巫女を拘束し、デルタ部隊の生存を確認した水島はその場を離れる。
単騎で神威の巫女を御せる程の実力を持つ男、それが水島務であった。
「俺が駆け付けますッ!!水島さんは対象の護衛をお願いしますッ!!」
「赤原君ッ!待てッ!!」
声は届かず、神力を纏って彼は一瞬で飛び立つ。
その速度は尋常ではなく、疾風のようであった。
「敵の狙いは…赤城か…、こちらベータ部隊からデルタへ、守りを固めるため一旦護送車両に合流しろ、体制を立て直す」
『こちらデルタ部隊、了解、すぐそちらへ――ザザザッ…』
「――どうした?応答しろッ!おいッ!」
突然途絶える通信、それは酷く不自然で、水島は最悪の想定をする。
赤城の護送を狙った襲撃、それは情報が筒抜けである事実を物語らせる。
つまり、本部内に内通者がいる可能性があり、その内通者は――。
「巫女が敵かッ…!くそッ!」
相手がそうであれば部隊が壊滅するは必然、この混迷した状況にも辻褄が合う。
どこまでが敵の思惑なのか、何が目的なのか、それが分からなければ下手に動けない。
だが一つ分かる事は、赤城の強奪だけは阻止しなければならない。
冴える思考とは裏腹に、水島の身体は熱く沸騰する。
「―――」
前方と後方の車両に部隊を集中させ、中央となる赤城を乗せた車両を守るように陣形は展開されていた。
その前方には洋助が駆け付けて敵を食い止める、そう判断した水島の行動は迅速だった。
「ベータ部隊に告ぐ、お前たちは赤城を見張り、この車両の護衛を優先しろ」
『た、隊長はッ!?水島隊長はどうなさるんですかっ!?』
「俺は後方車両の援軍に行く、10分後に戻らなければ巻田、お前が指揮を取れ」
『っ……了解っ…』
その返答を聞き、水島は車両から慎重に降りる。
姿勢を低い状態で維持し、発見されにくい暗がりから後方車両に向かう。
「―――ッ、おい!しっかりしろ!」
「……うぅ…ぅ…」
すると、路肩に脱輪した状態の車両が木に激突しており、運転手はだらりと気を失っていた、その隊員を呼びかけると小さく呻いている事を確認する。
残りの隊員を発見しようと辺りを見回す、すると銃撃の音が林道から聴こえる。
「――ッ!林道での戦闘か…相手は複数か…?」
警戒して木々を盾に音の鳴る場所へ近付くと、デルタ部隊の隊員がぐったりと倒れ伏している、幸い死に至る傷は負っておらず、皆気を失っている。
――その状況を見て、水島は核心する。
殺しを躊躇っている、でなければ死人がいないなんて事はあり得ない。
であれば、敵は巫女でありながら戦闘経験が浅く、尚且つ本部の情報に深く関わる事が出来る相手、それは――。
「神威の巫女かッ!!」
――瞬間、背後に影在り。
それを察知し振り向くと、峰打ちで刀を振るう巫女がいた。
「お覚悟をッ!」
「甘いッ」
超人的な反応速度でそれを躱し、水島は手首掴んで関節を曲げようとする。
が、そのか細い腕でも神力の力があれば大男一人投げ飛ばす事ができ、逆に振り抜かれ持ち上げられる。
「――普通の兵じゃないッ!貴方は…水島ッ!?」
持ち上げた勢いで投げ飛ばすその直前、巫女はその男の異様な格闘術に気付く。
そして同時に、水島務の存在を思い出し、手心を加えた未熟を後悔したのであった。
「きゃッ!?」
空中に水島が舞うと、そのまま地面に叩きつけられる、――かと思われた。
しかし、僅かな瞬間で体勢を整え、落下の衝撃を五点着地で和らげて巫女を逆に投げ飛ばす。
「くっ…もう容赦しませんッ!」
「いいだろう、来なさい」
バランスを崩して片膝を着く巫女は、人斬りの決意を固める。
対する水島はただ冷静、そして憐れむような視線で見つめる。
「はぁッ!」
常人であれば、巫女の踏み込みは消えて見えるだろう。
だが水島は予備動作からそれを予想し、視界に映る事象よりも速く動く。
「―――ッふ」
サイドステップを挟んで間合いを詰められ、気付くと刃の切っ先だけが眼前に迫る。
それを数センチの距離で見切り、軸足を払って巫女の体幹を崩す、と、巫女の手足は空中に漂い身動きが取れなくなる。
「そんなッ…!?」
決定的な隙を作り、がら空きとなる胴に打撃を叩きこむ。
目で追う事しかできない巫女は、刀を離して防御の姿勢を取る。
「だぁッ!!」
空気が振動する掌底を打ち込むと、流石の巫女も無傷では済まず地を舐めて吹き飛ぶ。
ボロボロになり倒れるがそれでも立ち上がろうとする巫女、よろめきながら前を見据えたが、纏った神力は霧散する。
「諦めなさい、君に戦いは向かない」
そう言うと、後頭部に強烈な打撃を入れる。
気を失った巫女は静かに膝を折る、それを優しく抱えてそっと横にする。
「……神威の巫女、襲撃は一人…いや…」
巫女を拘束し、デルタ部隊の生存を確認した水島はその場を離れる。
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