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最終決戦編
三話
しおりを挟む水に濡れた巫女装束は、焔の体温を下げさせてその思考も冷ます。
初撃、故に必殺の一撃をいなされて勝ち目の無くなった焔は、その冴えた思考で考えて洋助に挑む。
「洋助さんっ…!!」
「――焔さんっ…!!」
一撃必殺の特大弓を投げ捨て、愛用の大弓に切り替えて接近する焔。
未だその衝撃に体勢を整えきれずにいる洋助は、ふらつきながら刀を構えて応戦する。
「はぁっ!!」
焔は宙に舞うと、矢筒から羽矢を取り出し高速で三連射する。
その軌道は直撃する射線と逃げ道を塞ぐ軌道、それらを同時に射る。
――しかし、手負いの兵はそれすら軽く切り落とす。
神力を最大まで溜めた矢でなくとも、その衝撃力は鉄骨が空から降り注ぐ程の破壊力がある、なのに、彼は蒼い炎を纏ったその腕を振りかざし、矢払いをする。
「焔さんっ!!なんでこんな事をっ…!?」
「灯さんはっ…灯ちゃんはなんで…!?どうして貴方がいながらっ!!」
「―――っ…焔さん…」
降り注ぐ矢の雨を搔い潜り、その射程距離を徐々に詰める洋助。
そして声の届く距離まで近寄ると、この戦いの意味を問う。
「灯ちゃんはこの一か月…本当にあなたの心配をしてっ!……そして篝火に単独で向かって洋助さんの動向を調べていましたっ!!」
叫びの様な訴えは、洋助の心を深く抉る。
自分の身を案じて瓦礫に埋もれた灯を救う事が出来ず、苦悶の表情で答える。
「灯さんはっ…俺を庇って取り残されましたっ……俺のせいなんですっ!!」
「どうしてっ、どうしてッ…!!こんなにも強いのに救えなかったんですかッ!!」
八つ当たりにも似た激情で矢を射る焔。
それほどまでに彼女の灯を想う気持ちは強く、そして行き場の無い怒りと悲しみが洋助に襲い掛かる。
「がはッ…」
洋助に彼女を傷つける気など無く、刃は射られる矢にのみ向けられる。
その隙を見透かされるが如く、接近戦を仕掛けられて脇差を肩に突き刺される。
「――全ては、俺の未熟と弱さが招いた結果です…焔さん、俺は貴方まで失いたくない、これ以上…俺は大切な存在を失いたくないんですっ!!」
「ならなんでッ!!灯ちゃんはっ……灯ちゃんがっ!!」
もはやその感情に答えは無く、焔はその涙を隠す事無く流していく。
そして、一本の矢を取り出してそれに残った神力を注ぎ込み始める。
「雪さんもっ…灯ちゃんもっ…みんないなくなって、…洋助さんまで大厄になって…私はッ!?私はどうすればいいんですかッ!!」
救いを求めるその願いは、洋助に飛びついて矢を突き立てる。
斬り伏せることも、避ける事も可能であった彼は、それを敢えて受け止めて二人は川に向かって飛び込んでいく。
「――焔さん…俺は、せめて貴方には生きて欲しい」
自爆覚悟で突き立てた矢は、洋助の胸元に刺さって神力の暴発現象を引き起こす。
その爆発直前、焔を巻き込まない様に彼女を水面に投げ飛ばして、彼は空中で青き爆発を受け止めた――。
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