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最終決戦編
七話
しおりを挟む最強の二人が最終決戦を始める時、大厄の襲撃に対応する水島は逼迫していた。
「せやぁッ!!」
その格闘術を駆使して苦難をなぎ倒す。
しかし、巫女を守りながら戦う彼は徐々に押され、戦線は後退して苦戦する。
大厄撃破者といえど、苦難を連続で相手にするのは厳しく、体力と気力は摩耗する。
惨苦以上の大厄が出現していない為、辛うじて対処できてはいるが、その惨苦が顕現するのも時間の問題、水島は焦りを伴って戦う。
「―――このままではッ…」
四体目の苦難を討ち滅ぼし、拳を振り抜いて仕切り直す。
すると、水島の周りを囲むように結界が張られ、そのいずれにも惨苦が顕現しようと、禍々しい蒼き炎を纏った腕が伸び始める。
「ここまでか……」
善戦したものの、三体の惨苦には為す術もなく、彼は諦めて構えを解く。
―――その瞬間であった。
ドンッッッ………!!!
突如飛来する仰々しい巫女装束を纏った少女が二人、――神威の巫女である。
「――天草…芹、菘ッ!?」
守る様に惨苦を大棍棒で押しつぶす菘、そして薙刀で一刀両断する芹。
彼女達は本部の巫女との抗争後、大厄の出現を察知するとその掃討に回っていた。
それは本来の巫女のお務め、人を守る役目を全うするため。
「どうして、君達がッ…!?」
「あぁん…?あんた大厄撃破者の……確か――」
「水島務、さん、でしたね?……まさか負傷した巫女の救助をして下さっていたのですか?……感謝致します」
「篝火の目的は本部の壊滅ではないのかっ…どうしてこんな…」
二人の美しき巫女に問う水島は、状況を呑みこもうとする。
「まぁ…説明してやってもいいが、――それより後ろッ!!」
菘はその大棍棒を変形させ、鉄扇を展開しては水島の顔を紙一重で逸らして後ろの惨苦に打撃を叩きこむ。
「だぁッ!!」
「菘ッ!!」
タイミングを合わせて追撃する芹は、惨苦の頭を跳ね飛ばし、その炎を噴出させる。
顕現した三体の惨苦は、天草姉妹によって一瞬で殲滅され、その姿を消す。
「―――とりあえず感謝する、だが、君達の目的が不明瞭である限り信用はできん」
「構いません、ですが、――私達の邪魔をするのであれば容赦はしませんよ?」
――空気が変わる、彼女達は巫女の在り方を変えようと戦い、そのために行動している。
洋助に触発され、人命を尊重した戦いを重視していたが、その目的を阻む者がいればその限りではない、故に殺気が漂う。
しかし、水島もその真意を汲み取ると脱力し、敵意を無くす。
「理由はどうあれ、今助けて貰ったのは事実だ、それを仇で返すつもりはない、……ただ、篝火は、赤原君は何をするつもりなんだ…」
「目的は単純だ、朧を斬るッ!そのためにうちら篝火は本部の巫女を表に出したッ!……だが…」
「そこに大厄が出現するまでは予想できませんでした、故に一時的に本部の巫女の交戦を中断し、対処に回っております」
二人の説明を聞き、この戦況に納得する水島。
だが、朧の殺害はそれこそ大罪であり、世界の均衡が壊れる程の大事件である。
計画の恐ろしさに冷や汗を流し、彼もまた決断する。
「それは……赤原君も望んだ事なのか?」
「……あいつの理由はわからない、だが、あいつもあいつなりの目的があって協力している、それは事実だ」
「そうか―――」
誰よりも優しく、常に人の事を考える彼が、漠然と朧に挑むはずはない。
洋助の選択を信じ、水島もまた彼が目指す未来に希望を託す。
「――ならば、私達機動部隊も君たちに加勢しよう、だだし、命を奪う事は許さん」
機動部隊隊長である水島の言葉は、姉妹を少しだけ感心させる。
「へぇー…案外話がわかるじゃねーか、水島さん」
「……であれば、機動部隊には戦巫女達の救助と状況の説明をお願い致します、どのみち、朧のいない本部の統制はいまや機能していないはずです、貴方が指揮を執って事態を収拾してください」
「君達はどうする?」
「私達は依然として大厄を殲滅します、それに……洋助さんに万が一の事があれば命を投げ打ってでも助力するつもりですから……」
「……わかった、君達を信用しよう」
二人の覚悟を垣間見て、彼は振り返って救護班の車両に向かう。
それぞれが出来ることを胸に、蒼き炎が舞い散る戦場を、巫女と英雄は駆けて往くのであった――。
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