艱難辛苦の戦巫女~全てを撃滅せし無双の少年は、今大厄を討つ~

作間 直矢 

文字の大きさ
75 / 79
最終決戦編

八話

しおりを挟む

 身体は冷え切り、心は擦り減る。
 水に流されるこの体は、戦いの熱を冷まさせては軋む。

 水瀬焔は、水面に叩きつけられて微動だにせず流されていた。

 「―――」

 彼女は己を恥じる。
 それは疑念と怒りを洋助にぶつけた事、そして彼が最後まで彼女を信じ、自らが死に至る傷を負いながらも生かしてくれたことに。

 涙が溢れて止まらず、それは水に流れては悲しさを隠す。
 もはやこのまま溺れ死のうか、そう思っては脱力する。

 「………ッ…」

 だが、この命がある意味を問う。
 彼が死を覚悟しながら残してくれた命を問い、焔は最後の力を振り絞る。

 「―――ごほっ…!!がはッ…!」

 だが、神力は底をつき、身体も満足に動かせぬ焔は呼吸が出来ずにもがく。
 重くなった巫女装束が、水底に引き寄せようと下に沈む。

 ―――その時である、急に体が浮く感覚。

 それは暖かな手で体を引き上げ、水面から救われる。
 右腕から感じる体温は、とても親しみのあるやわらかな感触、その手の温もりに焔は不意に顔を上げる。

 「-――っ…」

 冬の空に突き刺さる風。
 それすらもどうでもよくなる温かさがしっかりと伝わり、焔は泣き枯らした涙を再び流す、その意味は安堵、嬉しさを伴って。

 「あ、あかり……さんッ…!」

 朧に出撃を命じられた際、それに添えられた灯の死亡報告。
 何度も、何度も間違いだと思い込んで絶望し、そして洋助に諭され生きる意味を説いた。

 その意味が、今、しっかりと目の前に写される。

 「―――ったく…もう少しで溺れるとこだったじゃない?焔?」

 手繰り寄せた手は桐島灯の手で、それはしっかりと繋がれる。
 お互いにもつれるように岸に上がると、二人は倒れて綺麗な夜空を見上げる。

 「……どうして、てっきり、私は……」
 「あー…、心配かけてごめん、洋助を助けようとしたらドジってね…」
 「灯、さん…灯さんッ……!!」

 焔は灯の胸に飛び込み、その不安や寂しさを埋める様に抱き着く。
 失ったと思っていた温もり、そして優しさ、それらを忘れぬよう刻み込み、強く、強く抱き締める。

 「ううッ……うぅ…私は、洋助さんに…酷い事をっ……」
 「いつも私達に心配かける罰よ、それぐらい許すわよあいつなら」
 「ですが、ですがッ…!」
 「―――いい?焔?洋助は洋助の信念を持って戦ってる、焔だって貴方なりの信念があって戦っていた、それだけの事じゃない?」

 いつもの軽い笑顔で返すと、灯は焔の頭を軽く撫でる。
 子供をあやす様に優しく、優しく。

 「あ、かりさん……」
 「わかった?わかったならそんな顔しないっ!最強の巫女がそんな顔してたら情けないわよっ!!」

 激励されると同時に灯は立ち上がり、街の方角を振り向く。

 「――それに、私達の務めは終わっていない、大厄が攻めてきてる」
 「―――え?」
 「焔、……私はね、瓦礫の中で白い風景を垣間見たの、本来暗い、冷たい場所で」

 かつて見たその情景に、焔の記憶が巡る。

 過去、神力を初めて解放した際も白い“向こう側”を覗き、通常とは異なる神力を宿した。
 同じ物を見たとしたならば、灯にも何か変化があった、そう感じ取る焔。

 「そしたらね、目が覚めると不思議と力が溢れて、――こりゃ死んでる場合じゃないって思ったよ」
 「それ、は…」
 「あの風景が何なのかは分からない、けどやらなくちゃいけない事は分かる、大切な人を守る事、皆の命を守る事、でしょ?焔?」

 活気溢れるその言葉を聞き、焔の瞳に生命の鼓動が漲る。
 二人に使命が背負われ、神力の青色が濃くなっては強くなる。

 「おっしゃる通りです、灯さんっ…!!こんな所で足踏みしている場合ではありませんっ!大厄を討ち、出来る務めを果たしますッ!!」
 「流石焔ッ!あたしの最高の相棒だよ!!」

 二人の巫女は神力を纏い飛び立つ。
 人を救い、大切なものを零れ落とさぬ様に。

 そして、大厄対策本部では大きな衝撃と爆発が発生し、最強の二人が激戦を繰り広げていた―――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...