天下無双の剣聖王姫 ~辺境の村に追放された王女は剣聖と成る~

作間 直矢 

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シルバ・アリウム、剣聖と成る

七話

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 「ハァッ!!」

 「つ…強いッ!?」


 舞うような剣技、そして義父譲りの苛烈な攻め。
 熟練の暗殺集団である彼らを相手に、シルバは一歩も退かずに応戦する。
 それどころか数で勝る彼らを圧倒し、その形勢はシルバに軍配が上がった。


 「討ち取るッ!!」


 シルバが剣を振り切ったその瞬間を見計らい、迫りくるは必殺の刃。

 それを恐れることもせず、眼前で弾き返してアサシンを迎撃。
 そして更に一歩、シルバは相対する敵に踏み込み神速の一太刀を浴びせた。


 「ここまでです、既に勝負はつきました」

 「っぐ……よもや我ら“”黒き刃“がここまで苦戦するとは……
  噂に聞く剣聖の娘がここまでとは……」

 「黒き、刃……?聞いたことがあります、確か、アリウム騎士団のその暗部、
  それには諜報活動や暗殺を主とした部隊があると……、
  なるほど、それがあなた方という訳ですね、少し合点がいきました」

 「それを知ってどうする?まさか我々から情報を引き出すつもりですか?」


 彼らがその道のプロであるならば、こんな小娘の責め苦で口を割る訳も無い。
 であれば、殺す訳にもいかないので少しお話をしようと決め込む。


 「―――どうする……ですか、さて…どうしましょうか……
  とりあえず、この中で一番偉い人って誰です?
  私が気絶させてしまった方の中にいます?」

 「……なんだ、交渉でもするつもりか」

 「現状の確認と、話せる範囲の事を訊かせて頂きたい、
  ―――それと、懐から取り出そうとするナイフはしまって欲しい、
  あと後ろで機を伺っている三人も控えて、次は意識を堕としますよ」

 「……っ……お前達、いったん下がれ」


 殺気を纏わせた暗殺者は刃を下げ、一時的な休戦を取り付ける。
 幸いにも自身と相対する彼こそがこの部隊の統率者であるようで、会話はすんなりと進みそうであった。


 「さて、あなた方の雇い主も、任務の意味を追及するつもりはありません、
  差しあたってはこれからどうするか、それを考えましょう」

 「いったい……なにを……」

 「ここまでの狼藉を見るに、あなた方は私の殺害が目的なのは明白です、
  しかし、このまま帰っては貴方達の目的は果たされず、その意義が問われます、
  ―――それは、困りますよね?」

 「……何が、言いたのでしょう、その意図が分かりかねます」


 それもそうだろう、自分を殺そうとする相手の心配をするなど意味が不明。
 だが、ここで彼らを見逃せばジニア村に赴任してもその脅威が止むことは無く、常に暗殺の危険が付きまとう。

 ―――では、ここにいる者を斬り殺し、その存在ごと抹消しようか。

 答えは否、それは義父の教えに反する。
 
 更に言うなら、仮にここでアサシン達を斬ったとしても暗殺失敗の報は雇い主に届き、第二、第三の刺客が送り込まれる事だろう。

 なら、誠意こそがこの場を収める。


 「帝都を離れ、王女の名も今やその威光を示さずに意味の薄い物になっております、
  しかし、それでも尚、王女シルバの名のもとにこの言葉を信じるのであらば、
  どうか、どうか……聞き入れて欲しい」


 その高潔な振る舞い、真摯な願いに、アサシン達は息を呑む。
 汚れ仕事を全うし、それしか知り得ぬ彼らでさえ焦がれる光。


 「私は……力不足でした、自らの環境に甘え、義父の愛を一身に受けながらも、
  それを剣にのみにしか注げなかった、だからだろう……家臣の謀にも気付けず、
  ただ己の武しか信用出来なかった、それがこの結果であり、私が招いた必然」

 「シルバ、王女……」

 「故に、私はこの地、ジニア村で己が成長を成し遂げたい、
  そのためにはあなた方の協力が必要だ、それを聞き入れてはくれないか?」

 「―――まさか、すんなりと我らが聞き入れるとでも?」

 「……そうでしょうね、ですので、私も誠意を見せたいと思っております」


 ―――ィィィンッ!!!


 響き渡るは鉄の残響。

 それは頑なに抜かなかったシルバの剣、剣聖より賜りし宝刀“銀月”の抜刀音。
 あまりに唐突な事態に、刀身を仰ぎ見るアサシン達は警戒や恐怖よりも、酷く美しい物を見た時の感情が胸に沸き立つ。


 「これはどうゆうおつもりです?その剣を以て我らを斬るとでも?」

 「とんでもありません、この剣は不殺の剣……であればその用途は守る為にあるもの、
  ―――なので、これはこう使うのです」


 覚悟を決め、宝刀の刃を首元に構える。

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