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シルバ・アリウム、剣聖と成る
六話
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馬車に揺られて青々とした自然を眺めること五日、中継地点での街を転々としては帝都からその距離は離れてゆく。
「―――暇だぁ……まだ着かないのかなぁ…」
田舎の風景自体はさほど珍しい事では無いが、辺境と言われる事だけはあり中々に何もない。
この土地を開拓していくとなると骨が折れそうではあるが、それだけ目標も高くなるというもの、気合を入れて赴く所存である。
―――ガタンッ……!!
しかし、突然響くは車軸の止まる音。
それは馬車の急停止を意味し、予期せぬ事態を想像させる。
馬はいな鳴き、その声を遠くして足音を鳴らして逃げ去ってゆく。
どうやら完全にこの馬車は止まったらしい。
「なにっ……?」
停止音が響いたと思えば妙に静か、不気味な状況に思わず剣を握る。
時刻は夕刻、徐々に空は暗く染まりつつあり視界は悪い。
ちらりと車窓を覗いて見えるは開けた街道、そして立ち並ぶ影入った木々。
異変は無い、しかし不穏。
用心して外に出ようと、慎重に馬車を降りる、その時であった―――
―――ヅガァァァァン!!!!!
空気を震わせる爆発音。
大きな衝撃を伴うそれは、馬車が粉々に破壊され粉々に燃え尽きた。
「……ククク、他愛ない」
「これで王位継承権を持つ人物はいなくなり、アリウム国は政権争いが勃発する……」
「我ら影の者、さっさと姫の死体を確認して立ち去るべし」
煙が立ち上がり、炎が揺らめく残骸を遠巻きに見つめる黒い部隊。
明確な殺意を以てして、彼らはシルバの乗る馬車を襲撃してその命を断つ。
「―――いてて……流石に危なかったな……」
命を、断つ、はずであった。
「……は、いったい……」
「ッだぁ!!!」
爆散したはずの姫は、何事もなかったように黒き部隊の裏に回り一刀を振り下ろす。
それは鞘に納めたままの一振りであり、神速の太刀筋は強烈な打撃と化して部隊の一人を襲い無力化する。
「っと……これで一人、ちょっと眠ってください」
「貴様ッ!?確かに爆発で死んだはずではっ!!」
「んー?あの爆発は魔法によるものでしょ?だから咄嗟に魔力で相殺してみました、
……それより、あなた達の所属は?誰が君達を差し向けた?」
「―――笑止、それを語る我らでは無い、
如何な力を持っていようが、姫にはここで果てて貰う」
「……そう、あくまでも戦うのですね、
―――いいでしょう、殺しはしません、それが義父との誓いですから」
「小娘風情がッ!!少し剣を振れるからと舐めるなぁ!!!」
シルバは依然として剣を抜かず、固く鞘を繋いで抜刀しない。
その少女を囲むは、名だたる暗殺集団四名。
(……考えてみたら、これが初の実戦かぁ、少し緊張するな)
―――かつて、アリウム国の剣聖は騎士団にこう言い放った。
『我が剣、我が力、これに気圧される事なかれ、世界にはまだまだ強き人間はいる』
と、大陸を治めた剣聖が言うのだから家臣達は首を傾げてこう答える。
『御冗談を、我が王よ……仮に貴方の剣を超える者がいるのであれば、
それは神か悪魔か……人の域を超えた存在でありますよ』
これは王に対する過剰な賛辞、ではなく否定しようのない事実。
実際に彼の戦場は苛烈、かつ無双。
剣であろうが魔法であろうが、その進軍は止まらず一騎当千の武を奮う。
故に最強、かつ右に出る者などいないと騎士団は信じて疑わなかった。
が、王は続けてこう言った。
『ハッハッハ……神か悪魔か、これは言い得て妙、
であれば、この国を継ぐ我が娘はそう呼ばれるのかな?』
誰もがその言葉を微笑ましい冗談だと思った、一人娘であるシルバを溺愛するあまり、と。
「ッつ……何故…何故、なにゆえ姫如きがここまで強いッ!?」
だが、しかしである。
黒き暗殺部隊は剣すら抜かない少女一人倒せず、逆に圧倒されていた。
「―――暇だぁ……まだ着かないのかなぁ…」
田舎の風景自体はさほど珍しい事では無いが、辺境と言われる事だけはあり中々に何もない。
この土地を開拓していくとなると骨が折れそうではあるが、それだけ目標も高くなるというもの、気合を入れて赴く所存である。
―――ガタンッ……!!
しかし、突然響くは車軸の止まる音。
それは馬車の急停止を意味し、予期せぬ事態を想像させる。
馬はいな鳴き、その声を遠くして足音を鳴らして逃げ去ってゆく。
どうやら完全にこの馬車は止まったらしい。
「なにっ……?」
停止音が響いたと思えば妙に静か、不気味な状況に思わず剣を握る。
時刻は夕刻、徐々に空は暗く染まりつつあり視界は悪い。
ちらりと車窓を覗いて見えるは開けた街道、そして立ち並ぶ影入った木々。
異変は無い、しかし不穏。
用心して外に出ようと、慎重に馬車を降りる、その時であった―――
―――ヅガァァァァン!!!!!
空気を震わせる爆発音。
大きな衝撃を伴うそれは、馬車が粉々に破壊され粉々に燃え尽きた。
「……ククク、他愛ない」
「これで王位継承権を持つ人物はいなくなり、アリウム国は政権争いが勃発する……」
「我ら影の者、さっさと姫の死体を確認して立ち去るべし」
煙が立ち上がり、炎が揺らめく残骸を遠巻きに見つめる黒い部隊。
明確な殺意を以てして、彼らはシルバの乗る馬車を襲撃してその命を断つ。
「―――いてて……流石に危なかったな……」
命を、断つ、はずであった。
「……は、いったい……」
「ッだぁ!!!」
爆散したはずの姫は、何事もなかったように黒き部隊の裏に回り一刀を振り下ろす。
それは鞘に納めたままの一振りであり、神速の太刀筋は強烈な打撃と化して部隊の一人を襲い無力化する。
「っと……これで一人、ちょっと眠ってください」
「貴様ッ!?確かに爆発で死んだはずではっ!!」
「んー?あの爆発は魔法によるものでしょ?だから咄嗟に魔力で相殺してみました、
……それより、あなた達の所属は?誰が君達を差し向けた?」
「―――笑止、それを語る我らでは無い、
如何な力を持っていようが、姫にはここで果てて貰う」
「……そう、あくまでも戦うのですね、
―――いいでしょう、殺しはしません、それが義父との誓いですから」
「小娘風情がッ!!少し剣を振れるからと舐めるなぁ!!!」
シルバは依然として剣を抜かず、固く鞘を繋いで抜刀しない。
その少女を囲むは、名だたる暗殺集団四名。
(……考えてみたら、これが初の実戦かぁ、少し緊張するな)
―――かつて、アリウム国の剣聖は騎士団にこう言い放った。
『我が剣、我が力、これに気圧される事なかれ、世界にはまだまだ強き人間はいる』
と、大陸を治めた剣聖が言うのだから家臣達は首を傾げてこう答える。
『御冗談を、我が王よ……仮に貴方の剣を超える者がいるのであれば、
それは神か悪魔か……人の域を超えた存在でありますよ』
これは王に対する過剰な賛辞、ではなく否定しようのない事実。
実際に彼の戦場は苛烈、かつ無双。
剣であろうが魔法であろうが、その進軍は止まらず一騎当千の武を奮う。
故に最強、かつ右に出る者などいないと騎士団は信じて疑わなかった。
が、王は続けてこう言った。
『ハッハッハ……神か悪魔か、これは言い得て妙、
であれば、この国を継ぐ我が娘はそう呼ばれるのかな?』
誰もがその言葉を微笑ましい冗談だと思った、一人娘であるシルバを溺愛するあまり、と。
「ッつ……何故…何故、なにゆえ姫如きがここまで強いッ!?」
だが、しかしである。
黒き暗殺部隊は剣すら抜かない少女一人倒せず、逆に圧倒されていた。
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