天下無双の剣聖王姫 ~辺境の村に追放された王女は剣聖と成る~

作間 直矢 

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シルバ・アリウム、剣聖と成る

八話

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 「―――ッ!?いったい、何をッ!?」


 狼狽する彼らをよそに、振り抜いた切先は私の身体の一部、

 ―――この長く結んだ銀色の髪を、豪快に切り捨てた。

 はらはらと、細く輝く髪が落ち、束ねたその一部を手に持って、剣を収める。


 「これが、私の誠意です」

 「貴方様は……私達に、何を、しろと言うのですか……」

 「簡単な事です、このまま帰っては貴方の雇い主は納得しませんでしょう、
  ですので、この髪と、義父から引き継いだ宝刀、この銀月を持ち帰って頂きたい、
  あとはそちらで誤魔化してくれれば、充分な証拠となりましょう」

 「……己が死を偽装して、貴方にどんな利があるのです……
  シルバ王女程の腕であれば、我らを切り伏せるのは容易なはず……
  それなのに、いったい、何故ッ!?」

 「無駄な血を流さずに済むのなら、それに越したことはありません、
  いかに暗く、汚れた仕事を受け持つといえど、ここにいる全員がアリウムの民、
  民を守るのは王女の役目、そこに何の間違いもありませんよね?」

 「―――あ、あぁ、貴方、様は……なんと…慈悲深き……」


 がっくりとうなだれるアサシンの頭目。
 後ろで構えていた彼らも、その戦意は削がれ、今はただ目の前の王女の威光にあてられていた。


 「さて、改めてこの任をお願いできますか?」

 「異論などありません、ただ……このままではあまりにも王女様が不憫でなりませぬ、
  我ら“黒き刃”は仕える主君はいれど、その心はシルバ王女の為に働かせて頂きたい、
  ……少なくとも、ここにいる者はシルバ王女のお姿を見てそう決心したはず」

 「私の為になどと、あなた方にも家族や愛する者がいるはず、
  その決意はその者のために使って頂ければ―――」

 「だからこそ、なのです……家族も、友人も、全てを失った者の集まりが我ら、
  ならばせめて、たった一人で良いのです、心から信用に足るお人のために……
  私は……俺達は働きたいのです、シルバ王女」

 「―――わかりました、皆も私に協力してくれますか?」


 顔を伏せ、跪く黒き刃のアサシン達。
 彼らはその涙を黒い面で隠して、新たな主の優しさに感謝して頷いた。


 「では、宝刀と御身の髪はこちらで預からせて頂きます、
  ……これならば雇い主であるシバ様も納得するはず」

 「ふむ……わかってはいたけど、刺客を差し向けたのはシバなんだね……
  予想通りというか、なんというか……」

 「こうなった以上、我々はシルバ王女の身の安全を第一として、
  そのお立場を復権させるために尽力させて貰います、
  今後はなんなりとご命令ください、帝都での情報も常にお伝えできますゆえ」

 「まぁ待って、シバの謀でジニア村までの赴任、そして暗殺までは
  なんとなく察していたの、ただ……私にも未熟な事は確かにあって、
  それを戒める為にもここで研鑽を積み、今一度見極めたいの、
  アリウム騎士団の行く先を、そしてこの国の在り方を」

 「なんという……献身なるお心……おぉ、まさしく剣聖と呼ばれた国王の様な
  寛大さです、一層の忠をここに誓わせて頂きます」


 黒布で覆われたその顔を深く下げ、アサシンは誓う。


 「そんな畏まらないでください、さぁ、顔を上げて」

 「もったいなきお言葉……」

 「どうか、よろしくお願いしますね、えぇと……貴方のお名前は?」

 「恐れ多くも、私はヒース・ライトと申します」

 「では……ヒースさん、何卒……よろしくお願い致しますね」


 その剣、その威光によって暗き者たちを導いた王女。

 彼女はその始まりに黒き刃のアサシン集団を有し、ジニア村へと赴いた―――。

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