9 / 102
シルバ・アリウム、剣聖と成る
九話
しおりを挟む街道での“黒き刃”襲撃からその後、私はその実行犯である彼らに護衛され村へ着いた。
そして民宿で三日ほどの時を過ごし、この生活にも落ち着きが見え始める。
「―――ありがとうございました、ヒースさん、ここまでのご協力感謝致します」
「元はと言えば我らの襲撃が原因、この程度お任せください」
いまやアリウム騎士団の影と呼ばれた黒き刃は、シルバの意向によって動く。
忠誠心とは縁遠い彼らではあったが、本物の主と邂逅したのであればその本質は素直な騎士道精神に則っていた。
「……そういえば、他の皆様はどうされたのですか?
ヒースさん以外見当たりませんが……」
「彼らには帝都に戻って姫の策を実行して頂いております、
……そして、帝都の状況を逐一報告できるように私と連携して情報伝達に
努めるように指示しました」
「なるほど……的確な判断ですね」
「それともう一つ、姫と共に私の死亡報告も付け加えております」
「ヒースさんの……?」
「はい、さすれば私の行動も自由になりましょう、
もとよりこの身は影、いてもいなくてもシバ様は気になさらない、
であれば、わが身をいかように使って頂きたくシルバ様と御供致します」
黒き刃の頭目であったヒースは、その肩書を降ろしその全てを王女に捧げる。
多少驚きつつあるシルバは、その意思を汲み取って優しく微笑む。
「ヒースさん……、貴方の身はあなた自身の物、
そのようにぞんざいに扱っては少し悲しいです、
―――それに、私の身も既に王女を捨てた身、お互い心機一転ですね」
「もったいなきお言葉……ゆめ忘れぬ様に尽力致します」
「ははは……お堅いなぁ…ヒースさんは、
……そうだ!せっかくなんでこれからはため口で接してください、
その方がこれからの生活に違和感ありませんし」
「そのような無礼ッ……!?私にはとても……」
「そうですかぁ……では、これは命令です!もっと砕けた接し方をしてください!」
「し、しかしっ……ですが……」
「ほら、とりあえずシルバって呼び捨てで呼んでください」
「っぐ……シ、シル……バ……様……」
「んーーー?」
「……シ…シルバ……さん……で、許してください……」
わなわなと震え、今にも血涙を流す勢いのヒースは乞う。
これ以上は流石に可哀想なので、落としどころをここにする。
「仕方ないですね、徐々に慣れていきましょうね、ヒースさんっ♪」
「申し訳……いえ、す、すまない……っ」
ぎこちない態度に微笑ましさを感じながらも、本題に取り掛かる。
「さて……ヒースさん、ジニア村での生活も落ち着き始めましたので、
一つ始めたい事があるのですが、いいですか?」
「始めたい……事、ですか…」
「はい、これなんですが……」
「これは、役所の人員募集……のようですが」
「そうです!働こうかと思うんです、わたし」
持ち出した書類は村の掲示板にあった物、それを彼に渡して相談する。
もはや無関係とは言えないヒースに、きちんと話を通すのは道理と思い包み隠さず今後の事を話し合う。
「―――ジニア村唯一の役所……そこでの募集、ですか……」
「元々この村の発展を目的にここまで来ました、本来であれば着任してから政務作業に
執りかかる事が出来ましたが、私が死亡した噂はどうやらここまで及んでいます、
正式にシルバ王女として活動することは出来ません」
「……故に、一般の募集から、ですか……」
「最初は小さなことからでも構いません、少しずつでも変えていきたいのです、
―――共に、来てくれますか?ヒースさん」
「勿論でございま―――っいえ……
もちろんだっ……!シ、シルバ……さん」
「ふふっ、よろしくお願いしますね」
次なる方針が決まり、私とヒースは明日を見据える。
0
あなたにおすすめの小説
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる