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シルバ・アリウム、剣聖と成る
三十一話
しおりを挟むシュバルツとの話し合いから数日。
シルバは通信用の魔法石に魔力を通し、ミオと連絡を図っていた。
「―――あ、ミオ?この魔法石ちゃんと声届いてます?」
『………悲しいぐらいにはっきり聞こえています、なんでしょうシルバ王女、
―――いや、やっぱり返答を聞きたくないです……』
紆余曲折あり、剣術大会に参加する事になったシルバとヒース。
予定していた滞在期間を延期し、偽りの改修業者としてシルヴィア・ライトは城で宿泊しており、ついでに大会運営の補佐までこなしていた。
「すみませんミオ、聡明な貴方ならお気付きかもしれませんが、
ジニア村への帰りが遅くなります、具体的には三週間程」
『ふぇッッ!?』
遠くにいる人物と連絡が取れる魔法石から、可愛らしい困惑の声が響く。
蒼く煌めく魔法石は、無慈悲な通告をミオに言い渡してキラキラ輝いているだけ。
「それでですね……私が留守の間ジニア村の運営をミオにお任せしたいのです、
これも具体的にですが……隣国バーベナ国との穀物取引、そして周辺地域への
商業地域拡大の件をまとめた書類が私の執務室に……」
『―――』
絶句して何も言わなくなったミオは、見えなくてもその場で固まっていると予想出来るくらいに動揺している。
だが、しかしである。
私だって鬼ではない、通常の業務をこなしつつ追加で作業をしろ、なんて冷徹な事は言わない、ちゃんと対策を用意している。
「ミ……ミオ、落ち着いてください、流石に一人でそれらをこなせと言いません、
貴方には優秀な人材を既に手配しておりますので、彼らと共に仕事をお願いします」
『ッッ!!―――ほ、ほんとですかッ!?』
「えぇ、もちろん、何を隠そう私の不在中に貴方の部下となります―――」
シルバがそこまで話すと、ミオは背後に不吉な影を感じ取る。
恐る恐る振り向いた、その先には―――
「“黒き刃”の皆様を派遣しときましたっ!!」
―――嫌に不気味な暗殺集団四人が、跪いて並んでいた。
いつぞやのドヤ顔を表情も見えないのに披露して、シルバは名案とばかりにこの人事を誇って自ら頷く。
感情のふり幅が壊れたジェットコースターのように、ミオの心は持ち上げられては地面に叩きつけられていた。
悲しくも二度目の絶句となる事態に、彼女は二度、三度振り向いて私室に入り込んでいる不法侵入者たちを、ただ呆然と眺める。
「……あれ?ミオ、どうかしましたか?」
『―――ぇぇ……はい、分かっていました、いつかこんな日が来ることを』
「……?……まぁ、基本的には身体を張った仕事を主にする彼らですが、
雑務や政務もそつなくこなしてくれると思います、私の不在中は彼らを自由に
使って頂いて大丈夫ですので、安心してくださいねっ」
『あ、ぁぁ……安心だなぁ……』
喉元まで出かかった“背後が怖くて安心できません”という言葉を押し殺し、ミオは静かに涙してこの試練を受け入れた。
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